勝ち続ける意志力 世界一プロ・ゲーマーの「仕事術」 (小学館101新書)
- 作者:梅原大吾
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2012/10/26
- メディア: Kindle版
ウメハラの思考法は、ゲーマーならではの超個性的なものかとおもいきや、決してそんなことはない。どちらかといえば、自己啓発本とかにもよく書かれているような内容だと言っていいだろう。ただ、ウメハラがゲームの世界においてひたすらにかんがえ、悩み続けることで、自らの内から答えをひねり出ししてきた、ということがはっきりと感じられる文章なので、もう言葉の説得力が本当に半端ないことになっている。
ひとりの人間があるマイナーなジャンル、世間から白い目で見られるようなジャンルに魅入られ、「これでいいのか?」と絶えず自問しながらもしかしそのなかで着実に努力し続け、やがてそれを極め、ついには世間にジャンルそのものを認めさせるという、その葛藤や困難さが率直に語られていることで、ものすごく生きた言葉になっているのだ。本書はパンチラインの宝庫といっても過言ではない。
僕にとっての正しい努力。それはズバリ、変化することだ。昨日と同じ自分でいない――。そんな意識が自分を成長させてくれる。ゲームの世界においては、変化なくして成長はない。 しかし多くの人は、変わることと前に進むことは別だと思っているだろう。たしかに、自分を変えることは不安だし、変化した先に勝利があるとは限らない。けれども、変わり続けていれば必ず前へ進める。変化したことで失敗したり、後ろに下がったりしたときは、もう一度変化すればいい。失敗に気づいて変化すれば、以前の自分よりも必ず高い位置に行ける。一歩後退しても、その後退には意味があり、それがきっかけで二歩進む方法が見えてくることもある。変化を続けていれば、きっと正しいことが見つかる。デイル・ドーテンの『仕事は楽しいかね?』でも、絶えず変化し続けること、素早く何度も失敗することの重要性が繰り返し語られていたけれど、ウメハラが言っているのもまったく同じことだろう。
他にも、こんなところ。
どれだけ勝とうが負けようが、結局は、誰もがひとりの人間に過ぎず、結果はそのときだけのものだ。勝敗には必ず原因があり、結果は原因に対する反応でしかない。刹那的に左右されず勝てるための努力を怠っていいはずはない。 勢い任せで分析を怠ってきた人間は、究極の勝負の場面でススススッと引かざるを得なくなる。覚悟を持って戦いに挑んでいる相手を前にすると、自信を持って前に出て行くことができなくなるのだろう。そのような後退の仕方は、一夜漬けの人間にも当てはまる。なんていうか、やはり実体験を通して生み出された言葉というのは圧倒的に強い。重みが違うとはこういうことを言うのだろう。ひとつのことを極めることで、あらゆる物事について一つ別のレベルから語れるようになる、ということがよく言われるけれど、この本についてもまさにそういう印象があった。