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『あなたを天才にするスマートノート』/岡田斗司夫

あなたを天才にするスマートノート・電子版プラス

岡田斗司夫によるノート術本。数年ぶりに再読した。「スマートノート」なる方法について書かれている一冊で、いろいろな書き方が紹介されているのだけれど、全編通して繰り返し語られているのは、ムダになる前提で構わないから、とにかくノートに書き出すこと、書いてかんがえ続けることこそが重要だ、ということだ。

曰く、ものをかんがえるというのは「武道」のようなもので、まずは型を覚え、それに従って練習を繰り返し、同じようなことを何度も何度も繰り返し行い続けることでこそ身についてくるものである。あるいは、それは「農業」のようなもので、果実が収穫できるようになるまでには、土を耕し、雑草を抜き、水や肥料をやり、それなりに長い時間をかける必要があるものである。

岡田は、ノートを書くことは、「あたりまえかもしれないことを、自分でいちいち言語化する」ことだと述べている。人間は、ふつうに生活している限り、大して「かんがえる」ことなどしていない。たいていの場合、単に動物的に「感じている」のに過ぎないのだ。だから、「かんがえる」一歩手前の想念をノートに書き起こすことで、無理やりにでも固定化させることが重要になってくる。そうやって自分の身体性に見合った言葉をアウトプットし続けていくことで、はじめて自分なりに「かんがえる」ことができるようになってくる、というわけだ。

また、「言語化」する際、頭のなかで想念をぐるぐる回しているだけではだめで、たとえ中途半端なロジックであったとしても、何度も紙に書き出してみるということが大切だ、と岡田は強調する。何度も繰り返し書いていくうちに、もともとは自分のなかで別々だったはずのトピックたちに有機的な繋がりが生まれ、リンクするようになっていく。そうして生成されてくるのは、自分なりのポジションを取った意見であり、自分の人格を通して生まれたかんがえ方である。

そうやって書いてかんがえることを繰り返していると、あるとき、「いままで書いてきたことが自分にしかわからない組み合わせで急に意味を持つ」、「すべてのものは意味があるとわかる、その中で自分は何をしているのか、ほんの一瞬だけ俯瞰で見える」ような感覚が訪れるのだと岡田は言う。個人的には、そんなことも一度くらいは経験したことがあったような、なかったような…という感じではあるけれど、言わんとするところについては、なんとなくわかるような気もする。それはたとえば、ジャン・グルニエの書いていた「自己を再認識」するような「真実の瞬間」に近いものでもあるのかもしれない。

人間は、この世界の無意味さについて、そのままでは耐えることができないがゆえに、意味を見つけようとするものだ。思考をノートに書きつけ、この世界に関する自分なりの意見や見解を作ろうとすることは、自分なりに世界に意味付けを行うこと、すなわちこの世界に生きる「自己を再認識」しようとする試みだと言うこともできるようにおもえる。