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『ムード・インディゴ うたかたの日々』

渋谷シネマライズにて。ディレクターズカット版を見てきた。ヴィアンのファンなら見て後悔はしないはず…と聞いていた本作だけれど、たしかに、かなり原作(『うたかたの日々』/ボリス・ヴィアン)を尊重した作りになっていたようにおもう。ミシェル・ゴンドリーならではの、キュートでおもちゃっぽく、ときどきシニカルな映像との相性も、かなりよかったんじゃないだろうか。少なくとも、俺は結構気に入った。ヴィアンの文章には、言葉遊びやシュルレアリスティックなイメージがたくさん出てくるので、「あー、ゴンドリーはあのシーンをこういう風に読んだんだなー」なんてことをかんがえたりするのが、非常にたのしいのだ。(なので、少なくともディレクターズカット版については、原作を読んでから見た方がいいのではないかとおもう。)

まあそういうわけで、全体的になかなか好みな作品だった、ということになるのだけれど、不満というか、腑に落ちなかった点がひとつ。それは、主役のふたり、ちょっと歳がいき過ぎているんじゃないか??ということだ。

原作において、コリンとクロエがどこまでも自由で身勝手でわがままでいられるのは、若くて美しくて、おまけにお金もたっぷりと持っているからだ。それなのに、本作におけるロマン・デュリスとオドレイ・トトゥってアラフォーのふたりからは、若くして強者であるがゆえのエゴイスティックなところや、無邪気で向こう見ずなところ、だからこそその幸福は長続きしそうにないだろう、っていうような印象が、ほとんど感じられなくて。

なんでこのふたりが主役になったんだろう?20歳前後で、何ていうか、もっとはっちゃけた感じのする俳優じゃダメだったんだろうか??とおもったのだった。(ロマン・デュリスは結構がんばっている感じがしたのだけど、それでもまだまだ知的で大人っぽすぎる気がした。もっと線が細くて頼りない、いかにも「男の子」って雰囲気のする人だったら、よかったのになー。)他のイメージがかなり原作に忠実に作られていただけに、どうもそこだけ強く違和感を覚えたのだった。