本
カレー研究家の著者による、「わたしだけのおいしいカレー」を作るための一冊。カレー調理における注意点やコツ、スパイスの選び方、そもそもカレーのおいしさとは何か、そして自分でカレーを作る際、どんなカレーを目指すべきなのか、などなどについて書か…
哲学者の著者が、ファッションについて、あるいは、人が自分の身体をどのように経験しているかについて、考察している一冊。 人の身体というのは、<像(イメージ)>だと鷲田は言う。身体の全表面のうち、人が自分の目で見ることができる部分はごく限られて…
菊地成孔が2017年から2020年までWebマガジンに連載していた記事に加筆修正し、一冊にまとめたもの。東京オリンピックを始めとする時事ネタはもちろん、音楽、映画、鰻、タクシー、ファミレス、メルカリ、人間ドック、読売新聞、ドナルド・トランプ、ざわちん…
独特な文体が魅力的な、アンナ・バーンズのブッカー賞受賞作。北アイルランドとおぼしき名前のない町を舞台に、主人公である18歳の「私」(趣味は歩きながら19世紀の小説を読むこと)が反体制派の有力者たる「ミルクマン」なる男にストーカーされたり、「メ…
第一次世界大戦後の1919年、ヴェーバーがミュンヘンの学生団体向けに行った講演をまとめたもの。まずヴェーバーは、トロツキーの言葉を引いて、「すべての国家は暴力の上に基礎づけられている」と言う。 近代国家は、この暴力行使の権力を独占するべく、その…
現役のノルウェー人大工であるトシュテンセンによる日記本。オスロ市内に暮らすペータセン一家から、「屋根裏を居住用にリフォームしたい」という依頼の電話を受けるところから始まる、半年あまりにわたる仕事のあれこれが綴られている。全編通してほとんど…
ひたすら饒舌というか自意識をそのまま垂れ流しにしたような、大阪弁と丁寧語が混じった、どろっとした文体が特徴的な中編だ。語り手の「わたし」は、人の思考は脳ではなく奥歯でなされているとかんがえている不思議ちゃんで、生まれる予定のない自らの子供…
神秘的な力を持った帽子を中心に、さまざまな登場人物たちの人生模様を描いていく連作短編的な構成の小説だ。料理、ワイン、ファッション、香水、音楽、絵画、テレビ番組などなど、80年代中盤のフランスのカルチャーがたっぷりと盛り込まれているところがた…
1949年、ニューヨークに暮らす脚本家のハンフは、ロンドンはチャリング・クロス街84番地の絶版本専門の古書店、マークス社に宛て、ほしい書籍のリストーー地元では手に入れにくい英文学の本たちのリストーーを手紙で送る。マークス社の店員ドエルは入手した…
有人火星探査を行っていた宇宙飛行士のワトニーは、猛烈な砂嵐によるミッション中止によって火星を離脱する際、不運な事故でひとり火星に取り残されてしまう。不毛の大地にただひとりの人類として、彼は限られた物資と己の知識のみを武器に、なんとか生き延…
本の読める場所を求めて作者:阿久津隆朝日出版社Amazon "本の読める店"fuzkueの店主である著者が、文字通り「本を読むための場所」としてのカフェを作ろうと決意し、生み出し、それを運営していく上での思考の過程や、試行錯誤のようすについて書いている一…
イーユン・リーによる長編第3作。16歳で自殺した少年と、作家であるその母親との対話だけで構成されている小説だ。 自身の内面深くに沈潜し、想像し、書くこと、そうしてフィクションを作り出し、フィクションのなかで生きること――たとえそこが「理由のない…
古代オリエント最大の神話文学にして、世界最古の叙事詩とも言われる「ギルガメシュ叙事詩」のアッシリア語原文ーー粘土書板に楔形文字で刻まれたーーからの日本語訳。 紀元前2500年頃に生み出された人類最古の物語が、生と死を扱った、極めて根源的な「行き…
タイトルの通り、小林が10代の若い人に向けて10冊の本を紹介する、という一冊。それだけではものすごくありきたりで退屈な本――いわゆる教養ガイド本的な――になりそうなものだけれど、そこは小林、自身の若いころの読書体験を引きながら、本を読むとはどうい…
バルトの処女作。とにかくわかりづらい文章が多く、よく理解できたとは到底言えないのだけれど――それでも、大学生の頃にちくま学芸文庫版を読んだときよりかは幾分ましだったとおもう――簡単にノートを取っておくことにする。 * 本書におけるバルトの主張は…
じつはモームの長編ははじめて読んだのだったけれど、いやーむちゃくちゃ面白い小説だった!エンタテインメント的なストーリーのドライブ感を持ちながらも、相当に複雑な人間の像が描き出されており、読書の愉しみを十全に味わせてもらった。 本作は、作家で…
本作は、オリバー・ツイストという少年の成長物語ではない。一種の貴種流離譚であり、オリバーの彷徨を利用して社会の低層を描いた作品だと言った方がいいだろう。なかなかの長編ではあるのだけれど、はっきりとオリバーの目線から描かれるパートは前の半分…
アン・タイラーは、とにかくふつうの市井の人々の描写というやつがむちゃくちゃに上手い。というか、そもそも彼女の小説はすべて、そういった人々を描いたものだと言ってもいい。ひとくせもふたくせもあることは間違いないけれど、でも本当に平凡な人々、に…
文庫版3〜5巻では、「ハンニバル戦記」というタイトル通り、ローマに攻め込んだカルタゴの天才、ハンニバルと、それに立ち向かっていったローマの武将たちとの戦いの数々が描かれている。1,2巻で扱われていたような法制度や国家の成り立ちの話は少なく、戦記…
塩野七生による長大な歴史エッセイの第1巻(文庫では1,2巻)。紀元前753年とされるローマ建国神話から王政→共和制への移行、平民階級の台頭と貴族対平民の抗争、リキニウス法の制定による平民の包括、エピロスの王ピュロスとの戦いを経てローマが前270年頃に…
本書の冒頭で、「前作『宇宙を語る』より、もっとわかりやすい本を書けると気づき、本書を執筆しました」とホーキングは述べているけれど、相対論と量子論について簡潔な説明をしている前半の2章はともかく、後半に進むにつれて扱われるトピックの難易度はぐ…
東大の歴史学教授である加藤が、栄光学園の中高生たちに行った5日間の講義をベースに書かれた一冊。日清戦争から太平洋戦争まで、近代日本の戦争の歴史がテーマになっている。 講義は、加藤が生徒たちに史料(報告書、書簡、日記、地図など)や歴史家の意見…
オースターの2008年作。2000年代にオースターが書いていた「部屋にこもった老人の話」の第5作目ということで、本作も、ひとりの老人が自室の暗闇のなかで眠りにつくことができず、頭のなかで物語をあれやこれやとこねくり回している場面から始まっている。 …
ネットでレビューや感想を見ていると、本作への批判は、主に物語中盤で引き起こされる「すれ違い」があまりにもご都合主義的で、作りもの感満載である、という点に対するものが多いようだ。たしかに、俺自身、この小説を読みながら、うわ、この展開、まじか…
清水幾太郎は本を読んで得た内容を「表現」することで、はじめて本当に読めたことになる、ということを述べていたけれど、福田も本書で同じようなことを書いていた。 「情報」を得るというのは、けして受動的な行為ではないのです。むしろ、高度の自発性、能…
社会学者の清水による、本の読み方に関するエッセイ。清水の読書遍歴から、情報整理の仕方、どんな本を読むべきか、本の内容を忘れないための工夫、洋書の読み方、などなど、この手の「読書論」系の本で扱われがちなトピックについては大方書かれている。197…
岡田斗司夫によるノート術本。数年ぶりに再読した。「スマートノート」なる方法について書かれている一冊で、いろいろな書き方が紹介されているのだけれど、全編通して繰り返し語られているのは、ムダになる前提で構わないから、とにかくノートに書き出すこ…
2012年に73歳で他界した、『はだしのゲン』の著者、中沢啓治が自身の半生を振り返ったエッセイ。6歳で被爆を経験した際の生々しい体験から、戦後の広島で必死で生き延び、怒りに燃えて原爆漫画を描くようになり、やがて世間にそれが受け入れられていくまでが…
アルベール・カミュの才能を発掘した人物として知られる、ジャン・グルニエによる哲学的エッセイ。哲学的、とは言っても、空白や、一匹の猫の死、ある肉屋の病気、旅、花の香り、地中海の島々、すぎ去る時について、思索的で淡々とした散文がまとめられたも…
勉強に嫌気がさしてしまった医学生のバナヤンは、現代の「成功者」たち――ビル・ゲイツ、スティーブン・スピルバーグ、レディー・ガガ――の伝記や評伝を読みあさる。そうして、彼らが自分と同じくらい若いころに、どんな風に成功の第一歩を踏み出し、これだと…