- 作者: 保坂和志
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2011/02
- メディア: 単行本
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自然というのはすごい力を持っていて、ああでもないこうでもないと難しいことを考えていても、海面にきらきら反射する光を見ると、「結局、俺が知りたかった答えは、この光だったんじゃないか」と、簡単に納得してしまう。だから私にとって自然はもうほとんど無条件な信頼の対象なのだ。(p.10)
働いたら充実感が得られるなんて大間違いで、人生の充実感とは究極的には、江ノ電の駅のベンチにずうっと座って、海や山や空を眺めているときに得られるようなものなのだ。
外の人は、そのときの光を崇高で特別なものとイメージするだろうが、あるのはありふれた光だけだ。それで充分なのだ。(p.10)
「自然はもうほとんど無条件な信頼の対象」とか、「ありふれた光だけで、それで充分」とかって、いや、ほんとその通りだよなー、とおもう。まあ引用の箇所は、保坂が自分には海辺で育った人間特有の自然への無条件な信頼や、それに由来する怠惰さがあるようにおもわれる、というようなことを述べていたところであって、すべての人にとって「自然はもうほとんど無条件な信頼の対象」になっているとまでは彼はかんがえていないようだったのだけど。
俺の場合は海とか池っていうより、木々の緑が好きなので、広い公園の芝生に寝転がっては大きな空に映える木々の緑を眺めたり、木陰からきらきらと降り注ぐ木漏れ日を感じたり、っていうようなのがいちばんいい。そういうシチュエーションを想像しているだけで、もう脳内で何かが分泌されてるんじゃないかってくらい、いい気分になってしまいそうにもなる。ついでに、学生の頃、いまくらいの季節になると毎週のように行っていた、井の頭公園とか小金井公園、野川公園の景色をぼんやりとおもい出しては、ちょっと切ないような気分になったりもする…。