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本、映画、音楽の感想/レビューなど。

2013-01-01から1年間の記事一覧

「ユダヤ人問題によせて」/カール・マルクス

ユダヤ人問題によせて ヘーゲル法哲学批判序説 (岩波文庫 白 124-1)作者:カール・マルクス岩波書店Amazon ブルーノ・バウアーの2つの論文に関する書評。ごく短い論考ではあるのだけれど、マルクスは、バウアーの意見を叩き台としつつも、その限界点を指摘す…

『生きがいについて』/神谷美恵子

「生きがい」とは何なのか、それは人の生にとってどのような意味を持っているものなのか、どのように人は「生きがい」を得るに至るのか、などといったことについて扱われた一冊。もちろんこれは「生きがい」を手に入れるためのハウツー本ではないわけで、そ…

『共産党宣言』/カール・マルクス、フリードリヒ・エンゲルス

マルクス・エンゲルス 共産党宣言 (岩波文庫)作者:マルクス,エンゲルス岩波書店Amazon 1848年に公刊された、「共産主義者同盟」の綱領を示した文書。近代ブルジョア社会の構造と発展についての理論的な説明と、プロレタリア革命の必然性、また、当時の各国に…

『番茶菓子』/幸田文

幸田文のエッセイ集。3,4ページの掌編が集められたもので、ちびちび読んでいくのがたのしい一冊だ。内容的には、日常雑記的なものや思い出語りが大半で、どれもごく淡々としているのだけれど、その淡々とした感じ、その時々の気分や想いというのをきちんと言…

『アラン・ケイ』/アラン・カーティス・ケイ

アラン・ケイ (Ascii books)作者: アラン・C.ケイ,Alan Curtis Kay,鶴岡雄二出版社/メーカー: アスキー発売日: 1992/04メディア: 単行本購入: 5人 クリック: 69回この商品を含むブログ (48件) を見る アラン・ケイは、メインフレーム主流の時代に、個人で使…

『ムード・インディゴ うたかたの日々』

渋谷シネマライズにて。ディレクターズカット版を見てきた。ヴィアンのファンなら見て後悔はしないはず…と聞いていた本作だけれど、たしかに、かなり原作(『うたかたの日々』/ボリス・ヴィアン)を尊重した作りになっていたようにおもう。ミシェル・ゴンド…

『ふしぎなキリスト教』/橋爪大三郎、大澤真幸(その3)

ふしぎなキリスト教 (講談社現代新書)作者: 橋爪大三郎,大澤真幸出版社/メーカー: 講談社発売日: 2011/05/18メディア: 新書購入: 11人 クリック: 184回この商品を含むブログ (137件) を見る 第3部 いかに「西洋」をつくったか 第3部で扱われるのは、キリスト…

『ふしぎなキリスト教』/橋爪大三郎、大澤真幸(その2)

第2部で取り上げられるのは、イエス・キリストにまつわるさまざまな疑問だ。イエス・キリストとはいったい何か?どのようにかんがえられ、どのように扱われてきたのか?預言者ではない、とされているが、じゃあいったい何者なのか?人間なのか神なのか?…と…

『ふしぎなキリスト教』/橋爪大三郎、大澤真幸(その1)

ふしぎなキリスト教 (講談社現代新書)作者: 橋爪大三郎,大澤真幸出版社/メーカー: 講談社発売日: 2011/05/18メディア: 新書購入: 11人 クリック: 184回この商品を含むブログ (137件) を見る 非常にわかりやすくまとめられた一冊。大澤が「誰もがいちどは抱く…

『絵のない絵本』/ハンス・クリスチャン・アンデルセン

貧しい絵描きの若者を慰めるため、月は夜ごとにやって来ては、一晩に一話ずつ、これまでに見てきたさまざまなできごとを語って聞かせてくれました…という形式で書かれた、連作の短編集。一編あたり4,5ページくらいの長さのものがほとんどなので、短編という…

Beth Orton@渋谷CLUB QUATTRO

10月15日、クラブクアトロにて、13年ぶりに来日してくれたベス・オートンの単独公演。感想をひとことで言うなら、とにかく地味だが、そこがいい、という感じのライブだった。アルバムのサウンドにも派手なところなどまるでないベス・オートンだけれど、アコ…

Bernd Glemser / Stanisław Skrowaczewski: 読売日本交響楽団@東京芸術劇場

10月4日、池袋芸劇にて、スクロヴァチェフスキ/読響のコンサート。スクロヴァチェフスキは、舞台袖から指揮台まで歩いてくるようすを見ている限りでは、ちょっと不安になってしまうくらいのじいちゃんだったけれど、非常に精密かつパワフルな演奏を作り出し…

『悲しき熱帯』/クロード・レヴィ=ストロース(その2)

前回のエントリには、読みづらさのことばかり書いてしまったけれど、1巻の終盤以降からは、フィールドワークの話が主軸になっていく(そこから、横道に逸れるような形で省察が展開される)ので、だいぶ読みやすくなってくる。レヴィ=ストロースは、南米の「…

『悲しき熱帯』/クロード・レヴィ=ストロース(その1)

悲しき熱帯〈1〉 (中公クラシックス)作者:レヴィ=ストロース中央公論新社Amazon レヴィ=ストロースの思想と方法論とが収められた一冊。1935年から1939年まで、ブラジル奥地のインディオのもとに赴いて行ったフィールドワークの記録と合わせて、彼が「いかに…

『『嵐が丘』を読む ポストコロニアル批評から「鬼丸物語」まで』/川口喬一

『嵐が丘』を読む作者:川口 喬一みすず書房Amazon 『嵐が丘』に関するさまざまな文学批評、読みの方法が取り上げられた一冊。さすが古典と言うべきか、ロマン主義の表現主義的批評から始まって、リアリズム批評やマルクス主義批評、ニュー・クリティシズムや…

『嵐が丘』/エミリー・ブロンテ(その2)

前回のエントリでは、本作の登場人物は全員が全員、超エゴイストだという話を書いたけれど、『嵐が丘』を『嵐が丘』たらしめているのはやはり、ヒースクリフという人物の造形だろう。彼の復讐にかける異様なほどの執着心こそが、本作全体の激烈さの震源地な…

『嵐が丘』/エミリー・ブロンテ

いやーおもしろかった!さすがは古典中の古典、これを読んで何の感興も抱かない人などどこにもいないだろう、っておもえるくらい、パワフルで心揺さぶられずにはいられない、文字通り嵐のように激しい小説だった。物語の舞台は19世紀のイングランド北部、ヨ…

『クロニクル』

ひとことで言うなら、ティーンエイジャーの鬱屈した内面を「超能力」というツールを用いることによっておもいっきり肥大化させ、その痛みや閉塞した感覚を描き出した、という感じの作品だ。プロットに関してはおおよそ予想の範囲内だったけれど、物語のクラ…

『職業としての学問』/マックス・ヴェーバー

マックス・ヴェーバーが1919年に行った講演を文章化した一冊。80ページ程度の薄い本だけれど、内容は濃密で、なかなかおもしろく読めた。 かつて、学問というものは、「真の実在」や「真の芸術」、「自然の真相」、「真の神」、あるいは「真の幸福」への道で…

『こうしてお前は彼女にフラれる』/ジュノ・ディアス

こうしてお前は彼女にフラれる (新潮クレスト・ブックス)作者: ジュノ・ディアス,都甲幸治,久保尚美出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2013/08/23メディア: 単行本この商品を含むブログ (17件) を見る 前作『オスカー・ワオの短く凄まじい人生』にも出てきたユ…

『アリーテ姫の冒険』/ダイアナ・コールス

「かしこい」お姫様、アリーテ姫が、男たちの悪巧みをひらりひらりとくぐり抜け、強く、どこまでも自然体のままで生きていく…という童話。古色蒼然とした「お姫様」像を塗り替える、頭脳派で行動派、プラス思考なヒロインが魅力的な物語だ。 「姫、おまえが…

『たのしいムーミン一家』/トーベ・ヤンソン

たのしいムーミン一家 (ムーミン童話全集 2)作者: トーベ・ヤンソン,Tove Jansson,山室静出版社/メーカー: 講談社発売日: 1990/06/22メディア: 単行本購入: 5人 クリック: 16回この商品を含むブログ (16件) を見る 「ムーミン童話全集」の二冊目。ある春の日…

『風立ちぬ』

風立ちぬ [DVD]出版社/メーカー: ウォルト・ディズニー・ジャパン株式会社発売日: 2014/06/18メディア: DVDこの商品を含むブログ (122件) を見る 109シネマズ木場にて。宮崎駿のいままでの作風とはずいぶんと異なる作品だった。前評判は「大傑作!泣けちゃう…

『教養のためのブックガイド』/小林康夫、山本泰編

ときおり、「読みたい本リスト」というやつを更新したくなる。リストにはとにかく本の名前が大量に並んでいるので、すぐに自分でも内容が把握できなくなる(だから、じっさいのところ、いまいちうまく機能していない…)のだけれど、本読みのモチベーションを…

『魂の労働 ネオリベラリズムの権力論』/渋谷望(その3)

終章「<生>が労働になるとき」は、全体のまとめ的な内容の一章だ。新自由主義的な言説、新自由主義的なコモンセンスが醸成されるに至った理由と、それらを打破するための方策について、改めて考察がなされている。 「自己実現」、「労働の喜び」、「やりが…

『魂の労働 ネオリベラリズムの権力論』/渋谷望(その2)

魂の労働―ネオリベラリズムの権力論作者: 渋谷望出版社/メーカー: 青土社発売日: 2003/10/01メディア: 単行本購入: 5人 クリック: 88回この商品を含むブログ (94件) を見る 2章から8章においては、新自由主義的な言説とそれがもたらす効果について、さまざま…

『魂の労働 ネオリベラリズムの権力論』/渋谷望(その1)

現在の新自由主義社会で作動している権力ゲームの内実を分析し、そのなかでもとくに「労働」とはいかなる意味を持ったものになっているのか、ということについて語られた一冊。買ったのは大学生の頃(8年くらい前)だけれど、最近ようやく読み終えたので、簡…

『チャイルド・オブ・ゴッド』/コーマック・マッカーシー

チャイルド・オブ・ゴッド作者: コーマック・マッカーシー,Cormac McCarthy,黒原敏行出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2013/07/10メディア: ハードカバーこの商品を含むブログ (22件) を見る マッカーシーの1973年作。長編としては3作目、『すべての美しい…

『精神疾患とパーソナリティ』/ミシェル・フーコー

精神疾患とパーソナリティ (ちくま学芸文庫)作者:ミシェル・フーコー,中山 元,Michel Foucault筑摩書房Amazon フーコーの最初の著作。精神の病は身体の病とはどのように異なるのか、どのような人が精神疾患を患っていると言えるのか、通常の人間と狂者との境…

『オズワルド叔父さん』/ロアルド・ダール

ダールの長編。オズワルド叔父さんなる男――「鑑定家、陽気なお人好し、蜘蛛と蠍とステッキの蒐集家、オペラ愛好家、中国磁器の権威、女たらし、それにたえて偉大なる姦夫でなかったためしはない」男――がいかにして巨万の富を築くに至ったか、についての物語…