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本、映画、音楽の感想/レビューなど。

2008-01-01から1年間の記事一覧

『青空感傷ツアー』/柴崎友香

会社を辞めた26歳の芽衣は、6コ下のむちゃくちゃ美人かつわがままな女友達、音生と2人で、大阪→トルコ→徳島→石垣島へとふらふらと旅しつづける。っていう、まあそれだけの話。でも、それだけで十分におもしろいのがこの小説の素敵なところだ。柴崎友香ってい…

Tchavolo Schmitt Band@杉並公会堂

マヌーシュ・スウィングの名手、チャボロ・シュミットのライブに行ってきた!ザクザクくるリズムギターに安定したベース、バイオリンはしつこくソロを盛り上げまくるし、チャボロのギターもピッキングがすごい力強いのに、出てくるフレーズはとてもていねい…

『白鍵と黒鍵の間に ―ピアニスト・エレジー銀座編―』/南博

ジャズピアニスト、南博のエッセイ。これはおもしろかったー!書かれているのは、主に80年代の彼の活動だ。音校時代にジャズと出会った南は、小岩のキャバレー、東京音大、新宿ピットイン、そして銀座のナイトクラブへと舞台を移しつつ、とにかくピアノを弾…

『ホワイト・ノイズ』/ドン・デリーロ

1985年に発表された、ドン・デリーロの出世作。ボードリヤールが言うところの、「ハイパーリアルとシミュレーションの段階」にあるアメリカをポストモダン風の皮肉で描いた、なんてまとめられそうな感じの小説だ。主人公のジャック・グラドニーは、アメリカ…

The Mars Volta@STUDIO COAST

とにかくすごかった!!俺は今回はじめて彼らを見たけど、うーん、音もパフォーマンスも噂に違わずすさまじかった、としか言いようがないなー。呆気にとられるってこういうことか、っていうような…。演奏時間は100分くらいと比較的短めだったけど、それは全…

菊地成孔ダブ・セクステット@新宿歌舞伎町クラブハイツ

ダブ・セクステットのアルバムをはじめて聴いたとき、おーこれは!かなりストレートに60年代風!ちょーかっこいいじゃん!!と相当興奮したのだったけど、このライブでそれほど圧倒されたか、っていうと正直微妙だった気がする。いや、たしかに演奏はよかっ…

『コーヒー&シガレッツ』

DVDで。ジム・ジャームッシュ監督の、11本のモノクロ短編を集めた作品。コーヒーとタバコが出てくるよ、ってこと以外には短編同士に明確な繋がりはなく、ただ登場人物たちがテーブルを挟んでだらだらした会話を繰り広げるだけ。この、だらだら感、ゆるい感が…

『エナメルを塗った魂の比重 鏡稜子ときせかえ密室』/佐藤友哉

これも前作と似たような感じ。文章はもうとにかく、ひたすらに薄っぺらい(悪い、ということとは違う)。いじめだったり人食いだったりと、やたらと残酷な行為やグロテスクなシーンが満載でありつつも、薄っぺらな描写はその過激さを軽減しているようでもあ…

『僕の妻はシャルロット・ゲンズブール』

DVDで。これ最高!全体的にツボすぎて、もうわらいまくった!シャルロット・ゲンズブールの実の夫、イヴァン・アタルが監督・主演で、妻が有名女優である、ってことのいろいろな悩みを描いた自己パロディ風コメディ。この映画のいちばんの魅力は、やっぱりシ…

『ティンブクトゥ』/ポール・オースター

うーん、オースターの小説にしては少し物足りなかったかも。俺がオースターの作品でおもしろいとおもうのは、(『偶然の音楽』とか、『ムーン・パレス』みたいな)“肉体/精神的にぎりぎりの極限状態におかれた主人公の思考がスパークして、なんだかよくわか…

『ベルカ、吠えないのか?』/古川日出男

古川日出男の小説の、ケレン味に満ちたキメキメな文章、大仰な感じが俺はどうも得意じゃない。いやー、そんな盛り上がられても…、とかおもっちゃったりして、テンションがうまくついていけないのだ。ただ、これは犬たちを描いた作品だ。犬ってやっぱワイルド…

『フリッカー式 鏡公彦にうってつけの殺人』/佐藤友哉

佐藤友哉のデビュー作。俺はいわゆるメフィスト系の小説っていうのをちょっと苦手にしていて、でも、今より年をとったらさらに手に取りにくくなるに違いないとおもったので…、って、読み始めた動機はあまりポジティブとは言えない感じだったのだけど、これは…

『アイム・ノット・ゼア』

渋谷シネマライズにて。やっぱりディランかっこいいよー!って言いたくなる映画だった。6人の俳優たちが、ボブ・ディランのいろいろな気質を象徴するようなキャラクターを演じていく。ケイト・ブランシェットのディランっぷりは話題になっていたけど(中性的…

『また会う日まで』/ジョン・アーヴィング(その2)

アーヴィングの『また会う日まで』の主人公、ジャック・バーンズの幼い頃からの口癖に、「おー」というのがある。ジャックの「おー」は、周囲の世界に対する驚きや、自分の働きかけとはほとんど関係なく世界が動いていくことへの無力感みたいなものを表現し…

『1973年のピンボール』/村上春樹

何年ぶりかに読み返したけど、うーん、やっぱりこれもいい小説!俺は村上春樹は初期の作品がすきだなー。いろんな意味でイタい感じも含めて。『風の歌を聴け』に続く、「僕」と「鼠」の物語なんだけど、前作と比べるとずいぶん感傷的だし、乾いた感じよりは…

『風の歌を聴け』/村上春樹

高校生のころの俺のバイブルだったこの小説を久々に読み返していたんだけど、自分がこの作品からどれだけあからさまに影響を受け、方向づけられてきていたか、ってことにいまさら気がついて本当にびっくりした。いままで自分の頭でかんがえたことなんて何ひ…

性格バトン

miblgさんからバトン(id:miblg:20080427)いただきましたー!ありがとうございます!!●何型 O型。あー、やっぱりO型なんだー、とかよく言われる…。俺の周囲のO型男子はことごとくモテない気がするのだけど、それはきっと、この「あー、やっぱり…」の部分に関…

『地下室の手記』/フョードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー

下級官吏である主人公は、長年勤めた役所を辞め、“地下室”と呼ぶアパートの一室に閉じこもっている。彼は外界との関わりを断って、ひたすら自身の内面を手記として書きつけていっているのだ。その思考は、自身の内面をぐるぐると回り、疑い、傷つけながら、…

『読書の腕前』/岡崎武志

書評家による、読書についてのエッセイ。なんか読書のモチベーションが下がってきてるなー、ってときには、こういう、本についての本、読むことについての本を読むのがいい。巻末には、著者の選んだおすすめ本も載っていたりして、読書欲が刺激される一冊。 …

『once ダブリンの街角で』

吉祥寺バウスシアターにて。ちょーいい映画だった!こういうのだいすき!!音楽ものの映画がすきな人は、ぜひ見たらいいんじゃないかとおもう。ダブリンの街角で、ストリートミュージシャンの男と、移民の女が出会う。何の接点もなかった2人だが、音楽を通じ…

『ペット・サウンズ』/ジム・フジーリ

ビーチ・ボーイズの『ペット・サウンズ』について、とにかく愛情たっぷりに語っている一冊。エッセイと評論の中間をいくような作風で、アルバムの魅力を、というか、アルバムに対する著者のおもい入れを存分に描き出している。俺も『ペット・サウンズ』のCD…

『ナンバー9ドリーム』/デイヴィッド・ミッチェル

500ページ以上ある大作だけど、ページ数以上にボリューム感のある小説だった!物語の舞台は日本で、まだ見ぬ父親を探しに、屋久島から東京にやって来た少年が主人公。“父親探し”がストーリーの軸になってはいるのだけど、夢だか現実だかよくわからないような…

鮪のこと(その2)

最近、夜眠れなくて困っている。昨日なんかも目が冴えまくってぜんぜん眠れなくて、結局徹夜のまま面接受けることになっちゃったし。今日も眠れないまま朝を迎えようとしているので(いま寝たらぜったい授業に出れない…)、俺がかてきょをやっている小6男子…

鮪のこと

何度かここに書いているH(中1・♂)の他に、俺はいまもうひとりの子のかてきょもやっている。この春から小6になった彼のことを、ここでは鮪と呼ぼうとおもう。なぜ鮪なのか?きわめてシンプルなその答えは、彼のすきなものが鮪だからだ、という一点に尽きる…

『ポスト・オフィス』/チャールズ・ブコウスキー

ブコウスキーの長編。ひたすら過酷なうえに退屈すぎる公務員の仕事と、酔っぱらいの日々がだらだらと描かれている。内容はだらだらなんだけど語り口は軽快で、テンポよく読み進めていける。ブコウスキーの小説って、なんかもう全部同じだよなー、って改めて…

『母なる夜』/カート・ヴォネガット・ジュニア

第二次大戦中、ドイツでプロパガンダ放送に従事していたアメリカ人の男の物語。彼はナチであると同時にアメリカのスパイでもあって、放送によって本国に情報を送り出してもいた。戦後、男はドイツにもアメリカにも居場所を失い、ニューヨークのグレニッチヴ…

『タイタンの妖女』/カート・ヴォネガット・ジュニア

これはすばらしい小説だった!!物語はかなりスラップスティックな感じで、むちゃくちゃな状況にひたすら翻弄されつづける人間の姿が皮肉っぽく描かれている。ただ、ヴォネガットはそれをくだらない、って言うんじゃなく、愛情を込めた視線で見つめているか…

無気力にとりつかれて

昨日あたりから、すっかり無気力にとりつかれてしまっている。自分の中身がからっぽのような、重力に抵抗する気力も出ないような、どうにも力の入らない感じ。とにかく億劫。おまけに、さっき気がついたんだけど、今日はほとんど人と喋ってもいないのだった…

小説を読むこと

小説を読むときって、その小説のなかに入っていくような感覚がある、とおもう。俺のなかでは、もしかしたら昔に本か何かで読んだのかもしれないのだけど、「海のなかに潜っていく」ようなイメージがある。小説っていう海のなかに潜っていくためには、勢いや…

『愛人(ラマン)』/マルグリット・デュラス

記憶についての、そしてイマージュについての小説。これだけ繊細で微妙な、しかも派手さのない作品が、フランスでは150万部のベストセラーになったっていうのはちょっと驚きだ。マルグリット・デュラスは、自身の少女時代、仏領インドシナでの中国人青年との…