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『イノセント・ガーデン』

日比谷TOHOシネマズシャンテにて。パク・チャヌク監督+ミア・ワシコウスカ+ニコール・キッドマン、って前情報以外は何も知らない状態で見に行ったのだけど、サスペンスの手法がふんだんに盛り込まれた映画で、どういう展開になるのか予想のつかないどきどき感がたのしかった。スタイリッシュな映像で現代のゴシック譚を描いた、という印象の作品。

物語を駆動していくのは、主人公の少女インディア(ミア・ワシコウスカ)とその母親(ニコール・キッドマン)、そしてインディアの叔父のチャーリー(マシュー・グード)、この3人の関係性である。インディアは母に心を開かないし、母はそんなインディアのことをどこか疎ましくおもっている。チャーリーがインディアに対して異様な執着を見せる一方で、母はチャーリーに惹かれている。これだけの設定があればストーリーを展開させるには十分過ぎるくらいだけれど、ただ、観客には彼ら3人が「実際のところどうおもっているか」はっきりと知らされることがない。そのため、物語は最初から最後まで、「Aであるようでありながら、BでもCでもありうるし、あるいはAかつCだったりするのかもしれない」というような多義性を保ったまま進行していくことになる。たとえば、インディアは果たしてチャーリーに異性として惹かれているのか、似たもの同士としての興味を抱いているのか、危険を察知して可能な限り距離を取るべきとかんがえているのか…という、物語の根本に関わるような疑問にしても、「そのどれもが正解であるし、また、そのどれかひとつだけが正解というわけでもない」という感じなのだ。

登場人物たちの心情にはそんな風に玉虫色なところがありつつも、物語は否応なしに進行していき、やがて宿命的とでも呼ぶ他ないような終局を迎えることになる。観客としては、プロットの展開は「A、B、Cのどれかだな、きっとBだよな…」などと予想しながら見ていくことになるわけだけれど、そのうちのどれが「結果」として選び取られるのかは、本当にぎりぎりの瞬間になるまでわからない。とにかくこの焦らし方がうまい。観客は、最後の最後まで緊張感を持って画面を見ていなくてはならなくなるのだ。

主演のミア・ワシコウスカは魅力的ではあったけれど、18歳の少女を演じるのはさすがにちょっと無理があったようにおもえた。いかにも10代って感じの攻撃性や、ちょっとしたきっかけで心情ががらっと変わってしまうような危うさ、不安定さというのは、その時期を通過してしまった大人が「演じる」のは難しいものなのかも、という感じがしてしまったのだ。でも、首をかしげて眉間に皺をよせた不満げな表情はよかったし、ピアノ連弾のシーンの官能性(というか、エロさ)は素晴らしかった。