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本、映画、音楽の感想/レビューなど。

2022-01-01から1年間の記事一覧

『誰が音楽をタダにした? 巨大産業をぶっ潰した男たち』/スティーヴン・ウィット

従来の音楽ビジネスが崩壊していく季節の様子を、①mp3の産みの親であるドイツ人技術者、②音楽業界のトップエグゼクティブ、③ユニバーサル・ミュージックのプレス工場からCDを盗み出しては違法海賊サイトに音源をアップしまくった若者、という三者の物語を通…

『蝿の王』/ウィリアム・ゴールディング

無人島に取り残された少年たちが野蛮化していく姿を通して、人間の本性を描いた一作。象徴に満ちた寓話的な物語が、人間の邪悪さや暴力性を浮き彫りにし、独自のリアリティを生み出していく

『ないもの、あります』/クラフト・エヴィング商會

「よく耳にするけれど、一度としてその現物を見たことがない」ものたちをクラフト・エヴィング商會の「商品目録」という形で紹介していく一冊。「堪忍袋の緒」や「口車」、「左うちわ」、「無鉄砲」、「おかんむり」などなど、日本語のことわざや慣用表現の…

『僕の名はアラム』/ウィリアム・サローヤン

サローヤンによる短編集。古き良き、と言っていいような、20世紀初頭、アメリカはカリフォルニアの田舎町での、「僕」と周囲のアルメニア人移民の家族や村の人々との生活を描いている。 物語世界に悪人は登場せず、登場人物たちは、みな大らかで明るく、基本…

『雨はコーラがのめない』/江國香織

江國香織が愛犬「雨」との日常を綴ったエッセイ集。人間と犬、別々の世界を生きながらも、同じ音楽が流れている――そんな距離感の心地よさが印象に残る

『読む・打つ・書く 読書・書評・執筆をめぐる理系研究者の日々』/三中信宏

進化生物学研究者の三中が、極私的かつ偏向した読書・執筆メソッドを語る一冊。世間に蔓延る「読者ファースト」を排し、「自分ファースト」を貫く書評の哲学と、その実践方法について

『かわいい夫』/山崎ナオコーラ

タイトルの通り、山崎ナオコーラが自身の「かわいい夫」について書いたエッセイ。元が新聞の連載だったということで、ほとんどが2、3ページに収まり、強烈に感情を揺さぶることのないような、ほんとうにちょっとした話、になっている。そのあたり、なかなか…

『ワインズバーグ、オハイオ』/シャーウッド・アンダーソン

閉塞した中西部の田舎町に暮らす「いびつな者たち」の小さな物語を集めた短編集。不安や生きづらさを感じながら生きる彼らに不意に訪れる、抗い難いほどに強烈な衝動と、その瞬間的な輝き、そしてその悲劇的な結末について

『スタイルズ荘の怪事件』/アガサ・クリスティ

アガサ・クリスティの長編第1作。戦傷を負って帰国したヘイスティングズは、友人の暮らすエセックス州の田舎屋敷、スタイルズ荘に滞在することになったが、到着して早々、事件に巻き込まれてしまう。屋敷の女主人、エミリー・イングルソープが毒殺されたのだ…

『わたしだけのおいしいカレーを作るために』/水野仁輔

カレー研究家の著者による、「わたしだけのおいしいカレー」を作るための一冊。カレー調理における注意点やコツ、スパイスの選び方、そもそもカレーのおいしさとは何か、そして自分でカレーを作る際、どんなカレーを目指すべきなのか、などなどについて書か…

『ちぐはぐな身体 ファッションって何?』/鷲田清一

自分の身体は常に不確かな<像(イメージ)>でしかなく、衣服は秩序の無根拠性を隠蔽する装置だ、という鷲田の指摘を手がかりに、装うことについて考えてみる

『次の東京オリンピックが来てしまう前に』/菊地成孔

菊地成孔が2017年から2020年までWebマガジンに連載していた記事に加筆修正し、一冊にまとめたもの。東京オリンピックを始めとする時事ネタはもちろん、音楽、映画、鰻、タクシー、ファミレス、メルカリ、人間ドック、読売新聞、ドナルド・トランプ、ざわちん…

『ミルクマン』/アンナ・バーンズ

独特な文体が魅力的な、アンナ・バーンズのブッカー賞受賞作。北アイルランドとおぼしき名前のない町を舞台に、主人公である18歳の「私」(趣味は歩きながら19世紀の小説を読むこと)が反体制派の有力者たる「ミルクマン」なる男にストーカーされたり、「メ…

『職業としての政治』/マックス・ヴェーバー

第一次世界大戦後の1919年、ヴェーバーがミュンヘンの学生団体向けに行った講演をまとめたもの。まずヴェーバーは、トロツキーの言葉を引いて、「すべての国家は暴力の上に基礎づけられている」と言う。 近代国家は、この暴力行使の権力を独占するべく、その…

『あるノルウェーの大工の日記』/オーレ・トシュテンセン

現役の大工による、業務日誌のような淡々とした日記本。現実に根ざした仕事観からは職人としての矜持が感じられ、その朴訥で誠実な姿勢が胸を打つ

『わたくし率 イン 歯ー、または世界』/川上未映子

ひたすら饒舌というか自意識をそのまま垂れ流しにしたような、大阪弁と丁寧語が混じった、どろっとした文体が特徴的な中編だ。語り手の「わたし」は、人の思考は脳ではなく奥歯でなされているとかんがえている不思議ちゃんで、生まれる予定のない自らの子供…

『ミッテランの帽子』/アントワーヌ・ローラン

不思議な帽子をめぐる連作短編を通して、80年代パリの空気と、軽やかに人生の美しさを味わう感覚が描かれる。小粋で洒落た読後感が心地よい一冊

『チャリング・クロス街84番地 書物を愛する人のための本』/へレーン・ハンフ

1949年、ニューヨークに暮らす脚本家のハンフは、ロンドンはチャリング・クロス街84番地の絶版本専門の古書店、マークス社に宛て、ほしい書籍のリストーー地元では手に入れにくい英文学の本たちのリストーーを手紙で送る。マークス社の店員ドエルは入手した…