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本、映画、音楽の感想/レビューなど。

『ミケル・アルテタ アーセナルの革新と挑戦』/チャールズ・ワッツ

ミケル・アルテタがアーセナルの監督に就任してから22-23シーズンの終わりまでの歩みと、その背景について描いた一冊。ヴェンゲル→エメリ→アルテタという監督の変遷のなかで発生していた組織内部の混乱、パンデミック対応、エジル問題,オーバメヤン問題を経…

ウィーン少年合唱団@東京オペラシティコンサートホール(その2)

今回は、ウィーン少年合唱団と巡る四季、的なコンセプトということで、各季節をモチーフにした曲たちを取り揃え、秋冬春夏と順に進んでいく構成になっていた。正直言ってよく知らない曲もまあまああったものの、どんな曲であっても天使の歌声のクオリティが…

Hilary Hahn / Andreas Haefliger@神田POLARISミューザ川崎シンフォニーホール

久しぶりにヒラリー・ハーンのバイオリンを聴きにいったところ(このブログの過去記事によると、11年振りになるらしい…)、やっぱりとても良かったので感想を残しておく。今回は、アンドレアス・ヘフリガーというピアニストとのデュオによる、ブラームスのソ…

菊地成孔とペペ・トルメント・アスカラール結成20周年記念巡回公演「香水」@東京芸術劇場プレイハウス

ぺぺ・トルメント・アスカラールのライブ。全編とおして大変素晴らしく、うっとりしてしまうクオリティの演奏だった。いや、正直に言うと、最初の3曲くらいまでは音量のバランスがいまいちかな、などと細かいことをいろいろ考えていた気がするのだけれど、気…

豊田道倫@神田POLARIS

久々に年末の豊田道倫ソロライブを見る。たぶん2年ぶりくらいだろうか。やはり年の終わりにはこれがないとね、と豊田の年末ライブに行くたびにおもうのだけれど、そのわりにこのブログに感想を書いたのは2011年が最後だった。毎年行っているわけではないとは…

『ポトフ 美食家と料理人』

料理を題材にした映画というのは多々あるけれど、本作で扱われているのは、美食、ガストロミーというかなり芸術寄りの内容である。そのため、料理対決とか料理修行とか料理を通じた登場人物の成長といったものが描かれることはない。あくまでも、美食の探求…

『フライデー・ブラック』/ナナ・クワメ・アジェイ=ブレニヤー

1991年生まれ、ガーナ出身の両親を持つ、アフリカ系アメリカ人作家のデビュー短編集。各作品に通底しているのは、黒人差別や人間の醜さに対する怒りと、ブラックユーモア、暴力性、シュールさ、デフォルメ感といったもので、そういった各要素に真新しさがあ…

『シンプルな情熱』/アニー・エルノー

アニー・エルノーの自伝的な作品。若くして離婚し、パリでひとり暮らす「私」は、かつて東欧の若い外交官A(妻子持ち)と不倫の関係にあった。その当時に感じていた情熱(パッション)について振り返る、という物語。 自身の不倫が題材ではあるけれど、それ…

『実演!バグ/ダイナソーJR』

ダイナソーJr.がオリジナルメンバー3人で復活した後、2011年6月にワシントンDCで行われた、3rdアルバム『BUG』全曲再現ライブの映像。抽選で選ばれたファンたちの手によって撮影された素材が用いられている。だから映像自体はだいぶ粗いのだけれど、それだけ…

『ダイナソーJr./フリークシーン』

ダイナソーJr.のドキュメンタリー映画。バンドにがっつりと密着して作成したというよりは、軽く関係者にインタビューしながらいままでの流れを追ってみた、というような作りになっており、とにかく全体的に淡々とした作りになっている。好意的な見方をすれば…

『女神の見えざる手』

ロビイストの主人公(ジェシカ・チャステイン)の姿がとにかくやたらと格好いい、社会派サスペンス。大手ロビー会社で、目的のためなら手段を選ばない敏腕として知られていたエリザベス・スローンは、ある日、新たな銃規制法案を廃案にするよう依頼される。…

『遅読のすすめ』/山村修

立花隆や福田和也が提唱する、速読・多読といったものに対して、ほとんどの人は(彼らのような職業上の必要性に駆られているのではないのだから)そういった読書法は必要ではないだろう、と主張する一冊。 たとえば立花の言う、「本を沢山読むために何より大…

『皆のあらばしり』/乗代雄介

歴史研究部に所属する高校2年生の「ぼく」は、部活の研究で皆川城址を訪れた際、怪しげな中年の男に出会う。こてこての大阪弁がいかにも胡散臭い男だったが、その異様な博識は「ぼく」を否応なしに惹きつけていくのだった。男は、「ぼく」が入手した旧家の蔵…

『1000冊読む!読書術』/轡田隆史

読書はいいですよ、たくさん本を読むことはあなたの人生に絶対に有益ですよ、というシンプルな主張のもと、いろいろなエピソードを語っている一冊。まあよくあるタイプの本で、取り立てて斬新なところはないのだけれど、新聞の論説委員だった轡田の文章は軽…

『マルクス・ガブリエル 欲望の時代を哲学する』/丸山俊一+NHK「欲望の時代哲学」制作班

NHKの番組の内容を新書化した一冊。1,2章には、マルクス・ガブリエル訪日時の発言や講義(哲学史の概説と、その流れのなかに位置づけられる新実在論の解説)を文字起こししたものが、3章には、ロボット工学科学者の石黒浩との対談が収められている。元がテレ…

『若き商人への手紙』/ベンジャミン・フランクリン

資本主義が生の全体を覆い尽くしているこの世界、金こそが人の生きる尺度であり、商品価値によって人が選別されるこの世界で賢く生き、成功するための知恵や行動規範について書かれた一冊。世に数多存在する大富豪本や人生の成功法則本、ビジネス書の原型と…

『パリのすてきなおじさん』/金井真紀、広岡裕児

作家/イラストレーターの著者が、パリの道ばたで出会ったすてきなおじさんを集めた一冊。おじさんのキュートなイラストと、おじさん自身の語りを中心とした軽めのエッセイが掲載されている。おしゃれなおじさん、アートなおじさん、おいしいおじさん、移民…

『Mトレイン』/パティ・スミス

パティ・スミスによる回顧録的なエッセイ。自身の内面深くに潜り込んでいくような文体で、自由連想的な文章が紡がれている。彼女自身の年齢もあってか、全体のムードは静謐、瞑想的で、粒子の粗いモノクロームのような美しさを感じさせる一冊になっている。 …

『親の家を片づけながら』/リディア・フレム

精神分析学者の著者による一冊。 親の死後、子が親に対して抱く感情というのはなかなか複雑なものだ。自分を愛してくれる人を失ったことの悲しみや、こんなことあり得ないという非現実感があるのはもちろんだろうけれど、決してそれだけに留まるものではない…

『猫を棄てる 父親について語るとき』/村上春樹

村上春樹がはじめて自身の父親について率直に書いたというエッセイ。全編通して、村上の小説や普段のエッセイの文体とはまた異なる、ごく淡々とした文章が連ねられているところが特徴的で、彼の文章からいつも感じられる、過剰なくらいの読者へのサービス感…

『恋する惑星』

高校生の頃にミニシアター系の映画を見始めたころから、そのうち見ようーとおもっているうちに気がつけば20年あまり経ってしまっていたのだが(そういうことって、結構ありますよね?)、ようやく見れた。ウォン・カーウァイというと、個人的に『花様年華』…

『誰も知らない』

事件のニュースや物語の筋書きだけでは、これは単にものすごくやるせない酷い話、未来の見通しのまるでない辛い話でしかない。けれど、彼らのじっさいの生活のなかには、そういう括り方では捉えきれないようなたくさんの豊かさがあったはずで、そのなかには…

『ある一生』/ローベルト・ゼーターラー

しんと静かな、あるひとりの男の人生の物語。文体も内容に見合った朴訥としてシンプルなもので、派手さはまったくないが、深く沁みいるようなところがある作品だった。 あっと驚くような展開や胸がすく逆転劇といったものもない。ただ、さまざまな形で訪れる…

『サマーフィーリング』

ある夏の日、ベルリンに暮らす30歳のサシャは突然倒れ、そのままこの世を去ってしまう。あまりにも唐突な彼女の死は、恋人のローレンスにとっても、サシャの妹ゾエをはじめとする家族にとっても、そう簡単に受け止められるものではない。傷を抱えたもの同士…

『面白いとは何か? 面白く生きるには?』/森博嗣

本書で扱われているのは、自分なりの面白さとはどんなものであるのか、それを見つけて面白く生きていくにはどうしたらいいのか、といったテーマだ。そしてその結論はというと、アウトプットする面白さこそが本物だ、ということに尽きる。

ウィーン少年合唱団@東京オペラシティコンサートホール

東京オペラシティにて。「天使の歌声」でおなじみウィーン少年合唱団の、超絶ハイクオリティな歌声を堪能させてもらった。 今回来日していたのはハイドン組((ウィーン少年合唱団には、全体で100名ほどのメンバーがいるが、シューベルト、ハイドン、モーツァ…

『批評の教室 チョウのように読み、ハチのように書く」/北村紗衣

イギリス文学者、批評家の北村による、批評の入門書。楽しむための方法としての批評、に焦点を当てて、その方法や理論について、具体的に例を挙げながら語っている。精読→分析→アウトプット、の順で実際に批評を行うにあたってのヒントが書かれているわけだ…

『AI分析でわかった トップ5%の社員の習慣』/越川慎司

著者のクライアント企業25社の協力を得て、人事評価でトップ5%に該当する社員の行動を記録、AIと専門家にて分析を行い、トップ5%の社員の共通点や、彼らと95%の一般社員とで、どんな違いがあるのか、を抽出した、という一冊。 AIで優秀な社員の習慣を分析…

『インヴィジブル』/ポール・オースター

オースターの2009年作。前の数作と同様に、死を前にした老年の男が主人公の物語ではあるものの、多くのページはその男による若き日の回想録が占めているため、『写字室の旅』や『闇の中の男』のような陰鬱でどんよりした感じはさほど強くはない。その代わり…

"Steal Like an Artist: 10 Things Nobody Told You About Being Creative"/Austin Kleon

吉本隆明が、「手で考える」、「手を動かさなければ何もはじまらない」、「同じ事を言うためにだって違う表現は無限にある」などと語っていたのを読んで、随分以前に読んだ本書のことをおもい出した。本書も、とにかく手を動かすことの大切さが繰り返し語ら…