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『まなの本棚』/芦田愛菜

作品概要・所感

『果てしなきスカーレット』での芦田愛菜の演技が印象深かったので、図書館で借りて読んでみた。本書は、芦田が15歳の時に出版された一冊。彼女の「本棚」から紹介されていく本のラインナップは、小説が中心ではあるものの、古典から新刊までかなり幅広く、いかにも読書家のそれという感じになっている。

芦田といえば一昔前ならば、いわゆる「天才子役」の優等生、もう少し最近ならば「芦田プロ」と呼ばれるような、才色兼備の聡明で知性的な俳優、という印象が強い。とにかく、「しっかりしている」ことにかけては人後に落ちないのが芦田愛菜、というイメージである。

ただ、本書から見えてきたのは、そういった才媛のムードではなく、ごく等身大の本好きの女の子の姿だった。「年間100冊以上読む」とか、「中3くらいで村上春樹に出会ってハマる」とか、いや俺もまさにそうだったよ〜めっちゃわかるわ〜などとついつい言いたくなってしまう。少し背伸びしつつも、水を飲むように物語を読みまくり、それが吸収されまくっていく、十代の本好きらしさとでも言ったらいいだろうか、そういう感覚が詰まっているのだ。たとえば、こんなところ。

小さい頃から、本は生活の中に入ってるものだったので、もはや、読書をすることは、歯磨きをしたり、お風呂に入ったりするのと同じぐらい、私にとっては日常の一部です。
ちょっとした空き時間があれば、いつも「あぁ、あの本の続きが読みたいなぁ〜」と思ってしまいます。(p.26)
本の世界に入り込んでいると、あっという間に時間が経ってしまいます。
「もうちょっとだけ……もうちょっとだけ……」と読み続けていると、数十分も過ぎていることも!
この前も、歯を磨きながら本を読んでいたら、読んでいた本がおもしろすぎて止まらなくて、20分間ぐらいずーっと歯を磨き続けていたみたいで、母に「いつまで歯を磨いているの!?」と驚かれてしまいました。(p.27)

そういえば、俺も中学生の頃、自室の椅子の上にお腹を載せ、床に本を置いて読む、というわけのわからない姿勢のまま(目の前に机があるのに!)、気がついたら数時間も経っていた、みたいなことをよくやっていたっけ…などとおもい出したりもしたのだった。

「たくさんの本を読んでいるから」知性的なのではない

本書のなかに、山中伸弥教授との対談が収録されているのだが、そこで芦田は山中に対して、「人生って何ですか?」というどストレートな問いを投げかけている。なかなかできる質問ではない。(というか、俺はこんな素晴らしい質問をする能力はどう考えても持っていない。)こういうところには、彼女の凄さが端的に表れているという感じがする。

山中は芦田の問いを受け、基本的に人生においては何でも自分で決めることができるけれど、決められないことがひとつある、と返す。

山中先生:いちばん自分ではどうしようもなくて、決められないことは「この世の中に生まれてきたこと」なんですよ。こればかりは、完全に自分ではどうしようもありません。僕たちはこの世に生をいただいたわけで選択肢はないんです。生が尽きるまで生きるしかなくて、それだったら楽しく生きようということだと思うんです。でも、この楽しいというのが難しくて決して楽ではない。どうしたら自分が楽しいと思えるのかを探すしかないんですね。(p.116)
多くの人は、「自分が何をしたいのか」「何をしたら夢中になれるのか」を見つけるのに時間がかかります。その夢中になれるものが見つかってそれを仕事にできたら、生きていてとても楽しいと思います。
あと、多くの場合、自分の人生が楽しいと感じるために大切なのは「どこかで誰かのためになっている」という気持ちが持てるものであること。この気持ちは、すごく大切だと思います。(p.117)

山中の回答は、それなりに人生経験を積んだ大人からすれば、まあ正統的なものだと言えるだろう。しかし、この答えをもらったからといって、「人生とは何か」という問いそのものが終わるわけではない。この回答はあくまでひとつの指針、一般論であって、具体的に個人が「どう生きるか」は死ぬまで解き続けなければならない課題であることに変わりはないのだ。

15歳の芦田が、このような答えのない問いを真正面から大人にぶつけ、その回答を受け取ろうとする。こういった態度、ふるまいこそが、彼女が「しっかりしている」所以なのではないか。別の言い方をするならば、芦田愛菜は幼い頃からたくさんの本を読んでいるから知性的、なのではない。そうではなくて、本を読むなかで生まれた疑問を問いとして立ち上げ、そうした問いに向き合っていこうとする誠実さが芦田にはあり、それこそが、彼女の姿や発言に知性を感じさせるのではないか。何だかそんなことをおもわされたのだった。

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