本-随筆
下重は、単なるミニマリズムではなく、個の確立を前提とした暮らし方を説く。自分なりの価値観こそがその人の値打ち。ものを書くことが「自分への執着」であるなら、書くのを億劫に感じていた今の自分は何を失いかけていたのか?
「フリーホーイリン」のジャケ写で有名なボブ・ディランの恋人が、60年代の熱狂と自身の若かりし日々の葛藤を綴る一冊。天才の「弦の一本」になることを拒み、自らの人生を歩もうとした彼女の真摯な言葉が魅力的
作家/イラストレーターの著者が、パリの素敵なおじさんを集めた一冊。画商を通さず自分のアトリエで絵を販売するようになったという82歳の画家の、「人生を学んでいるあいだに手遅れになる。だから大事なことは後回しにしてはいけない」という言葉が染みる
パティ・スミスによる回顧録的なエッセイ。自身の内面深くに潜り込んでいくような文体で、自由連想的な文章が紡がれている。彼女自身の年齢もあってか、全体のムードは静謐、瞑想的で、粒子の粗いモノクロームのような美しさを感じさせる一冊になっている。 …
親の死後に子が抱く感情は、愛情や悲しみだけではない。怒りや罪悪感、解放感すらも同時に存在し得る。実家の片づけを行っていくなかで、親との関係に片をつけようとしていく、精神分析学者による喪の記録
村上春樹がはじめて自身の父親について率直に書いたというエッセイ。全編通して、村上の小説や普段のエッセイの文体とはまた異なる、ごく淡々とした文章が連ねられているところが特徴的で、彼の文章からいつも感じられる、過剰なくらいの読者へのサービス感…
アーセナルへ「とりつかれた」男による回顧録。あるチームのファンであるということは則ち、そのチームによってありとあらゆる方法で失望させられるということだということを、これ以上ないほどわかりやすく示している一冊
タイトルの通り、山崎ナオコーラが自身の「かわいい夫」について書いたエッセイ。元が新聞の連載だったということで、ほとんどが2、3ページに収まり、強烈に感情を揺さぶることのないような、ほんとうにちょっとした話、になっている。そのあたり、なかなか…
菊地成孔が2017年から2020年までWebマガジンに連載していた記事に加筆修正し、一冊にまとめたもの。東京オリンピックを始めとする時事ネタはもちろん、音楽、映画、鰻、タクシー、ファミレス、メルカリ、人間ドック、読売新聞、ドナルド・トランプ、ざわちん…
現役の大工による、業務日誌のような淡々とした日記本。現実に根ざした仕事観からは職人としての矜持が感じられ、その朴訥で誠実な姿勢が胸を打つ
2012年に73歳で他界した、『はだしのゲン』の著者、中沢啓治が自身の半生を振り返ったエッセイ。6歳で被爆を経験した際の生々しい体験から、戦後の広島で必死で生き延び、怒りに燃えて原爆漫画を描くようになり、やがて世間にそれが受け入れられていくまでが…
アルベール・カミュの才能を発掘した人物として知られる、ジャン・グルニエによる哲学的エッセイ。哲学的、とは言っても、空白や、一匹の猫の死、ある肉屋の病気、旅、花の香り、地中海の島々、すぎ去る時について、思索的で淡々とした散文がまとめられたも…
詩人の文月悠光によるエッセイ集。タイトルにある「洗礼」というのは、「社会に入るために経験しなければならないこと」とされているような物事、通過儀礼のようなものだと言ってもいいだろう。幼いころからちょっと「人とズレて」いたという文月は、学校で…
外務省の元主任分析官で、2002年に背任・偽計業務妨害で逮捕された佐藤が、東京拘置所の独房内で記した日記、手紙などをまとめた一冊。全体に流れるしんとした静けさと、そのなかで着実に脈打っている思想の強靭さが印象的だった。 佐藤は、自身が巻き込まれ…
レーベルとの契約打ち切り、アル中、閉鎖病棟入院、鬱、家は猫のマーキングで荒れ放題、ってまさしく無頼の日々を送っていた40代後半のECDが、24歳年下のカメラマン、植本一子と出会い、付き合うようになって、同棲、妊娠、結婚、出産といったイベントを迎え…
幸田文のエッセイ集。3,4ページの掌編が集められたもので、ちびちび読んでいくのがたのしい一冊だ。内容的には、日常雑記的なものや思い出語りが大半で、どれもごく淡々としているのだけれど、その淡々とした感じ、その時々の気分や想いというのをきちんと言…
閉じ込め症候群(Locked-in syndrome (LIS))となり、左目以外はまったく動かすことのできない状態になってしまった男による、「左目のまばたき」によって書かれたエッセイ集。 閉じ込め症候群というのは、脳底動脈閉塞によって脳幹の特定部分に障害が発生す…
あなたがいまひどく落ち込んだ気分、みじめでひとりぼっちな気分、もうどうにでもなれ、ってやぶれかぶれな気分になっているのならば、『孤独な散歩者の夢想』を手にとってみるといいかもしれない。この本を書いたルソーというじいさん(64~66歳)は、きっ…
文明批評とユーモア溢れるヴォネガット節の集大成的な一冊。「これが幸せでなきゃ、いったい何が幸せだっていうんだ」当たり前すぎて見失いがちな、幸福への気づきを説くおじさんの言葉が胸に染みる
ここ数日は、まさに初秋って感じの、暑くもなく寒くもなく、空気は澄んでいて風はゆるやかで太陽の光は穏やかで…っていうような最高の天気が続いている。こんなにいい天気だと、なんていうかその天気のよさを感じているだけで、ちょっと幸せな気分、満ち足り…
ゴーギャンはマネの『オランピア』の写真をタヒチまで持って行き、現地の女性に「俺の嫁」だと紹介したのだという。『ノア・ノア タヒチ紀行』を中心に、この微笑ましくも大胆なエピソードを3つの視点から読む
アメリカでベストセラーになったノンフィクション。裕福な家庭に育ったクリス・マッカンドレスは、大学卒業直後、家族との連絡をいっさい断ち切り、放浪の旅に出た。彼はアメリカ各地を旅してまわった後、最終的にはアラスカの荒野へと単身踏み入り、4ヶ月…