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『ノーザン・ソウル』

新宿シネマカリテにて。70年代イングランド北部で発生したニッチなポップカルチャーのムーブメント、「ノーザン・ソウル」のシーンを舞台にした作品。いわゆるワーキングクラスの青年が、ノーザン・ソウルの音楽とダンスに没頭することで10代の鬱屈を生き延び、成長していく姿を描いている。学校では見つけられなかった親友を得たり、人前でダンスしたりDJしたり、服や髪型を変えたり、学校をドロップアウトしてアメリカ行きのために工場でバイトしたり、悪いオトナと出会ったり、ドラッグを覚えたり、女の子といい感じになって童貞を捨てたり…といういわゆる青春ものの通過儀礼が一通り描かれている感じで、それが全体的な既視感、レディメイド感に繋がってはいるのだけれど、しかしやっぱりこういう"初めてのわくわく感"みたいなものがいっぱいに詰まった作品はたのしいよね、という風にもちゃんと感じさせてくれる映画だった。

監督のエレイン・コンスタンティン自身が、ノーザン・ソウルムーブメントの熱烈なフォロワーであるらしいので、おそらく、時代考証がかなりきっちりとなされているのだろう。作品全体の空気感にはなんともリアリティが感じられる。どんよりとした曇り空、汚れたレンガ造りの街並み、公民館のような建物で行われるパーティの薄暗さや音響の具合、ダンスの独特な振り付け、モッズやスウィンギング・ロンドンとはまたかなり違う(イナタい感じの)ファッションなど、ひとつひとつにやたらとリアルな感触があるのだ。それが上記のようなストレートなストーリー展開と組み合わされていることで、映画としての説得力がぐっと引き上げられているようにおもった。

個人的には、ノーザン・ソウルの詳しい知識がまったくない状態で見に行ったのだけれど――ノーザン・ソウルって単純にデトロイト辺りのソウルミュージックを指すものかとおもっていた――、『トレインスポッティング』とか『24アワー・パーティー・ピープル』みたいな、英国ユースカルチャーを描いた作品として十分にたのしめた。初めて知るジャンルの音楽に興奮して眠れなくなったり、ずっと探していた名前のわからない曲を偶然見つけたり、自分の仕入れた曲を友達に聴かせて感動を分かち合ったり、などといった、「10代に音楽が好きだったらぜったいあるあるだよね!」的な感情が鮮やかに描かれていて、そういうところもよかった。

そしてもちろん、サウンドトラックもよい。いずれもBPMが速く、アゲアゲなコード進行にカラフルなオーケストレーションが施されていて、とにかくもう激烈にポップ。これで一晩中激しく踊り明かすとなると、そりゃアンフェタミンも必要かもね…とおもわされたのだった。

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