Show Your Hand!!

本、映画、音楽の感想/レビューなど。

『Between Maple and Chestnut』/Terri Weifenbach

アメリカの写真家、テリ・ワイフェンバックの写真集。 画面のごく一部だけにフォーカスして背景ボケを思い切り広く取り込んだ光豊かな写真たちは、取り立てて特殊な被写体でなくても、いかようにでも美しく見ることはできるのだ、ということを主張しているよ…

『秘密機関』/アガサ・クリスティ

アガサ・クリスティの長編第2作。おっさんふたりによる謎解きミステリだった前作とは異なり、トミー&タペンスという若いカップルを主人公にした、スリラーというか冒険小説という感じの一冊だ。とくにクオリティの高い作品ではないとはおもうけれど、バンド…

『ひとはなぜ戦争をするのか』/アルバート・アインシュタイン、ジグムント・フロイト

タイトルのテーマについて、1932年にアインシュタインとフロイトとのあいだで交わされた往復書簡。 人間は、根源的に暴力的な傾向や攻撃性を持っているので、それらを取り除くことは難しい、とフロイトは言う。できるとしたら、エロス(愛や絆)に訴えかける…

『都市とモードのビデオノート』

80年代後半、ポンピドゥー・センターからの依頼を受けたヴェンダースが、山本耀司のパリコレに向けた準備の様子を追ったドキュメンタリー映画。フィルムカメラとビデオカメラ、パリと東京、アイディンティティとイメージ、永遠のクラシックと刹那的なモード…

『ミケル・アルテタ アーセナルの革新と挑戦』/チャールズ・ワッツ

ミケル・アルテタがアーセナルの監督に就任してから22-23シーズンの終わりまでの歩みと、その背景について描いた一冊。ヴェンゲル→エメリ→アルテタという監督の変遷のなかで発生していた組織内部の混乱、パンデミック対応、エジル問題,オーバメヤン問題を経…

ウィーン少年合唱団@東京オペラシティコンサートホール(その2)

今回は、ウィーン少年合唱団と巡る四季、的なコンセプトということで、各季節をモチーフにした曲たちを取り揃え、秋冬春夏と順に進んでいく構成になっていた。正直言ってよく知らない曲もまあまああったものの、どんな曲であっても天使の歌声のクオリティが…

Hilary Hahn / Andreas Haefliger@神田POLARISミューザ川崎シンフォニーホール

久しぶりにヒラリー・ハーンのバイオリンを聴きにいったところ(このブログの過去記事によると、11年振りになるらしい…)、やっぱりとても良かったので感想を残しておく。今回は、アンドレアス・ヘフリガーというピアニストとのデュオによる、ブラームスのソ…

菊地成孔とペペ・トルメント・アスカラール結成20周年記念巡回公演「香水」@東京芸術劇場プレイハウス

ぺぺ・トルメント・アスカラールのライブ。全編とおして大変素晴らしく、うっとりしてしまうクオリティの演奏だった。いや、正直に言うと、最初の3曲くらいまでは音量のバランスがいまいちかな、などと細かいことをいろいろ考えていた気がするのだけれど、気…

豊田道倫@神田POLARIS

久々に年末の豊田道倫ソロライブを見る。たぶん2年ぶりくらいだろうか。やはり年の終わりにはこれがないとね、と豊田の年末ライブに行くたびにおもうのだけれど、そのわりにこのブログに感想を書いたのは2011年が最後だった。毎年行っているわけではないとは…

『ポトフ 美食家と料理人』

料理を題材にした映画というのは多々あるけれど、本作で扱われているのは、美食、ガストロミーというかなり芸術寄りの内容である。そのため、料理対決とか料理修行とか料理を通じた登場人物の成長といったものが描かれることはない。あくまでも、美食の探求…

『フライデー・ブラック』/ナナ・クワメ・アジェイ=ブレニヤー

1991年生まれ、ガーナ出身の両親を持つ、アフリカ系アメリカ人作家のデビュー短編集。各作品に通底しているのは、黒人差別や人間の醜さに対する怒りと、ブラックユーモア、暴力性、シュールさ、デフォルメ感といったもので、そういった各要素に真新しさがあ…

『シンプルな情熱』/アニー・エルノー

アニー・エルノーの自伝的な作品。若くして離婚し、パリでひとり暮らす「私」は、かつて東欧の若い外交官A(妻子持ち)と不倫の関係にあった。その当時に感じていた情熱(パッション)について振り返る、という物語。 自身の不倫が題材ではあるけれど、それ…

『実演!バグ/ダイナソーJR』

ダイナソーJr.がオリジナルメンバー3人で復活した後、2011年6月にワシントンDCで行われた、3rdアルバム『BUG』全曲再現ライブの映像。抽選で選ばれたファンたちの手によって撮影された素材が用いられている。だから映像自体はだいぶ粗いのだけれど、それだけ…

『ダイナソーJr./フリークシーン』

ダイナソーJr.のドキュメンタリー映画。バンドにがっつりと密着して作成したというよりは、軽く関係者にインタビューしながらいままでの流れを追ってみた、というような作りになっており、とにかく全体的に淡々とした作りになっている。好意的な見方をすれば…

『女神の見えざる手』

ロビイストの主人公(ジェシカ・チャステイン)の姿がとにかくやたらと格好いい、社会派サスペンス。大手ロビー会社で、目的のためなら手段を選ばない敏腕として知られていたエリザベス・スローンは、ある日、新たな銃規制法案を廃案にするよう依頼される。…