2013-01-01から1年間の記事一覧
ハンブルクの街外れにあるソウル・キッチンは、ビールと温めた冷凍食品が主力のレストラン。オーナーのジノス(アダム・ボウスドウコス)にとって、自力で倉庫を改装して少しずつ作り上げてきたソウル・キッチンは自分の分身と言ってもいいようなもののはず…
主人公、ジェインの魅力は、何といってもその意志力の強さだろう。文字通り自分の意志の力ひとつで人生と格闘し、運命を切り開いていくその姿は、とにかくかっこいいとしか言いようがない。ジェインの意志力は、物語冒頭では不幸な生い立ちからの脱却への志…
イノセント・ガーデン (字幕版)発売日: 2013/11/26メディア: Prime Videoこの商品を含むブログを見る 日比谷TOHOシネマズシャンテにて。パク・チャヌク監督+ミア・ワシコウスカ+ニコール・キッドマン、って前情報以外は何も知らない状態で見に行ったのだけ…
決して明かされてはならない秘密である「分身」。その存在が明らかにされると消滅してしまうか、むしろ本体の方を抹殺してしまう「分身」。本体からの独立や分離を、あるいは入れ替わりを望む「分身」。本体の陽性/陰性のみを抽出したかのような「分身」。そ…
海に住む少女 (光文社古典新訳文庫)作者: シュペルヴィエル,永田千奈出版社/メーカー: 光文社発売日: 2006/10/12メディア: 文庫購入: 4人 クリック: 38回この商品を含むブログ (82件) を見る これはひさびさの大当たりだった!シュペルヴィエル、こんなにも…
回送電車作者:堀江 敏幸中央公論新社Amazon 「書店では置き場のない中途半端な内容で、海外文学評論の棚にあるかと思えば紀行文の棚に投げ入れられていたり、エッセイや詩集の棚の隅でに寄せられているかと思えば都市計画の棚に隠されていることもあるといっ…
世界は分けてもわからない (講談社現代新書)作者:福岡 伸一講談社Amazon 生物学者、福岡伸一の科学エッセイ。理系の新書にはちょっと不似合いなくらい、「本好き」な人っぽい言い回しが頻出するところが特徴的な一冊だった。福岡の文章は「いまいちこなれて…
雑誌『ファッション・ニュース』に掲載された、「ファッション・ショーに召還された音楽」を「ウォーキング・ミュージック」と仮称し、各メゾンの服とショーの演出との関係を分析しつつ、なぜ服飾には音楽が必要とされるのか?を探るアルケオロジックな。そ…
「王子さま」と「僕」との対話は、ほとんどが一方的な「王子さま」の独白のようでもあるけれど、たぶんそうではない。「王子さま」は、やはり、彼の話をきちんと聞いて、受け止めてくれる「大人」というものを必要としていたのではないか。自分の心の内をさ…
「星の王子さま」物語 (平凡社新書)作者:稲垣直樹平凡社Amazon 前回と前々回のエントリで取り上げた『星の王子さま』解説本はどちらも物足りなかったので、図書館からさらに5,6冊、同系統の本を借りて来て、ひと通り読んでみた(今年のGWは、ほとんどこれで…
星の王子さまとサン=テグジュペリ ---空と人を愛した作家のすべて河出書房新社Amazon ムックというか、編集本というか、まあそういった感じの一冊。「『星の王子さま』をめぐって」、「サン=テグジュペリ、その人となり」、「サン=テグジュペリの仕事」、…
なにしろ、『星の王子さま』という作品が感動的なのは、「王子さま」の最後の決断が、まさにこれしかない、と感じさせるような決断であるからなのだ。塚崎の意見からすれば、『星の王子さま』に書かれているのは、逃避や免罪符やノスタルジアの生暖かい感覚…
星の王子さま (新潮文庫)作者: サン=テグジュペリ,Antoine de Saint‐Exup´ery,河野万里子出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2006/03/28メディア: 文庫購入: 24人 クリック: 119回この商品を含むブログ (184件) を見る およそ10年ぶりに再読。世界的大ベストセ…
早稲田松竹にて。『日陽はしづかに発酵し…』と同様、アレクサンドル・ソクーロフ監督の作品だ。ドストエフスキー『罪と罰』を下敷きにした作品、と聞いたことがあったけれど、下敷きと言うよりは、インスピレーションの源とした、くらいの言いかたの方がしっ…
日陽はしづかに発酵し・・・ [DVD]出版社/メーカー: 紀伊國屋書店発売日: 2010/09/25メディア: DVD クリック: 1回この商品を含むブログ (1件) を見る 早稲田松竹にて。いやー、むちゃくちゃかっこいいタイトルだけれど、これは辛かった。とにかく眠い。明確…
ヒラリー・ハーンのバイオリンといえば、そのずば抜けたテクニックのもたらす安定感はもちろん、それに加えて「知的」で「冷静」で「意図が明確」な感じにすごく惹かれるのだけど、そういう演奏っていうのは、すごく「自然」に聴こえるものなんだなー、とい…
水色、黄色、ピンク、オレンジなどなど、パステルカラーが散りばめられた画面は見ているだけでわくわくするようなたのしさがあるし、登場人物たち(というか、カトリーヌ・ドヌーヴ)の60年代な感じのファッションもいちいちかわいい。そして、よくよく見て…
おもしろいと感じたのは、「サイコ」とぜんぜん無関係なプロットが進行していく序盤の感じ、人物の顔を長時間アップにし続けることでじりじりとした緊張感を高めていく手法、アンソニー・パーキンスがニカっとスマイルするタイミングの気持ち悪さ(ふつうは…
渋谷アップリンクにて。小さなアパートに暮らすソフィー(ミランダ・ジュライ)とジェイソン(ハミッシュ・リンクレイター)は35歳同士、同棲して4年のカップルである。ある日、ふたりは怪我を負った野良猫を見つけ、動物シェルターに運び込む。怪我が治った…
DVDで。パート2で描かれるのは、前編から10年後の物語である。泉を手に入れ、ついに「カーネーション王」となったウゴランは、ある日、泉で水浴びをする羊飼いの娘の姿を覗き見る。娘はジャンの娘、マノンだった。その美しさにひと目で恋の虜になってしまっ…
DVDで。おもしろかった!パート2の『泉のマノン』と合わせてひとつの物語として完結する形になっている作品の第一部。愛と宿命によって複雑に絡まりあった人物たちが織りなす神話的で悲劇的なプロットがあり、豪華俳優陣の名演があり、そのバックには印象派…
蜘蛛女のキス (集英社文庫)作者:マヌエル・プイグ集英社Amazon アルゼンチンの作家、マヌエル・プイグの有名作。ふたりの囚人がひとつ牢のなかに入れられている。ひとりは革命思想を抱いた政治犯の若者バレンティン、もうひとりは同性愛者の中年男、モリーナ…
狂人日記 他二篇 (岩波文庫 赤 605-1)作者: N.ゴーゴリ,横田瑞穂出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 1983/01/17メディア: 文庫購入: 1人 クリック: 22回この商品を含むブログ (35件) を見る 画家のピスカリョーフと中尉のピロゴーフが連れ立ってネフスキイ大…
映画監督としても有名な、ミランダ・ジュライのデビュー作。16の短編が収められているが、どれをとってもアイデアはキュートで文体はポップ、しかしそこで描かれる心情というのはひりひりとするような痛みや孤独にまつわる切実な感情である、というところで…
今作の基本的なトーンというのは、いままでの村上の小説を読んできた読者にとってはおなじみのものだ。主人公の多崎つくるは、(例によって)内向的で自己完結的、他者と深く関わることのない生活を送っており、生きることに対して積極的な関心を持っていな…
スペイン語圏文学の翻訳と言えばまずこの人の名前がおもい浮かぶ、木村榮一によるラテンアメリカ文学の入門書。いわゆる「ラテンアメリカ文学ブーム」前後の作家たち10人とその代表作とを取り上げながら、各作品の内容からラテンアメリカ文学全体の傾向/特徴…
ウィルコを見たのは2年前のフジ(FUJI ROCK FESTIVAL ’11 (7/31) - Show Your Hand!!)以来だったけど、いやー、これは文句なしに素晴らしかった!!もう今年はこれ以上のライブは見られないんじゃないか…ってくらい、最初から最後まで超ハイクオリティな…
アン・タイラーの作品で描かれるのは、ごく平凡でまじめで、ちょっぴり野暮ったくて、家族との関係において何らかのトラブルやフラストレーションを溜め込んでいる、そんな登場人物たちの人生の一シーンである。プロットには概して大きな起伏はなく、いわゆ…
ドストエフスキー全集〈第1巻〉 (1963年)作者: 小沼文彦出版社/メーカー: 筑摩書房発売日: 1963メディア: ?この商品を含むブログを見る ピョートル・イワーヌイッチとイワン・ペトローヴィッチなるふたりの男による、計9通の往復書簡からなる短編。ピョート…
米作家、ポール・セローの短編集。各短編はロンドン、コルシカ島、アフリカ、パリ、プエルト・リコなど、いずれもアメリカ人の主人公たちにとっての"異国"を舞台としている。"異国"のルールを理解/把握することのできない彼らは、漠然とした不安や寄る辺のな…