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本、映画、音楽の感想/レビューなど。

本-文学-その他の外国文学

『ギルガメシュ叙事詩』

古代オリエント最大の神話文学にして、世界最古の叙事詩とも言われる「ギルガメシュ叙事詩」のアッシリア語原文ーー粘土書板に楔形文字で刻まれたーーからの日本語訳。 紀元前2500年頃に生み出された人類最古の物語が、生と死を扱った、極めて根源的な「行き…

『バーデンハイム1939』/アハロン・アッペルフェルド

本作には、いわゆるホロコーストものによくある、強制収容所での生活やガス室送りの恐怖などに関する描写は一行も含まれていない。わかりやすく感傷的なエピソードはほとんど発生せず、ひたすら淡々とした叙述が続いていくために、いくら読み進めていっても…

『ダブル/ダブル』/マイケル・リチャードソン編

決して明かされてはならない秘密である「分身」。その存在が明らかにされると消滅してしまうか、むしろ本体の方を抹殺してしまう「分身」。本体からの独立や分離を、あるいは入れ替わりを望む「分身」。本体の陽性/陰性のみを抽出したかのような「分身」。そ…

『蜘蛛女のキス』/マヌエル・プイグ

蜘蛛女のキス (集英社文庫)作者:マヌエル・プイグ集英社Amazon アルゼンチンの作家、マヌエル・プイグの有名作。ふたりの囚人がひとつ牢のなかに入れられている。ひとりは革命思想を抱いた政治犯の若者バレンティン、もうひとりは同性愛者の中年男、モリーナ…

『ラテンアメリカ十大小説』/木村榮一

スペイン語圏文学の翻訳と言えばまずこの人の名前がおもい浮かぶ、木村榮一によるラテンアメリカ文学の入門書。いわゆる「ラテンアメリカ文学ブーム」前後の作家たち10人とその代表作とを取り上げながら、各作品の内容からラテンアメリカ文学全体の傾向/特徴…

『愛その他の悪霊について』/ガブリエル・ガルシア=マルケス

愛その他の悪霊について作者: ガブリエルガルシア=マルケス,Gabriel Garc´ia M´arquez,旦敬介出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2007/08/01メディア: 単行本 クリック: 11回この商品を含むブログ (24件) を見る 混み入って重層的な物語構造が用いられることの…

『通話』/ロベルト・ボラーニョ

チリはサンティアゴ出身の作家/詩人であるロベルト・ボラーニョの短編集。ボラーニョの作品ははじめて読んだのだけど、描写らしい描写というのがほとんどなく、物語性もかなり希薄。背景もストーリーも輪郭がはっきりしていないのだ。その代わり、文章自体は…

『族長の秋』/ガブリエル・ガルシア=マルケス

ラテンアメリカの文学 族長の秋 (集英社文庫)作者: ガブリエルガルシア=マルケス,鼓直出版社/メーカー: 集英社発売日: 2011/04/20メディア: 文庫購入: 2人 クリック: 9回この商品を含むブログ (21件) を見る マルケスの代表作といえば、やはりノーベル文学賞…

『百年の孤独』/ガブリエル・ガルシア=マルケス

『百年の孤独』におけるガルシア=マルケスは、ものすごい美文家というわけではないし、信じられないほどの構成力を持った作家というわけでもなければ、誰も扱ったことのなかった新しいスタイルの使い手というわけでもない。ストーリーテリングの手法なんかは…

『楽園への道』/マリオ・バルガス=リョサ(その2)

『楽園への道』には、ゴーギャンが絵を描くシーンがいくつか出てくるんだけど、どれもすごくかっこいい。絵を見なくても文章だけで伝わってくるものはいろいろとあるし、というか文章だけでも十分たのしいんだけど、やっぱり絵を見ればいろいろと発見がある…

『楽園への道』/マリオ・バルガス=リョサ

もうもう、とにかく、すばらしい小説だった!!鮮やかなオレンジに惹かれて本屋で1ページ目を立ち読みした瞬間から、これは絶対いい!と確信していたのだけど、読んでいる間にその確信がぶれることはなかった。 描かれるのは、ペルー総督の血を引く女性文筆…

『ペネロピアド』/マーガレット・アトウッド

トロイア戦争を描いた『イリアス』の続編、『オデュッセイア』で語られるのは、オデュッセウスがトロイア戦争の後、故郷であるイタケーへ帰還する道々の話だ。この小説では、その間じつに20年、オデュッセウスを待ち続けた妻、ペネロペイアの物語が描かれて…

『アルケミスト』/パウロ・コエーリョ

パウロ・コエーリョ『アルケミスト』を読んだ。小説というより、ほとんど寓話かな。構築された物語というより、ただ、話がある、という感じだ。全体的に箴言みたいなのが多くて、ちょっと教条主義じみたところもあるけれど、読者の感情を支配したい、という…

『やし酒飲み』/エイモス・チュツオーラ

これすっげーおもしろい!!いままで俺が読んできたなかでは、最高の一冊に数えていい。なので、このおもしろさを全然ことばにできないのが歯痒いです。けどまあ、とりあえず書く。 エイモス・チュツオーラはナイジェリアの作家。そして、「やし酒飲み」は、…