読書はいいですよ、たくさん本を読むことはあなたの人生に絶対に有益ですよ、というシンプルな主張のもと、いろいろなエピソードを語っている一冊。まあよくあるタイプの本で、取り立てて斬新なところはないのだけれど、新聞の論説委員だった轡田の文章は軽妙で嫌味なところがまったくなく、たのしく読める。タイトルには「1000冊読む」とあるが、具体的に1000冊読むための技術や方法論が扱われているわけではなく、まあたくさん読もうぜ、くらいの意味だと言えそうだ。
轡田は早稲田大学でサッカーをやっていた自身の経験と照らしつつ、読み書きについてもサッカーと同じような「筋肉労働」であり、使わないでいるとなまってしまうものだ、と語る。
ほんのしばらくでも本を読まないでいると、「読む力」がてきめんに低下する(p.80) 期末試験やシーズン・オフでしばらく練習を休んだあとの練習は、とてもきつい。すぐに息切れるし、筋肉痛になるし、ボールは足についてこない。肉体も頭のなかも、つまり、なまってしまっている。(p.81) この「なまる」という状態はなかなか深刻な問題で、読書(文章を書くのも!)もまったく同じ。一日でも読まない(書かない)日があると、てきめんに「力」が「なまる」のだ。まずスピード。そして集中力。(p.81)
これは本当にそのとおりというか、いまの自分にとっては激しく同意できる指摘だった。いや、このこと自体はずっと前からわかっていたことではあるのだけれど、ちょっとしたことで読み書きの継続が途切れてしまうと、そこからのバウンスバックはなかなかに大変だよね、ということが最近身に染みていたところだったので、ついつい頷きまくってしまったのだった。
そういうときは、もっとうまく読みたい、書きたいといくら願ったりかんがえたりしてもだめで、轡田が語っているとおり、とにかく読む/書く行為を継続していく以外に有効な手立てはない。読書の「筋肉」をなまらせず、鍛えていくためには、とにかく日々続けていくしかないのだ。