映画
ニューポートでの元恋人シルヴィとの別れ――映画オリジナルのこのシーンに、本作のディラン像が凝縮されている。「帰らないでくれ」と言うだけで、釈明を一切しない男。誰にとっても"a complete unknown"であり続けるその姿を読み解く
原作未読での感想。観客を楽しませる要素が全編に凝らされた、手堅い大作エンタメ映画だった。よくできているし、最後まで退屈しないで見られるのだが、「これを伝えたい」という強い意志のようなものはいまいち感じられない作品でもあった
ファミリー公認の「正史」として作られた本作をどう見るか。主演キングズリー・ベン=アディルの憑依ぶりと、公認された物語にしか持てない強みについて考えた
パパ活女子がお葬式で修羅場、という軽快なコピーの裏に、これほど濃密な内面描写が詰まっているとは。悲劇と喜劇が同居するこの映画の奇妙なおかしさについて考える
フィクションを通してしか自己を表現できない父と娘。単純な和解でも赦しでもないエンディングの誠実さと、それを支えるポリフォニー的な対話について考えた
深緑野分原作のアニメ映画。児童文学的にテンポよく展開する物語は小綺麗にまとまっており、誰でも楽しめるウェルメイドな仕上がり。もっとも、優等生的な雰囲気ゆえの物足りなさもどこかに感じられた
低評価が目立つ本作を擁護的に分析・考察する。「説明的すぎる台詞」「ご都合主義的な死者の国」「唐突なミュージカルシーン」は単なる欠陥か?YA文学的手触り、赦しと自己受容という主題を軸に、作品を肯定的に読み解く試み
ヴェンダースが山本耀司のパリコレ準備を追ったドキュメンタリー。生きるための服を理想とする山本の思想と、アシンメトリーや入れ子構造を多用したヴェンダースの映像。メインストリームから適度な距離を取る、職人的な二人の作家が共鳴するさまがぐっとくる
トラン・アン・ユン監督による、19世紀末の美食家と料理人の物語。静謐な映像と、繊細に響く調理の音が、芸術にまで高められた料理を美しく描き出していく。互いの情熱をリスペクトし合う、その特殊な愛の形を読む
ダイナソーJr.がオリジナルメンバー3人で復活した後、2011年6月にワシントンDCで行われた、3rdアルバム『BUG』全曲再現ライブの映像。抽選で選ばれたファンたちの手によって撮影された素材が用いられている。だから映像自体はだいぶ粗いのだけれど、それだけ…
Dinosaur Jr.のドキュメンタリー映画。音楽性よりも、メンバー3人の関係性に焦点が当てられている。J自身が「機能不全の家族」と呼ぶ抜き差しならぬ関係が奇跡的に整ったときにだけ、あの素晴らしい轟音が鳴り響くのだ、ということがよくわかる
家族も恋人も持たず、勝利だけを求める敏腕ロビイスト、ミス・スローンの姿はハードボイルドそのもの。その強さと、わずかに垣間見える脆さを手がかりに、彼女の人物像を読み取る
ポップでソフトで猥雑、90年代らしいごちゃごちゃ感のある映画。雑駁な香港の街をファンタジーに変える映像の力と、フェイ・ウォンが"Dreams"にのせて男の部屋を模様替えしまくるシーンの無邪気で危うい多幸感は忘れがたい
是枝裕和監督の2004年作。痛ましい事件の影に潜む日常の豊かさと、生のきらめきを静かに照らす一作。ニュースや物語の筋書きでは掬いきれない、ディテールの繊細さが呼び起こす情感に迫る
ある夏の日、ベルリンに暮らす30歳のサシャは突然倒れ、そのままこの世を去ってしまう。あまりにも唐突な彼女の死は、恋人のローレンスにとっても、サシャの妹ゾエをはじめとする家族にとっても、そう簡単に受け止められるものではない。傷を抱えたもの同士…
インディ感溢れる小品。親に依存され、社会にも馴染めない、閉塞感と暗さに満ちた環境に置かれた若いふたりが、恋というより共振するように惹かれ合う。互いに結びつくものがあったとしても、男女で選ぶ未来がまったく異なる、というリアルな残酷さが印象的
インド映画ながら、しっとりとしたヨーロッパ的なトーンで描かれる、孤独な大人ふたりの人生。「600万分の1」の奇跡的なお弁当の誤配送が、手紙を通じた心の交流を生み、やがて人生に活力を取り戻す
コンサート引退後、80歳を超えてなおピアノ教師を続けるシーモア・バーンスタインの姿を追ったドキュメンタリー。一音の妥協も許さぬ厳格さと、柔らかな語り口。音楽と人生を深いところで一体化させた一人の老ピアニストの姿に、シンプルな人生の幸福を見る
スティーヴン・ホーキングの元妻ジェーンによる半生記。余命宣告された夫を支え、介護、出産、育児をこなした彼女の決意と苦悩が描かれる。別離を経ても、二人の信頼が作り上げた独自の「セオリー」はなお残り、その美しさは観客にもはっきりと感じられる
去年、TOHOシネマズシャンテにて。生物数学者の女(アリシア・ヴィキャンデル)とMI-6の諜報員の男(ジェームズ・マカヴォイ)が、ノルマンディーの海辺にある小さなリゾートホテルで出会う。ふたりはそれぞれ、自らの信念を賭けた大きなミッションを数日後…
『長くつ下のピッピ』等で知られる児童文学作家が、作家になる以前を描いた物語。信仰や規範、過酷な現実と向き合いながら自分の人生を引き受けていく姿は、ピッピのような力強さを感じさせるものだ
勇気とは美しいものだが、既存のシステムに立ち向かうのに、勇気だけではどうしようもない――田舎町に本屋を開こうとした女性の、あらかじめ敗北を決定づけられた闘いを扱った一作。人間の邪悪さや冷淡さがねっとりと描かれている
ずいぶん以前に、早稲田松竹にて。(以前の邦題は、『ソフィー・マルソーの刑事物語』。)『ヴァン・ゴッホ』とよく似ているところは、登場人物たちが何をかんがえているのかはっきりとはわからない、というところだろう。愛を知らない孤独な男女が、その孤…
ずいぶん以前に、早稲田松竹にて。こんなに素晴らしい作品のことをいままでまったく知らなかったとは…!っておもってしまうほど、深い情感を描き出した、美しい映画だった。ぼわっとした光と影、気怠い空気感のなかで、ファン・ゴッホの晩年、オーヴェル=シ…
新宿シネマカリテにて。70年代イングランド北部で発生したニッチなポップカルチャーのムーブメント、「ノーザン・ソウル」のシーンを舞台にした作品。いわゆるワーキングクラスの青年が、ノーザン・ソウルの音楽とダンスに没頭することで10代の鬱屈を生き延…
新宿武蔵野館にて。デンマーク映画。警官のアスガーは、ある事件がきっかけで現場を退くこととなり、緊急通報室のオペレータとして、事故現場に警官を派遣するだとか急病人の緊急搬送を手配するだとかいった、細々した事件に応対する日々を過ごしていた。だ…
ずいぶん以前に、早稲田松竹にて。ディカプリオのドヤ顔がたくさん見られて――しかしこの人は本当にいろいろなドヤ顔を持っている!――それだけでもおもしろい、マーティン・スコセッシ作のブラックコメディ。これもまた実話をもとにした作品なのだけれど、『…
ずいぶん以前に、早稲田松竹にて。LAに暮らす裕福な家庭の子供たちが、夜な夜なセレブの空き家に忍び込み、窃盗を繰り返す…という、本当にそれだけの話(実話)を描いた作品。「シャネルのバッグが欲しいの」→「そういえば、リンジー・ローハンは今晩パーテ…
ウォールフラワー(字幕版)発売日: 2014/09/03メディア: Prime Videoこの商品を含むブログを見る 日比谷TOHOシネマズシャンテにて。他人とコミュニケーションを取ることが苦手で、文字通り「壁の花」だった16歳の少年が、自分を認めてくれる友人たちと出会い…
ボリス・ヴィアンの原作を尊重したシュールな映像美は素晴らしく、原作ファンなら見て後悔することはない一作。ただ、主役二人がかなり知的で大人びているため、若さゆえの愚かさ、という雰囲気は薄くなっている印象もあった