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『The Other Day』/Quentin de Briey





Quentin de Briey - The Other Day
Éditions Yvon Lambert
https://www.yvon-lambert.com/products/quentin-de-briey-the-other-day?variant=14991387066434

作品概要・所感

ベルギー人フォトグラファー、クエンティン・デ・ブリエの写真集。2016年にパリのギャラリー・出版社であるYvon Lambertから1500部限定で出版された一作だ。

ざっくり言えば、デ・ブリエの「25年間にわたる人生の断片を詰め込んだ、大ボリュームな写真日記」というところになるだろうか。彼はもともとプロのスケートボーダーだったのだが、怪我をきっかけに写真家へと転身した、という経歴の持ち主である。本作には、彼のキャリアやプライベートを横断した、約800枚もの写真が収録されている。

写真家の時間を丸ごと放り込んだ、規格外の「私的記録」

本作の最大の特徴は、写真同士が重なり合っていたり、手書きのメモが添えられていたりする、コラージュ的なレイアウトにあるだろう。順序や配置に明確なルールは見当たらず、各ページはびっしりと写真たちで埋め尽くされている。写真集にありがちな、整理されたカタログ然とした構成、あるいは流れるようなストーリー性を重視した緊密な構成というのは、ここにはないと言っていい。

また、収録されている写真のジャンルが雑多であるという点もポイントだ。ストリートスナップ、友人や恋人を写したプライベートな写真、ファッション誌のエディトリアルなどが、とくに脈絡のないまま混在しているように見える。もっとも、その雑多さは単に散漫であるということではなくて、むしろ一人の写真家の時間を、丸ごと一冊の本に放り込んだかのようなムードを醸し出すことに繋がっている。

そういうわけで、本作は、全体に大らかで自然体で、大胆でもあり、自由な感覚がある写真集になっていると言っていいだろう。見ているうちに、プライベートなスクラップブックを覗き見しているような、ちょっと生々しい気分にもなってくる一冊でもある。紙質も、とくに高級感のあるものではなく、ラフで頑丈なタイプが採用されており、その感触が、この自由の感覚、「私的記録」的な感覚を一層強めていると言えそうだ。

写真の雰囲気としては、ヴォルフガング・ティルマンス、ライアン・マッギンレー、ユルゲン・テラーといった系統、あるいは、スケート/ストリート寄りの写真ということではアリ・マルコポロスあたりも連想したけれど、本作のデ・ブリエの方が、彼らの初期作品よりももう少しエネルギッシュでラフな雰囲気があるような気もする。(まあ、これは各写真の印象というより、本写真集のワイルドな印象が大きいのだとはおもう。)ともあれ、彼らの作品に見られるような、日常のちょっとした美や、親密な関係性を切り取るようなタイプの写真が好きな人なら、楽しく読むことができる一冊だと言えるだろう。

ちなみに、本書はかなり大きめの写真集で、370×280mmという新聞紙の一面ほどのサイズ感である。俺は数年前にネットで購入したのだが、届いたときに、え、こんなに大きいの!?と結構驚いたものだった。「このサイズ感こそが、本来ごくパーソナルな記憶であった写真たちに、写真家の一つの時代を記録したものとしての重みを付与する効果を発揮しているのだ」…などと言うことはできるのかもしれないが、現実問題として、ウチの本棚だとサイズ的に入らないのが困りものである。置き場所がないので、ずっと壁に立てかけていなければならないのだ。とはいえ、その規格外で不器用な感じもまた、この本らしいとは言えるのかなという気もする。