2025-01-01から1年間の記事一覧
ルイジ・ギッリ『写真講義』。写真とは何かを問い直す一冊。日常的な被写体、ミニマルな構図、平面的な表現——静謐な彼の写真は「絵画的」と評されるが、それは現実とイメージの「均衡点」を探り、世界を問い直す試みである
菅付雅信『インプット・ルーティン』質の高いアウトプットのために大量・高精度なインプットを習慣化せよ、という極めてシンプルな主張。内容に新鮮味はないが、サボりがちな自分に活を入れてくれる「正論」として機能する一冊
成毛眞『39歳からのシン教養』。「読書するよりググれ」と主張する一冊。30代半ば以降は効率的な情報収集こそが重要だというが、本書で提唱される「シン教養」とは、本当に教養と呼べるものなのだろうか?という疑問は残る
バイヤール『読んでいない本について堂々と語る方法』は、「読んだ/読んでいない」という二分法を疑い、批評とは本についてではなく自分自身について語ることだ、と説く一冊。一見挑発的だが、読書や批評の本質を問い直す姿勢はごく誠実なものだと言える
芥川龍之介「芋粥」。五位が「芋粥を飽きるほど飲んでみたい」という夢を失う哀しみを描いた短編。彼の夢は、叶えるためのものではなく、憧れ続けるためのものではなかったか。夢というのは、必ずしもそれを叶えられる強者のためだけのものではないはずだ
芥川龍之介「袈裟と盛遠」。男と女が互いに蔑み、恐れ、憎み、愛する。愛ゆえに主体性を失い、抗いがたい感情にすべてを委ねることだけに愛を見出そうとする。愛という名のエゴイズムの恐るべき引力を描いた、グロテスクで神話的な物語
山本耀司が自身の半生と現在の心境を語るインタビュー集。サラリーマンのスーツの否定、アウトローへの共感、西洋の美学への反論。「まじめな生活をしているだけではだめ」と語る山本の不道徳で文学的な魅力が詰まった一冊
下重暁子『持たない暮らし』。単なるミニマリズムではなく、個の確立を前提とした暮らし方を説く。自分なりの価値観こそがその人の値打ち。ものを書くことは、自分への執着であり、個の確立の訓練でもある。
芥川龍之介「羅生門」。下人が老婆の自己正当化を聞いているうちに「或勇気」を得るに至り、そこからひといきに決断に至ってしまう。というところがおもしろい。既存の価値観が崩壊した世界で、個が新たな規範を見出していく物語として読む
宮本輝のデビュー短編「泥の河」。高度経済成長直前の大阪を舞台に、ねっとり湿った夏の空気や死の匂い、貧富の明暗を情感豊かに描き出していく。同じ子供でも属する世界が違う、という哀しい真実が、80ページあまりの短編から立ち上がってくる
「フリーホーイリン・ボブ・ディラン」のジャケット写真で有名な、ディランの恋人スージー・ロトロによる回想録。天才ディランの影に隠された、彼女自身の若かりし日々を、みずみずしい筆致で描き出す。 そのエバーグリーンな魅力の源泉とは?
エトガル・ケレット『あの素晴らしき七年』。軽快さの裏に、イスラエルの現実とホロコーストの影を感じさせる、掌編エッセイ集。空襲警報の中、家族がくっつき合う「パストラミ・サンドイッチごっこ」の話など、困難のなかでもユーモアを忘れない姿が魅力的
水野和夫『資本主義と不自由』。搾取による「成長」は限界に達し、「帝国」化が進行する現在は、近代から次のフェーズへの「過渡期」だと言える。この時代を軟着陸するための姿勢について、考えていくための一冊
「人生には何の意味もない。が、人は自分の魂を練り直すことはできる」。ユダヤ人作家ネミロフスキーの評伝『チェーホフの生涯』は、チェーホフの伝記的事実と作品分析を丹念に行うことで、彼の信念を描き出してみせている
オランダの写真家、Anne Geeneによる図鑑型写真集『Book Of Plants』。淡々とした記録写真の膨大なコレクションが、ごく身近な植物のミクロとマクロを行き来する驚くべき美のイメージを立ち上げていく