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本、映画、音楽の感想/レビューなど。

2020-01-01から1年間の記事一覧

『若い人のための10冊の本』/小林康夫

本を読むことは、世界と出会うこと。小林康夫の語りと10冊のセレクトから、10代の頃の感覚――到底掘り尽くせないほど深いものが世のなかにはたくさんあるらしい、というわくわく感――を久々に思い出した

『零度のエクリチュール』/ロラン・バルト

作家の倫理が宿る「エクリチュール」の定義とは何か。カミュ『異邦人』にみる「白いエクリチュール」の可能性と、それが再び歴史に縛られていく文学の袋小路が書かれた一冊について、その構造を整理する

『月と六ペンス』/サマセット・モーム

ゴーギャンをモデルにした天才画家ストリックランドは、描くことだけに駆り立てられた男で、その無秩序なエナジーは周囲を破滅させずにはいられない。絵画という芸術に魅入られた男の、底の知れなさを描き出す物語

『オリバー・ツイスト』/チャールズ・ディケンズ

少年の成長物語というより、貴種流離譚のフォーマットを用いて社会の低層を描いた作品として読んだ。ディケンズ流の執拗な書き込みで生命力が与えられた、悪役たちの姿こそが魅力的な長編

『シーモアさんと、大人のための人生入門』

コンサート引退後、80歳を超えてなおピアノ教師を続けるシーモア・バーンスタインの姿を追ったドキュメンタリー。一音の妥協も許さぬ厳格さと、柔らかな語り口。音楽と人生を深いところで一体化させた一人の老ピアニストの姿に、シンプルな人生の幸福を見る

『ブリージング・レッスン』/アン・タイラー

アン・タイラーは、とにかくふつうの市井の人々の描写というやつがむちゃくちゃに上手い。というか、そもそも彼女の小説はすべて、そういった人々を描いたものだと言ってもいい。ひとくせもふたくせもあることは間違いないけれど、でも本当に平凡な人々、に…

『ローマ人の物語 (3)・(4)・(5) ハンニバル戦記』/塩野七生

カルタゴの天才軍事家ハンニバルとローマとの16年間に渡る第2次ポエニ戦役を中心に描く。ハンニバルが自国を最終的な勝利に導けなかったのはなぜか。強敵との総力戦が、ローマを地中海の覇者へと鍛え上げていく

『ローマ人の物語 (1)・(2) ローマは一日にして成らず』/塩野七生

ローマ建国から500年の歴史を辿りながら、古代ギリシアの3人の著者の視点を通して、ローマ興隆の要因を探っていく。宗教的寛容、平民にまで開かれた独自の政治システム、他民族を同化していく開放性。それこそが彼らの真の遺産だった

『ホーキング、未来を語る』/スティーヴン・ホーキング

前作よりも「より分かりやすく」書いたという本書も、難解な議論が続く。本文を読み解く土台となる科学哲学「実証主義」とは何か、なぜホーキングが「真実」や「時間」の本質を問題としないのかを整理する

『博士と彼女のセオリー』

スティーヴン・ホーキングの元妻ジェーンによる半生記。余命宣告された夫を支え、介護、出産、育児をこなした彼女の決意と苦悩が描かれる。別離を経ても、二人の信頼が作り上げた独自の「セオリー」はなお残り、その美しさは観客にもはっきりと感じられる

『それでも、日本人は「戦争」を選んだ』/加藤陽子

東大の歴史学教授である加藤が、栄光学園の中高生たちに行った5日間の講義をベースに書かれた一冊。日清戦争から太平洋戦争まで、近代日本の戦争の歴史がテーマになっている。 講義は、加藤が生徒たちに史料(報告書、書簡、日記、地図など)や歴史家の意見…

『闇の中の男』/ポール・オースター

オースターの2008年作。2000年代にオースターが書いていた「部屋にこもった老人の話」の第5作目ということで、本作も、ひとりの老人が自室の暗闇のなかで眠りにつくことができず、頭のなかで物語をあれやこれやとこねくり回している場面から始まっている。 …

『マチネの終わりに』/平野啓一郎

ネットでレビューや感想を見ていると、本作への批判は、主に物語中盤で引き起こされる「すれ違い」があまりにもご都合主義的で、作りもの感満載である、という点に対するものが多いようだ。たしかに、俺自身、この小説を読みながら、うわ、この展開、まじか…

『ひと月百冊読み、三百枚書く私の方法』/福田和也

「情報」は受け取るだけでは意味をなさず、能動的に料理し、アウトプットしてはじめて血肉になる、という福田の読書と執筆の姿勢について整理する

『本はどう読むか』/清水幾太郎

本を「読んだだけ」では浅い理解にとどまる。読書で得た観念は、それを表現する「精神的緊張」を伴う「本気の努力」を通して、はじめて深く理解できるのだ。引用をもとに、清水の読書論の核心を整理する

『あなたを天才にするスマートノート』/岡田斗司夫

人間は普段「感じている」だけで「考えて」はいない。当たり前のことを言語化し、ムダになる前提で何度も書き出すことで、はじめて自分なりに考え、世界に意味付けできるようになる

『はだしのゲン 私の遺書』/中沢啓治

2012年に73歳で他界した、『はだしのゲン』の著者、中沢啓治が自身の半生を振り返ったエッセイ。6歳で被爆を経験した際の生々しい体験から、戦後の広島で必死で生き延び、怒りに燃えて原爆漫画を描くようになり、やがて世間にそれが受け入れられていくまでが…

『孤島』/ジャン・グルニエ

アルベール・カミュの才能を発掘した人物として知られる、ジャン・グルニエによる哲学的エッセイ。哲学的、とは言っても、空白や、一匹の猫の死、ある肉屋の病気、旅、花の香り、地中海の島々、すぎ去る時について、思索的で淡々とした散文がまとめられたも…

『サードドア 精神的資産のふやし方』/アレックス・バナヤン

勉強に嫌気がさしてしまった医学生のバナヤンは、現代の「成功者」たち――ビル・ゲイツ、スティーブン・スピルバーグ、レディー・ガガ――の伝記や評伝を読みあさる。そうして、彼らが自分と同じくらい若いころに、どんな風に成功の第一歩を踏み出し、これだと…

『消え失せた密画』/エーリヒ・ケストナー

児童文学の巨匠というイメージのケストナーだけれど、大人向けの作品もいくつか書いている。『消え失せた密画』はそのうちのひとつで、ユーモア溢れる犯罪小説…といっても、残酷なところや邪悪なところが1ミリもない、ほっこりキュートな物語である。 物語の…

『飛ぶ教室』/エーリヒ・ケストナー

無垢な少年たちの傷つきやすさが扱われた物語。弱さや臆病さを抱えつつ、しかしそれでも前に進んでいこうとする姿には胸を打たれる。1933年という時代背景を踏まえて、その「まっとうさ」を考える

『若きウェルテルの悩み』/ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ

「日も月も星も依然としてその運行をつづけながら、私にとっては昼もなく夜もなくなり、全世界は身のまわりから姿を没した」というほど、ひとりの美しい少女に夢中になってしまった青年、ウェルテルの「悩み」を描いた物語。少女の名前はロッテ。ふたりは出…

『リバタリアニズム アメリカを揺るがす自由至上主義』/渡辺靖

リバタリアニズムについて全面的に同調できるかどうかはともかく、政治的・社会的課題は「お上がなんとかするもの」だとかんがえている日本人からは到底生まれそうにない思想だな、と感じさせられた一冊だった。個人の自由とは、自らの手で守り、勝ち取って…

『世界の涯ての鼓動』

去年、TOHOシネマズシャンテにて。生物数学者の女(アリシア・ヴィキャンデル)とMI-6の諜報員の男(ジェームズ・マカヴォイ)が、ノルマンディーの海辺にある小さなリゾートホテルで出会う。ふたりはそれぞれ、自らの信念を賭けた大きなミッションを数日後…

『リンドグレーン』

『長くつ下のピッピ』等で知られる児童文学作家が、作家になる以前を描いた物語。信仰や規範、過酷な現実と向き合いながら自分の人生を引き受けていく姿は、ピッピのような力強さを感じさせるものだ

『勝ち続ける意志力 世界一プロ・ゲーマーの「仕事術」』/梅原大吾

格ゲーの世界チャンピオンであり、日本初のプロゲーマーでもある梅原大吾の自伝的エッセイ。ウメハラにとってゲームとは何か、そこで勝ち続けるためのかんがえ方、生き方とはいったいどんなものであるか、が書かれている。 ウメハラの思考法は、ゲーマーなら…