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本、映画、音楽の感想など。

『コズモポリス』/ドン・デリーロ

2000年のニューヨーク。若くして投資会社を経営する主人公は、自分の周りにあるすべてにリアリティを感じられないでいる。莫大な資産、鍛え上げた肉体、株式の動きを見抜く才能、特殊改造されたハイテクの豪華リムジン、優秀な部下、ボディーガード、専属の…

『快楽としての読書 海外篇』/丸谷才一

丸谷才一による海外文学の書評集。書評というと基本的には新刊が対象になるものだけれど、そこは大ベテランの丸谷才一、1960年代から2001年までという長いスパンのあいだに書かれた書評600編ほどのなかから116編が選ばれ、収められている。結果として本書は…

『漱石全集を買った日 古書店主とお客さんによる古本入門』/山本善行、清水裕也

本屋でぱらぱらとページをめくっていると、以前のエントリでも書いた、小林康夫と大澤真幸による「全集を読め」という話が取り上げられているのが目に入って、おもわず買ってしまった一冊。古書店の店主である山本と、その常連客である清水との対談本だ。 社…

『ファイト・クラブ』/チャック・パラニューク

パラニュークの96年作。デヴィッド・フィンチャーの映画の方はだいぶ以前に見たけれど、最近いくつか読んでいたミニマリズム関連の本で本書がたびたび引用されていることもあり、原作も読んでみることにした。エリートビジネスマンの主人公は「完全で完璧な…

『勝間式 超コントロール思考』/勝間和代

仕事のみにとどまらず、人生全般(お金、健康、家事、人間関係、遊び)について、超コントロール思考であれ、と説いている一冊。もちろん、人間は他人や世界を操作できるわけではないので、自分自身の思考やふるまい、所属や環境、誰と付き合うか、といった…

『ミニマリズム 30歳からはじめるミニマル・ライフ』/ジョシュア・フィールズ・ミルバーン、ライアン・ニコデマス

「ザ・ミニマリスツ」と名乗る、アメリカ人ふたりのユニットによるミニマリズム本。ビジネスマンとして成功し、物質的にもかなり豊かな生活を送っていた彼らが20代後半にしてミニマリズムに目覚めたきっかけや、いざミニマルな生活をはじめようとする際、ど…

『ぼくたちに、もうモノは必要ない。』/佐々木典士

断捨離とかミニマリストとかの本はいままでに何冊か読んだことがあったけれど、この本が俺にはいちばん効いた。効いたというのは、具体的にモノを減らすための行動を始められた、ということだ。ウチには2m超えの本棚が3つもあるくらいなので、どれだけミニマ…

『仕事は楽しいかね?』/デイル・ドーテン

「頭がいい人がするいちばん愚かな質問は、『あなたは5年後、どんな地位についていたいですか?』だ」という、自己啓発系ビジネス本。一般的に、「1年後、5年後といった長期的な目標設定をする」、「生きる姿勢を変え、ビジョンを持ち、それに向かって計画的…

『センスメイキング 本当に重要なものを見極める力』/クリスチャン・マスビアウ

今日、ビジネスの世界でもっとも重要視されているのはSTEM(Science, Technology, Engineering, Mathematics)やビッグデータ、アルゴリズム思考といった、いわゆる理系の知識だと言えるだろう。現代はデータ至上主義の時代だ、と言ってもいいかもしれない。…

『センスは知識からはじまる』/水野学

よく、芸術的なセンスがある、ファッションのセンスがいい、仕事のセンスが優れている、などといった言い方で、「センス」というものが取り沙汰される。大抵の場合、それらの発言には、センスの問題では仕方ない、それは生来のものだから、感覚的なものだか…

『読書術』/加藤周一

加藤周一による読書術本。50年ほど前に書かれた本だが、古びていないどころか、最近乱立気味のこの手の本のなかでも、これよりまとまっていたり独創的だったりする本はほとんどないだろう、という印象だった。速く/遅く読む方法、本の選び方、本を読まない方…

「狂人日記」/ニコライ・ワシーリエヴィチ・ゴーゴリ

「狂人日記」は、九等官の中年男、ポプリーシチンという人物の日記という体裁をとっている。一人称の語りのみで、全編が構成されているのだ。ポプリーシチンは、ゴーゴリ作品の主人公らしく、自分(の社会的地位)に自信がないために、卑屈な態度と尊大な態…

『頭のよさはノートで決まる』/齋藤孝

頭がよくなりたければノートを書け!と煽りまくる齋藤のノート術本。俺自身、昔からノートやら手帳やらを大量に使ってきたノート大好きマンであるので、なかなかたのしく読めた。齋藤の主張は、「いつでもノートを持ち歩くこと」、「何か物事について思考し…

『人工知能は人間を超えるか ディープラーニングの先にあるもの』/松尾豊

「人工知能」という用語は一般に広く用いられているけれど、現時点では、人間の知能の原理を解明し、それを工学的に実現する、というような意味での人工知能は、まだどこにも存在していない。昨今の製品やサービスでよく言われている「人工知能」というのは…

『夜間飛行』/アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリ

訳者の二木麻里は、「解説」中で、サン=テグジュペリの資質を指して、「無言の領域で豊かに語る、本質的に寡黙な詩人」と述べているが、本作でも、まさにその寡黙さが全編を覆い尽くしていると言っていいだろう。リヴィエールをはじめとする登場人物たちは、…

『知的トレーニングの技術 [完全独習版]』/花村太郎

「世界の動きが「読める」ようになりたいし、人生を「意味づける」ことができるようになりたい」人のための、「自分なりに世界の知を獲得するための素朴なカリキュラム」としての知的トレーニング、独習術について語っている一冊。 なので、「自分の全生涯に…

『本は10冊同時に読め!――本を読まない人はサルである!生き方に差がつく「超並列」読書術 』/成毛眞

お金に支配され続ける「働きアリ」ではなく、自分の頭で考えて行動する「クリエイティブ・クラス」になれと説く、成毛眞の自己啓発/読書術系エッセイ。本を読まない人は人と同じことしかできず、真に成功することはできない、だとか、本を読まない者はサルで…

『わたしの外国語学習法』/ロンブ・カトー

5ヶ国語の同時通訳者、10ヶ国語の通訳者、16ヶ国語の翻訳者だったというハンガリー人の著者による、自伝的な外国語学習法エッセイ。これだけの外国語をほとんど自国内で学習したというのだから、さぞかし超人的な勉強法が展開されているのかとおもいきや、好…

『三四郎』/夏目漱石

小川三四郎という青年が熊本の田舎から東京にやって来て、粗忽者の友人や風変わりな先生、謎の女性らと出会う、そのとりとめもない日常を描いた作品だ。扱われるエピソードはどれもごくささやかなもので、まったく派手さはない。三四郎がふらふらとあちこち…

『北斎 富嶽三十六景』/日野原健司 編

本書は、三十六景の作品を一点ずつ見開きカラーで掲載し、それぞれの作品の特徴や用いられている技法、描かれているモチーフや場所、季節などについてコンパクトな解説を加えたもの。文庫サイズとはいえ、絵の美しさはきちんと味わえるし、解説も2ページに収…

『読書する人だけがたどり着ける場所』/齋藤孝

読書術本。齋藤孝による読書術本は何冊か読んだことがあるけれど、どれも基本的には同じ内容で、要は、できるやつになるためには読書しろ!ということが書いてある。 単に本を読み終えるというだけなら、頭を使わなくてもできるけれど、それでは本当に読んだ…

『職業としての小説家』/村上春樹

村上春樹による自伝的な小説家論。どのようにして小説を書くに至ったか、個人的なシステムにしたがって毎日休まず書くこと、書き直すこと、走ること、観察すること、他人の意見について、文学賞について、海外での受容についてなど、過去にもあちこちで少し…

『遅読家のための読書術ーー情報洪水でも疲れない「フロー・リーディング」の習慣』/印南敦史

ぐずぐず本を読んでは、結局ほとんど忘れてしまう…というのを繰り返す「遅読家」から抜け出し、「週6冊、月25冊、年間300冊の多読生活」を目標に、ビジネス書や新書を多読していこう、という一冊。著者の印南曰く、ビジネス書や新書といった実用書は、「1日1…

『獄中記』/佐藤優

外務省の元主任分析官で、2002年に背任・偽計業務妨害で逮捕された佐藤が、東京拘置所の独房内で記した日記、手紙などをまとめた一冊。全体に流れるしんとした静けさと、そのなかで着実に脈打っている思想の強靭さが印象的だった。 佐藤は、自身が巻き込まれ…

『一流の頭脳』/アンダース・ハンセン

一流の頭脳を手に入れるためにはどうすればいいか…それには運動だ!ということを、じつにさまざまなバリエーションでもって説いている一冊。ストレス、集中力、記憶力、創造性、学力、健康etc.と章立てこそ分かれているけれど、それらすべてにプラスの影響が…

『闘争領域の拡大』/ミシェル・ウエルベック

ウエルベックの小説第一作。この自由資本主義社会において、人間の闘争の領域は、経済領域のみにとどまらず、性的領域においてまで拡大している。経済の自由化を止めることができないのと同様、セックスの自由化もやはり止めることはできず、そこには必然的…

『怒りの葡萄』/ジョン・スタインベック

1930年代、折からの大恐慌に加え、厳しい日照りと大砂嵐が続いたことで、アメリカ中西部の小作農たちの多くは土地を失った。銀行と大地主たちは彼らの土地をトラクターで耕し、資本主義の名の下、合理化を進めていく。土地を追い出され、流浪の民となった彼…

『ホームシック 生活(2~3人分)』/ECD、植本一子

レーベルとの契約打ち切り、アル中、閉鎖病棟入院、鬱、家は猫のマーキングで荒れ放題、ってまさしく無頼の日々を送っていた40代後半のECDが、24歳年下のカメラマン、植本一子と出会い、付き合うようになって、同棲、妊娠、結婚、出産といったイベントを迎え…

『資本主義の終焉と歴史の危機』/水野和夫

まず水野は、タイトルの通り、資本主義システムの行き詰まりはもう目前にまで迫ってきている、と述べる。その理由として上げられるのが、先進各国で続いている超低金利状態だ。たとえば日本では、2.0%以下の超低金利がもう20年近く続いているわけだけれど、…

『21世紀の資本』/トマ・ピケティ(その3)

資本に対する累進課税を実施するとしても、それは全世界的に行われなければならない。タックスヘイブンというやつがあるのだから、各国がばらばらに課税を行ったところで、資本は別の国に逃げていくだけだからだ。そしてもちろん、課税実施の際には、全世界…