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『ないもの、あります』/クラフト・エヴィング商會

「よく耳にするけれど、一度としてその現物を見たことがない」ものたちをクラフト・エヴィング商會の「商品目録」という形で紹介していく一冊。「堪忍袋の緒」や「口車」、「左うちわ」、「無鉄砲」、「おかんむり」などなど、日本語のことわざや慣用表現のなかだけに出てくる「もの」ばかりを、ひとつひとつキュートかつシュールなイラストつきで解説している。

まあ、お洒落で皮肉っぽくて気が利いていて、ちょっぴり毒気もあってオトナの余裕を感じさせる、という感じの、軽くてたのしい作品だと言えるだろう。この手の本って、センスが刺さるか刺さらないかほとんどすべて、という気がするけれど、正直に言うと、あまり自分には刺さらなかった。

ちょいと、「頭にくる」ことが発生いたしましたら、本品をうやうやしく取り出し、貴方の頭頂に載せていただくだけでOK。
あとはただ黙っていればよいのです。
大きく構えていればよいのです。
大きな声など出さない。
暴れたりしない。
ただ、冷静に。
堂々と!
周囲の人々は、貴方の頭に燦然と輝く本品を見ながら、
「……今日は、あの人、おかんむりだよ」
「……なるほど、相当な、おかんむりだ」
と、ささやき合い、静かにそっとしておいてくれるはずです。(p.88)

なんというか、こういう文章をちょっと寒いなどとおもってしまう自分がいるのは否定できず、でもそんな自分の狭量さが少しく情けないようでもあり…という感じなのだ。本書のような作品を素直に味わえるくらいの心の余裕は、常に持っておきたいものよ…などとおもわされたりした一冊だった。