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本、映画、音楽の感想/レビューなど。

2025-11-01から1ヶ月間の記事一覧

『39歳からのシン教養』/成毛眞

「読書するよりググれ」と主張する一冊。30代半ば以降は効率的な情報収集こそが重要だというが、本書で提唱される「シン教養」とは、本当に教養と呼べるものなのだろうか?という疑問は残る

『読んでいない本について堂々と語る方法』/ピエール・バイヤール

「読んだ/読んでいない」という二分法を疑い、批評とは本についてではなく自分自身について語ることだ、と説く一冊。一見挑発的だが、読書や批評の本質を問い直す姿勢は驚くほど誠実

「芋粥」/芥川龍之介

五位が「芋粥を飽きるほど飲んでみたい」という夢を失う哀しみを描いた短編。彼の夢は、叶えるためのものではなく、憧れ続けるためのものではなかったか。夢というのは、必ずしもそれを叶えられる強者のためだけのものではないはずだ

「袈裟と盛遠」芥川龍之介

愛という名のエゴイズムが引き起こす、主体性の完全な放棄と自己否定の行方には何があるのか。殺人と死へと突き進む男女の心理を掘り下げ、倫理も理性も超えた「抗いがたい感情」の必然性を読み解く。神話的な美しさのある短編

『服を作る モードを超えて 増補新版』山本耀司、宮地泉

「まじめな生活をしているだけではだめ」と語る山本耀司の、世の中のモラルや既成の美意識に対する反骨精神に惹かれる。社会が求める「正しさ」から外れ、孤独と友達になりつつ、自分なりの生を生き切るための意志を再確認させてくれる一冊

『持たない暮らし』/下重暁子

下重は、単なるミニマリズムではなく、個の確立を前提とした暮らし方を説く。自分なりの価値観こそがその人の値打ち。ものを書くことが「自分への執着」であるなら、書くのを億劫に感じていた今の自分は何を失いかけていたのか?

「羅生門」/芥川龍之介

下人が得た「或勇気」の正体とは何か。ラカンの欲望論を補助線に、老婆の自己正当化が下人に与えた「大義」と生存論理への転換を読み解く。既存の規範が崩壊した世界で、個が新たな規範を見出していく物語としての再解釈

「泥の河」/宮本輝

高度経済成長直前の大阪を舞台に、ねっとり湿った夏の空気や貧富の明暗を鮮烈に描く短編。同じ子供でも属する世界が違うという哀しい真実が、米櫃に手を入れ「温い」「冷たい」と交わされる数行の会話から残酷なまでに立ち上がる

『グリニッチヴィレッジの青春』/スージー・ロトロ

「フリーホーイリン」のジャケ写で有名なボブ・ディランの恋人が、60年代の熱狂と自身の若かりし日々の葛藤を綴る一冊。天才の「弦の一本」になることを拒み、自らの人生を歩もうとした彼女の真摯な言葉が魅力的

『あの素晴らしき七年』/エトガル・ケレット

軽快さの裏にイスラエルの現実とホロコーストの影を感じさせる、掌編エッセイ集。空襲警報の中、家族がくっつき合う「パストラミ・サンドイッチごっこ」の話など、困難の中でもユーモアを忘れない姿が魅力的

『資本主義と不自由』/水野和夫

搾取による「成長」は限界に達し、「帝国」化が進行する現在は、近代から次のフェーズへの「過渡期」だと水野は言う。この時代をいかに軟着陸させるか、その姿勢を考える一冊を読む

『チェーホフの生涯』/イレーヌ・ネミロフスキー

死を予感する作家が戦時下に辿り直したのは、ロシアの文豪の人生の軌跡だった。「人生に意味は見出せずとも、魂を練り直すことはできる。」絶望の淵で綴られた言葉から、生きるための諦念を読む

『Book Of Plants』/Anne Geene

500ページ超に渡り、淡々と並ぶ植物の断片。記録写真が膨大なコレクションとして結実したとき、鮮やかな美のイメージが立ち上がる。ミクロとマクロを往来し、世界を肯定する歓びに触れる感覚を探る