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『クロニクル』

池袋シネマサンシャインにて。ハイスクールに通う少年たち3人が、ふとしたことで超能力を手に入れる。当初は他愛もないいたずらに能力を使っているだけだった彼らだが、そのふるまいは徐々にエスカレートしていき…!

ひとことで言うなら、ティーンエイジャーの鬱屈した内面を「超能力」というツールを用いることによっておもいっきり肥大化させ、その痛みや閉塞した感覚を描き出した、という感じの作品だ。プロットに関してはおおよそ予想の範囲内だったけれど、物語のクライマックス、主人公の少年が超能力で街を破壊し尽くし慟哭するシークエンスは、本当にどこまでも痛々しくて、見ていて胸が苦しくなった。人を強くすることができるのは、その人の内に育まれた自信だけで、その自信というやつは、成功体験を積み重ねていくことでしか醸成することのできないものなんだな…ということを強く感じさせられた。

(だから、少年が病床の母親に向かって「僕は強くなったよ」と無理して言うシーンのことをおもい出すと、ひどく悲しい気持ちにさせられてしまう。彼は最後まで、健全な自己愛や自尊心というものを手にすることができなかったのだ。自分は受け入れられている、認められている、価値のある存在である、という意識を、持つことができなかったのだ。)

本作の物語は、主人公の少年がいつも持ち歩いているビデオによって撮影されている、というフェイクドキュメンタリー的な手法によって描かれている。これによって、プロットが要請する「説明のためのシークエンス」をばっさりと端折っているところがとてもよかった。シンプルで直球なストーリーにはこのスピード感が合っているし、カメラによって主人公の危うさが冷徹に捉えられている、という感じがするのもよかった。