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『読書の腕前』/岡崎武志

読書の腕前 (光文社新書)
書評家による、読書についてのエッセイ。なんか読書のモチベーションが下がってきてるなー、ってときには、こういう、本についての本、読むことについての本を読むのがいい。巻末には、著者の選んだおすすめ本も載っていたりして、読書欲が刺激される一冊。

なぜ人は本を読むのか。また、読まなければならないのか。
これは難しい問題である。ほんとうはちっとも難しくなんかないのだが、他人に説明するのは難しい。(p.20)

だよなー、ほんと、その通りだとおもう。この本でその答えが明確に示されているわけではないけれど(あたりまえだ!)、著者の読書に対する情熱は、生きることそのものにほとんど直結しているかのようで、その筆致はなかなかに熱い。

読書に費やしたこれまでの膨大な時間を、もっと別の有意義なものに置き換えられなかったのか。そんなふうに悔やんだことは一度もない。一度もない、といま気づいたことに驚いている。ほんとうに、一度もないのだ。そうして生きてきたのだ。だから、明日からも同じように生きていく。(p.259)

俺にとっても、本を読むのは昔からすごく大切なことであり続けているけど、でも、読書に費やした時間を後悔したことって、やっぱりあったよなー、とおもった。読書というのは、必ずしも“生産的”とは言い切れない行為であって、でも世の中では往々にして“生産的”であることが求められているわけで、だから、あーもうー、本なんか読んでどうしようというのか…、ってきぶんになったことって、読書がすきな人でも一度くらいはあるんじゃないかとおもう。たぶん。そういう読者にとって、こういう全肯定はとても清々しいし、なんだか眩しくもある。

なぜ読むのか。なぜ読むことが大切なのか。そういうことを知ろうとするときに、読むって行為にどんな意味があるのか、どんな価値があるのか、なんてことばっかり言いたがる人がいるけど、それだけをかんがえていても仕方がないようにおもう。以前に、なんで日記を書きたいっておもうのか、って話を書いたけど、それと同じことで、単純な意味とか価値とかいうのが、人を何かに駆り立てるきもちのなかでいちばん重要なものだなんて、とても言えないような気がする。

だから、「〜のための読書」みたいな物言いって、俺はあんまりすきになれない。何でもかんでも、“〜のため”っていうような、はっきりとした目的なり意味なりがなくちゃいけないのか?利益のないところには動機はないってわけか?なんか、そういうのって安易だし、貧しいかんがえかたな気がするんだよなー。わかんないけど。