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本、映画、音楽の感想/レビューなど。

本-文学-アメリカ文学

『人間とは何か』/マーク・トウェイン

人間のあらゆる動機は結局のところ「自己満足」に集約される、というトウェインの主張は身も蓋もないが、何だか納得させられてしまう。人間存在の変容を求めるプラトンのイデア論と比較してみると、トウェインの人間観のドライさが一層浮き彫りになった

『世界は終わらない』/チャールズ・シミック

悪夢的なユーモアと静謐な不穏さを併せ持つ、チャールズ・シミックの散文詩集。ボリス・ヴィアンやジャズ、ヴォルフガング・ティルマンズの表現を手がかりに、その独特な「ホームスパン・シュルレアリスム」を読み解く

『パターン・レコグニション』/ウィリアム・ギブスン

作中に登場する「バズリクソンズの黒いMA-1」を、20年以上前に父が現実の製品として購入していた話と合わせた読書感想。MA-1を介して久々に触れた、ギブスンの独特なグルーヴは心地よかった

『フライデー・ブラック』/ナナ・クワメ・アジェイ=ブレニヤー

「腹が立ったら微笑む。叫びたい時には囁く」。現代アメリカの黒人差別や資本主義の狂気を扱った短編集。過激なデフォルメやディストピア設定の中に、生々しい怒りと悲しみが読み取れる

『インヴィジブル』/ポール・オースター

オースターの2009年作。前の数作と同様に、死を前にした老年の男が主人公の物語ではあるものの、多くのページはその男による若き日の回想録が占めているため、『写字室の旅』や『闇の中の男』のような陰鬱でどんよりした感じはさほど強くはない。その代わり…

『僕の名はアラム』/ウィリアム・サローヤン

サローヤンによる短編集。古き良き、と言っていいような、20世紀初頭、アメリカはカリフォルニアの田舎町での、「僕」と周囲のアルメニア人移民の家族や村の人々との生活を描いている。 物語世界に悪人は登場せず、登場人物たちは、みな大らかで明るく、基本…

『ワインズバーグ、オハイオ』/シャーウッド・アンダーソン

閉塞した中西部の田舎町に暮らす「いびつな者たち」の小さな物語を集めた短編集。不安や生きづらさを感じながら生きる彼らに不意に訪れる、抗い難いほどに強烈な衝動と、その瞬間的な輝き、そしてその悲劇的な結末について

『火星の人』/アンディ・ウィアー

宇宙飛行士ワトニーは、不運な事故で火星に一人取り残される。限られた物資と知識、持ち前のユーモアと陽気さだけを武器に、彼はどう生き延びるのか? 現実のプロジェクトを追っているようなリアリティが楽しい一作

『理由のない場所』/イーユン・リー

16歳で自殺した息子との「想像上の対話」だけで構成された長編。大きな喪失に直面した作家が、「書く」ことで、なんとかその経験に対峙する術を探っていこうとする、闘いの軌跡

『ブリージング・レッスン』/アン・タイラー

アン・タイラーは、とにかくふつうの市井の人々の描写というやつがむちゃくちゃに上手い。というか、そもそも彼女の小説はすべて、そういった人々を描いたものだと言ってもいい。ひとくせもふたくせもあることは間違いないけれど、でも本当に平凡な人々、に…

『闇の中の男』/ポール・オースター

オースターの2008年作。2000年代にオースターが書いていた「部屋にこもった老人の話」の第5作目ということで、本作も、ひとりの老人が自室の暗闇のなかで眠りにつくことができず、頭のなかで物語をあれやこれやとこねくり回している場面から始まっている。 …

『in our time』/アーネスト・ヘミングウェイ

『われらの時代』の扉部分のみを集めた超短編集(柴田元幸訳)を読む。戦場や闘牛場の暴力を描きながらも高揚はなく、乾いた断章が倦怠と荒廃の感触だけを残していく

『誰がために鐘は鳴る』/アーネスト・ヘミングウェイ

ヘミングウェイの長編。1930年代のスペイン内戦を舞台に、共和国側の義勇兵としてゲリラ部隊を率いるアメリカ人、ロバート・ジョーダンの4日間を描く。ジョーダンの任務はグアダラマ山脈にある橋の爆破だけれど、頼りにできるのは10名にも満たない地元のスペ…

『コズモポリス』/ドン・デリーロ

2000年のニューヨーク。若くして投資会社を経営する主人公は、自分の周りにあるすべてにリアリティを感じられないでいる。莫大な資産、鍛え上げた肉体、株式の動きを見抜く才能、特殊改造されたハイテクの豪華リムジン、優秀な部下、ボディーガード、専属の…

『ファイト・クラブ』/チャック・パラニューク

『ファイト・クラブ』といえば、タイラー・ダーデンをアイコンとした、「消費資本主義からの脱出と自己決定」というイメージが強いだろう。しかし実際のところ、本作が描いているのは、この世界でそのような「自己決定」を行うことの不可能性、の方ではないか

『怒りの葡萄』/ジョン・スタインベック

1930年代アメリカ。土地を奪われ、徹底的に搾取される小作農たち。スタインベックは何も持たない者がそれでも生きていくことに、聖なるものを見出しているようだ。富の集中と貧困に対する哀しみと激しい怒り、そして警告を読み解く

『写字室の旅』/ポール・オースター

オースターの2007年作。シンプルな四角い部屋のなかに、老人が一人。彼には何の記憶もない。部屋の天井には隠しカメラが設置されており、その姿を撮影し続けている。やがて、彼の元をさまざまな人物が訪ねてくるのだが…! 長編と呼ぶには分量少なめの本作は…

『時は乱れて』/フィリップ・K・ディック

時は乱れて (ハヤカワ文庫SF)作者: フィリップ・K.ディック,Philip K. Dick,山田和子出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2014/01/10メディア: 文庫この商品を含むブログ (5件) を見る ディックの1959年作。かなり初期の作品だけれど、なかなかおもしろく読め…

『こうしてお前は彼女にフラれる』/ジュノ・ディアス

『オスカー・ワオの短く凄まじい人生』にも登場した、浮気を繰り返すモテ男、ユニオールが主人公の短編集。一見ぶっきらぼうだが、じつはウェット、という文体は、全体的に突き放しが足りない感も

『チャイルド・オブ・ゴッド』/コーマック・マッカーシー

チャイルド・オブ・ゴッド作者: コーマック・マッカーシー,Cormac McCarthy,黒原敏行出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2013/07/10メディア: ハードカバーこの商品を含むブログ (22件) を見る マッカーシーの1973年作。長編としては3作目、『すべての美しい…

『日はまた昇る』/アーネスト・ヘミングウェイ

ヘミングウェイの最初の長編。短いセンテンスを連ねた簡潔でリズミカルな文体、ぶっきらぼうな会話文、主人公の心情をあからさまにしないハードボイルドな態度、などといった彼の語りのスタイルは、今作の時点ですでに確立されていると言っていいだろう。 物…

『いちばんここに似合う人』/ミランダ・ジュライ

キュートでポップな文体ながら、登場人物の孤独や痛みにじっと迫りる語り口が印象的。独特な間合いで世界に向き合う態度と、計算高くも遊び心のあるおしゃれなムードが強力な一冊

『ノアの羅針盤』/アン・タイラー

アン・タイラーが描くのは、派手な事件ではなく、その後の日常における「少しずつ」の変化だ。丁寧な描写の積み重ねによって、停滞していた人生が静かにグルーヴし始める様を映し出していく。地味だけれど愛おしい、再出発の物語を読み解く

『ワールズ・エンド(世界の果て)』/ポール・セロー

米作家、ポール・セローの短編集。各短編はロンドン、コルシカ島、アフリカ、パリ、プエルト・リコなど、いずれもアメリカ人の主人公たちにとっての"異国"を舞台としている。"異国"のルールを理解/把握することのできない彼らは、漠然とした不安や寄る辺のな…

『ブルックリン・フォリーズ』/ポール・オースター

60歳の男が主人公だが、どこか青春小説のような感性も感じられる一作。孤独や偶然といったオースターおなじみのモチーフと、饒舌で軽妙、ユーモラスな面を存分に楽しめる。陽性の雰囲気がとても良い

『わがタイプライターの物語』/ポール・オースター

オースターとメッサー、ふたりの偏屈な芸術家の、タイプライターへの愛着がぎゅっと詰まった絵画&エッセイ集。人生の半分を共に過ごした道具、そんなものがあるというのは、ちょっぴり心強く、頼もしいことではないかとおもう

『タイガーズ・ワイフ』/テア・オブレヒト

タイガーズ・ワイフ (新潮クレスト・ブックス)作者: テアオブレヒト,T´ea Obreht,藤井光出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2012/08/01メディア: 単行本 クリック: 3回この商品を含むブログ (17件) を見る 旧ユーゴスラヴィアはベオグラード出身、1985年生まれ…

『スローターハウス5』/カート・ヴォネガット・ジュニア

ヴォネガットの長編第6作目。作中、過去の作品の主要なキャラクターたちがたびたび顔を出していることからも明らかであるように、いままでの集大成といった趣の作品である。取り扱われるモチーフは、ヴォネガット自身が体験したという、第2時大戦中のドレス…

「アウルクリーク橋の出来事」/アンブローズ・ビアス

ヴォネガットが、「アメリカ的天才の完璧な見本」と絶賛した短編。絞首刑となる男の極限状態を描くにあたって用いられた、「緊張→放り出し」という技法がもたらす不気味な効果について考察する

『国のない男』/カート・ヴォネガット

文明批評とユーモア溢れるヴォネガット節の集大成的な一冊。「これが幸せでなきゃ、いったい何が幸せだっていうんだ」当たり前すぎて見失いがちな、幸福への気づきを説くおじさんの言葉が胸に染みる