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本、映画、音楽の感想/レビューなど。

本-文学-ロシア文学

『チェーホフの生涯』/イレーヌ・ネミロフスキー

死を予感する作家が戦時下に辿り直したのは、ロシアの文豪の人生の軌跡だった。「人生に意味は見出せずとも、魂を練り直すことはできる。」絶望の淵で綴られた言葉から、生きるための諦念を読む

「狂人日記」/ニコライ・ワシーリエヴィチ・ゴーゴリ

「狂人日記」は、九等官の中年男、ポプリーシチンという人物の日記という体裁をとっている。一人称の語りのみで、全編が構成されているのだ。ポプリーシチンは、ゴーゴリ作品の主人公らしく、自分(の社会的地位)に自信がないために、卑屈な態度と尊大な態…

『かもめ』/アントン・パーヴロヴィチ・チェーホフ

ニーナとトレープレフの立場というのは、物語の開始時点ではほぼ同等のものだと言っていいだろう。彼らはふたりとも、何も持っておらず、ただ淡い希望だけを胸に、あいまいな夢を見ている若者にしか過ぎない。そんなところに、トレープレフにとっての乗り越…

『三人姉妹』/アントン・パーヴロヴィチ・チェーホフ

夢も希望も失われていくのに、人はなぜ生き続けるのか。舞台の外で起こる事件になす術を持たず、ただ時間に押し流されるばかりの姉妹たちの姿から、事後的にしか意味を知りえない人生の感触を読む

『桜の園』/アントン・パーヴロヴィチ・チェーホフ

没落貴族たちの無為なおしゃべりと、空回りし続ける「真実」の言葉。時代の終焉を悲喜劇として描くチェーホフの醒めたまなざしを分析しつつ、その「乾いた結論」に対して抱く拭いきれない居心地の悪さを自問する

『オネーギン』/アレクサンドル・セルゲーヴィチ・プーシキン

本作の主人公、エヴゲーニイ・オネーギンは、19世紀ロシア文学によく登場する「余計者」の原型、と言われているけれど、その造形はいまでもじゅうぶんに興味深いものだ。知識だけはあるが、それを生かすための興味や活力、指針といったものを持っていないが…

「クロイツェル・ソナタ」/レフ・ニコラエヴィチ・トルストイ

イワン・イリイチの死/クロイツェル・ソナタ (光文社古典新訳文庫)作者: トルストイ,望月哲男出版社/メーカー: 光文社発売日: 2006/10/12メディア: 文庫購入: 7人 クリック: 44回この商品を含むブログ (35件) を見る 嫉妬がもとで妻を刺し殺すに至った、ある…

「イワン・イリイチの死」/レフ・ニコラエヴィチ・トルストイ

世俗的な成功者だった男が、死を前にして人生のすべてが無意味だったと悟る。本当の幸福とはいったい何か?自分の死だけが本当の幸福を照らし出す、のだろうか?

「ネフスキイ大通り」/ニコライ・ワシーリエヴィチ・ゴーゴリ

狂人日記 他二篇 (岩波文庫 赤 605-1)作者: N.ゴーゴリ,横田瑞穂出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 1983/01/17メディア: 文庫購入: 1人 クリック: 22回この商品を含むブログ (35件) を見る 画家のピスカリョーフと中尉のピロゴーフが連れ立ってネフスキイ大…

「九通の手紙からなる小説」/フョードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー

すれ違うふたりの男の長広舌が、往復書簡形式で描かれる。その熱量はさすがドストエフスキーという感じで笑いを誘うものだが、短編のクオリティとしてはいまひとつ物足りなさも感じる

『査察官』/ニコライ・ワシーリエヴィチ・ゴーゴリ

『査察官』はゴーゴリの戯曲だ。今作も、この本に納められている他の2編と同様、落語調で訳されている。 舞台はロシアのとある田舎町。市長をはじめとする町の有力者たちは、ペテルブルクから査察官がお忍びでやって来るらしいとの情報を得て、ぴりぴりと過…

「鼻」/ニコライ・ワシーリエヴィチ・ゴーゴリ

鼻/外套/査察官 (光文社古典新訳文庫)作者: ゴーゴリ,浦雅春出版社/メーカー: 光文社発売日: 2006/11/09メディア: 文庫購入: 1人 クリック: 24回この商品を含むブログ (59件) を見る ある朝、床屋のイワン・ヤーコヴレヴィチがパンをナイフで切り分けていた…

「プロハルチン氏」/フョードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー

節約に異様な執念を燃やす下級官吏が、役所廃止のデマに怯え正気を失う。「誰にだってこの世はつらいものだということを、この男は考えてもみなかったのだ!」使うあてもなく金を貯めこむ、病的な男を描いた短編

『二重人格』/フョードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー

強烈な劣等感と承認欲求を抱える九等官ゴリャートキン氏が、自らの理想像を投影した“分身”に追い詰められていく長編。分身という設定を手がかりに、笑うに笑えない自意識の暴走を読む

「駅長」/アレクサンドル・セルゲーヴィチ・プーシキン

(037)駅 (百年文庫)作者: ヨーゼフ・ロート,戸板康二,プーシキン出版社/メーカー: ポプラ社発売日: 2010/10/12メディア: 文庫 クリック: 1回この商品を含むブログを見る またまた『貧しき人びと』関連のエントリになるけど、こちらは、「外套」とは違って、…

「外套」/ニコライ・ワシーリエヴィチ・ゴーゴリ

鼻/外套/査察官 (光文社古典新訳文庫)作者: ゴーゴリ,浦雅春出版社/メーカー: 光文社発売日: 2006/11/09メディア: 文庫購入: 1人 クリック: 24回この商品を含むブログ (59件) を見る 先日エントリを書いた『貧しき人びと』のパロディ元である、ゴーゴリの「…

『貧しき人びと』/フョードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー(その2)

マカールの発話のスタイル――他者の視線を内面化し、先取りした他者の言葉に絶えず反発しながら自分語りをする――や、その病的なまでの熱烈さというやつは、まさしくドストエフスキー独特のものだけれど、マカールというキャラクターの設定自体は、ゴーゴリ「…

『貧しき人びと』/フョードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー(その1)

貧しき人びと (新潮文庫)作者: ドストエフスキー,木村浩出版社/メーカー: 新潮社発売日: 1969/06/24メディア: 文庫 クリック: 3回この商品を含むブログ (34件) を見る ドストエフスキー、24歳のときのデビュー作。作品のボリューム的には、まあ中編といった…

「キリストのヨルカに召された少年」/フョードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー

12月になってからというもの、仕事がすっかりスーパーハードモードに入ってしまい、土日も含めてまじでほとんど仕事しかしていない生活である。まったく、なんかたのしいこととかないのかねー!とかおもいつつ、たまの気晴らしに電車のなかで青空文庫の短編…

「ねむい」/アントン・パーヴロヴィチ・チェーホフ

過酷な奉公生活に追い詰められた少女が迎える、あまりに残酷な結末。簡潔な描写に凝縮された冷酷さと、その先にかすかに残る「別の読みの可能性」について考える

「富籤」/アントン・パーヴロヴィチ・チェーホフ

チェーホフ「富籤」読後メモ。宝くじを前にした夫婦の何でもない妄想が、読み進めるほどにじわじわ可笑しくなっていく。特別な出来事もないのに、いつのまにかにやにやしてしまう短編

「ワーニカ」/アントン・パーヴロヴィチ・チェーホフ

奉公先の辛さに耐えかねた少年は、おじいちゃんに宛てて手紙を書くが、それが届くことは決してない…。悲しさと滑稽さが互いを高め合う、さすがはチェーホフという感じの短編

「小波瀾」/アントン・パーヴロヴィチ・チェーホフ

チェーホフ「小波瀾」読後メモ。母の恋人に秘密を打ち明けてしまう少年アリョーシャ。子供の感じをいちいち正確にとらえる描写と、思わず笑ってしまう会話のリアリティが楽しい短編を読む

「かき」/アントン・パーヴロヴィチ・チェーホフ

極限の空腹が生んだ、見たこともない「かき」への想像力が楽しすぎる短編。美味しそうな妄想から一転、「おお、いやだ!」と悶絶に至る文章のグルーヴ感が素晴らしい。9ページに凝縮されたチェーホフ流ユーモアの快作

「嫁入り支度」/アントン・パーヴロヴィチ・チェーホフ

没落貴族の母娘が、訪れるはずのない未来のためにドレスを縫い続ける。嫁入り支度に積み上がったトランクたちは、ユーモアの中にもどこかホラー的なムードを感じさせる

『地下室の手記』/フョードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー

下級官吏である主人公は、長年勤めた役所を辞め、“地下室”と呼ぶアパートの一室に閉じこもっている。彼は外界との関わりを断って、ひたすら自身の内面を手記として書きつけていっているのだ。その思考は、自身の内面をぐるぐると回り、疑い、傷つけながら、…

『『カラマーゾフの兄弟』続編を空想する』/亀山郁夫

学長選挙には当選、『カラマーゾフの兄弟』の新訳はバカ売れと、昨年はノリにノっていた(とおもう)、われらが亀山ガクチョーの新書。タイトルがいいね。「研究」とかじゃなく、「続編を空想する」って、カラマーゾフを読んだ人ならきっと誰もがしてきたで…