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『女神の見えざる手』

女神の見えざる手(字幕版)

女神の見えざる手(字幕版)

  • ジェシカ・チャステイン
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ロビイストの主人公(ジェシカ・チャステイン)の姿がとにかくやたらと格好いい、社会派サスペンス。大手ロビー会社で、目的のためなら手段を選ばない敏腕として知られていたエリザベス・スローンは、ある日、新たな銃規制法案を廃案にするよう依頼される。しかし、信念に反する仕事はやらない主義だという彼女は、部下を引き連れて小さなロビー会社に移籍、全米ライフル協会とかつての同僚たちを相手取って、銃規制派としての活動を繰り広げていくことに。エリザベスの読みは恐ろしく鋭く、取る手段は常に緻密だが、非常に計算高い上にどこまでも冷徹、倫理観などといったものはまるで持ち合わせていないように見える。彼女は誰もがおもいもかけないような手段で勝利に近づいていくのだったが…!

アメリカの銃規制とロビー活動を扱った政治ものという要素はあれど、本作はあくまでもミス・スローンという一人の女の、己の信念を貫くための孤独な戦いの物語だと言っていいだろう。もっとも、彼女の内面そのものについて明確に語られるようなシーンがあるわけではないので、彼女の信念が具体的にどういったものであるのかは、作中の他の登場人物たちと同様に、観客にも最期までよくわからない。

ミス・スローンには家族も恋人もおらず、私生活はまったくのゼロ。完全なワーカホリックで、睡眠はとらず(向精神薬をのむだけ)、食事はいつも同じ中華料理店でとる。そのくせスタイル抜群で、どんなときでも黒のスーツにハイヒール、真紅のルージュでメイクもばっちり決めている。性欲は高級エスコートサービスで満たすが、心の渇きを満たそうとすることは滅多にない。味方にも決して手の内を明かすことはなく、ただ勝つためだけにすべてを捧げているように見える。

まあとにかく一貫して、よくわからないけれど異様なまでに強い意思力とタフネス、心の闇と勝利への執着心とを持ち続けている、恐ろしく強い女であり続けるのだ。かなりハードボイルドな作風だと言っていいだろう。それだけに、彼女の信ずるものや弱さといったものが一瞬だけ垣間見えるようにおもえたとき、観客は心揺さぶられることになる。

物語のテンポは小気味よく、演出は程よくスタイリッシュで、無駄な描写がないところも良かった。全編通してクールでシャープで、切り詰められている映画だった。