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本、映画、音楽の感想/レビューなど。

本-思想・哲学

『ひとはなぜ戦争をするのか』/アルバート・アインシュタイン、ジグムント・フロイト

アインシュタインとフロイトの往復書簡『ひとはなぜ戦争をするのか』書評。人間の「憎悪の本能」を欲動理論から読み解き、文化の発展によって戦争を拒否する身体が生まれる可能性を探る一冊。だが、その希望はどこまで現実的なのか

『マルクス・ガブリエル 欲望の時代を哲学する』/丸山俊一+NHK「欲望の時代哲学」制作班

NHKの番組の内容を新書化した一冊。1,2章には、マルクス・ガブリエル訪日時の発言や講義(哲学史の概説と、その流れのなかに位置づけられる新実在論の解説)を文字起こししたものが、3章には、ロボット工学科学者の石黒浩との対談が収められている。元がテレ…

『だいたいで、いいじゃない。』/吉本隆明、大塚英志

吉本隆明と大塚英志の対談集。『エヴァ』『オウム』など90年代トピックを語り尽くすなかで見えてくる、「繰り返すこと」、そして「頭ではなく手で考えること」について

『ちぐはぐな身体 ファッションって何?』/鷲田清一

鷲田清一『ちぐはぐな身体 ファッションって何?』書評。自分の身体は常に不確かな<像(イメージ)>でしかない。衣服が秩序の無根拠性を隠蔽する装置であるという鋭い問いを通し、装うことの真意を考察する

『零度のエクリチュール』/ロラン・バルト

ロラン・バルト『零度のエクリチュール』読書ノート。作家の倫理が宿る「エクリチュール」の定義とは何か。カミュ『異邦人』にみる「白いエクリチュール」の可能性と、それが再び歴史に縛られていく文学の袋小路について、その構造を整理した記録

『ニック・ランドと新反動主義 現代世界を覆う〈ダーク〉な思想 』/木澤佐登志

新反動主義(暗黒啓蒙)と呼ばれる、なんともキナ臭い思想的ムーブメントの概要と、それが形成されるに至った流れについてまとめられた一冊。ペイパル共同創業者のピーター・ティール、Tlon経営者のカーティス・ヤーヴィン、哲学者のニック・ランドという三…

『知識人とは何か』/エドワード・W・サイード

エドワード・W・サイード『知識人とは何か』書評。権力や世間に迎合せず、あえて「周辺的存在」に留まり批判を投げかけ続ける――サイードが定義する、本来あるべき知識人の姿を読み解く。専門家や「有識者」ばかりが重用される現代において、今こそ参照すべき…

『自発的隷従論』/エティエンヌ・ド・ラ・ボエシ

エティエンヌ・ド・ラ・ボエシ『自発的隷従論』書評。なぜ人間は、自ら自由を放棄し、たったひとりの圧制者に進んで服従するのか?常態化した隷従状態を「自然なもの」として受け入れ、やがて習慣化していく人間の本性を鋭く抉った一冊。

『生きがいについて』/神谷美恵子

「生きがい」とは何なのか、それは人の生にとってどのような意味を持っているものなのか、どのように人は「生きがい」を得るに至るのか、などといったことについて扱われた一冊。もちろんこれは「生きがい」を手に入れるためのハウツー本ではないわけで、そ…

『ふしぎなキリスト教』/橋爪大三郎、大澤真幸(その3)

ふしぎなキリスト教 (講談社現代新書)作者: 橋爪大三郎,大澤真幸出版社/メーカー: 講談社発売日: 2011/05/18メディア: 新書購入: 11人 クリック: 184回この商品を含むブログ (137件) を見る 第3部 いかに「西洋」をつくったか 第3部で扱われるのは、キリスト…

『ふしぎなキリスト教』/橋爪大三郎、大澤真幸(その2)

第2部で取り上げられるのは、イエス・キリストにまつわるさまざまな疑問だ。イエス・キリストとはいったい何か?どのようにかんがえられ、どのように扱われてきたのか?預言者ではない、とされているが、じゃあいったい何者なのか?人間なのか神なのか?…と…

『ふしぎなキリスト教』/橋爪大三郎、大澤真幸(その1)

ふしぎなキリスト教 (講談社現代新書)作者: 橋爪大三郎,大澤真幸出版社/メーカー: 講談社発売日: 2011/05/18メディア: 新書購入: 11人 クリック: 184回この商品を含むブログ (137件) を見る 非常にわかりやすくまとめられた一冊。大澤が「誰もがいちどは抱く…

『悲しき熱帯』/クロード・レヴィ=ストロース(その2)

レヴィ=ストロース『悲しき熱帯』。著者が直面するのは、観察者が抱える矛盾という普遍的なジレンマだ。人類学者の葛藤から生まれるメランコリーが、本書の美しさに繋がっている。

『悲しき熱帯』/クロード・レヴィ=ストロース(その1)

レヴィ=ストロースの古典『悲しき熱帯』を読む。多くの読者が挫折する「読みにくさ」の原因について、訳者の言葉と著者の思想から考えてみる。具体性を欠く描写が続く前半は、まさに文字通りの苦行だと言っていい

『魂の労働 ネオリベラリズムの権力論』/渋谷望(その3)

終章「<生>が労働になるとき」は、全体のまとめ的な内容の一章だ。新自由主義的な言説、新自由主義的なコモンセンスが醸成されるに至った理由と、それらを打破するための方策について、改めて考察がなされている。 「自己実現」、「労働の喜び」、「やりが…

『魂の労働 ネオリベラリズムの権力論』/渋谷望(その2)

魂の労働―ネオリベラリズムの権力論作者: 渋谷望出版社/メーカー: 青土社発売日: 2003/10/01メディア: 単行本購入: 5人 クリック: 88回この商品を含むブログ (94件) を見る 2章から8章においては、新自由主義的な言説とそれがもたらす効果について、さまざま…

『魂の労働 ネオリベラリズムの権力論』/渋谷望(その1)

現在の新自由主義社会で作動している権力ゲームの内実を分析し、そのなかでもとくに「労働」とはいかなる意味を持ったものになっているのか、ということについて語られた一冊。買ったのは大学生の頃(8年くらい前)だけれど、最近ようやく読み終えたので、簡…

『精神疾患とパーソナリティ』/ミシェル・フーコー

精神疾患とパーソナリティ (ちくま学芸文庫)作者:ミシェル・フーコー,中山 元,Michel Foucault筑摩書房Amazon フーコーの最初の著作。精神の病は身体の病とはどのように異なるのか、どのような人が精神疾患を患っていると言えるのか、通常の人間と狂者との境…

『哲学の教科書』/中島義道

哲学の教科書 (講談社学術文庫 1481)作者:中島 義道講談社Amazon 「哲学には「教科書」などあるはずがないということを、これでもかこれでもかと語り続けた」一冊。中島らしく、歯に衣着せないというか、率直過ぎるくらいに率直な語り口がたのしめる。読者に…

『方法序説』/ルネ・デカルト(その5)

形而上の問題(コギトと神の存在証明)について語ったあと、デカルトは自然界の諸問題へも手を伸ばしている。第一原理はもうばっちり確立できたのだから、そこから演繹的にさまざまな真理を導いていっちゃうよ俺、というわけだ。本書の後半では、当時、彼が…

『方法序説』/ルネ・デカルト(その4)

方法序説 (岩波文庫)作者: デカルト,Ren´e Descartes,谷川多佳子出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 1997/07/16メディア: 文庫購入: 31人 クリック: 344回この商品を含むブログ (203件) を見るようやく本書のメインパート、デカルトの形而上学の基礎をなす、…

『方法序説』/ルネ・デカルト(その3)

さて、先にデカルトが定めた4つの原則のうちのひとつには、「わたしが明証的に真だと認めるのでなければ、どんなことも真として受け入れないこと」というものがあった。けれど、はっきり真であるとわからない限り何ものも受け入れられないとなると、とうてい…

『方法序説』/ルネ・デカルト(その2)

もちろん、いったいなにが真実であるのか、真実と誤りとを見きわめるためにはどうすればいいのか、ということについては、古くからさまざまな哲学者たちによって議論が交わされてきていた。ただ、彼らの掲げる見解はなにしろ多様であるので、仮にそのうちの…

『方法序説』/ルネ・デカルト(その1)

ひさびさに、『方法序説』を読み返している。たぶん、大学の授業で読んだとき以来だ。じつをいうと、このごろは小説を読むのがなんだかまどろっこしくて仕方ない――あーもう、こんなの読んで何になるっていうんだ?とかって、すぐささくれた気分になってしま…

『ポストモダンの共産主義――はじめは悲劇として、二度めは笑劇として』/スラヴォイ・ジジェク

昨年出た、ジジェクによる現代政治論。短く、比較的さらりと読めてしまう一冊だけど、そこはジジェク。歯切れよく好戦的な、いつものジジェク節が炸裂している。21世紀になって起きた、グローバル資本主義における2大ショック――9.11と金融恐慌――を経た、グロ…

『ピエール・リヴィエール 殺人・狂気・エクリチュール』/ミシェル・フーコー

19世紀フランスの農園で、母・妹・弟を殺害した青年、ピエール・リヴィエールを巡る訴訟関連資料と、それらについての論考がまとめられた一冊。当時の資料から、狂気・司法・精神医学を巡る権力の作用を確認するべく、フーコーらは縦横に錯綜するさまざまな…

『母は娘の人生を支配する――なぜ「母殺し」は難しいのか』/斎藤環

なかなか強烈なタイトルの本だけど、興味深く読めた。母ー娘という関係性のなかで生じる支配ー被支配の問題、女性独特の身体感覚や母性といった要素を中心に、「母殺しの不可能性」がどうように成立しているのか、を解き明かしていこうとする母娘論。論の展…