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本、映画、音楽の感想/レビューなど。

2013-01-01から1年間の記事一覧

『ラヴ・ストリームス』

ラヴ・ストリームス [DVD]出版社/メーカー: 20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン発売日: 2013/07/03メディア: DVDこの商品を含むブログ (4件) を見る 早稲田松竹にて。 結婚生活が破綻した後、破天荒な生活を送っていた弟(ジョン・カサ…

『こわれゆく女』

こわれゆく女 2014年HDリマスター版 [DVD]出版社/メーカー: キングレコード発売日: 2018/08/08メディア: DVDこの商品を含むブログを見る 早稲田松竹にて。子供たちを実家に預け、ひさしぶりに夫婦ふたりで夜を過ごす予定だったニック(ピーター・フォーク)…

『ソーラー』/イアン・マキューアン

ソーラー (新潮クレスト・ブックス)作者: イアンマキューアン,Ian McEwan,村松潔出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2011/08メディア: 単行本 クリック: 10回この商品を含むブログ (4件) を見る ちび、でぶ、はげでジャンクフードと女が大好き、ノーベル賞を受…

『ビッグデータの正体 情報の産業革命が世界のすべてを変える』/ビクター・マイヤー=ショーンベルガー、ケネス・クキエ(その3)

データを2次利用することができるビッグデータの時代には、リスクの性質がこれまでとはまるで異なるものになってしまう、ということは前回のノートで見た通りだ。 となると、リスク管理の方法としても、現在行われているような、「告知に基づく同意」――収集…

『ビッグデータの正体 情報の産業革命が世界のすべてを変える』/ビクター・マイヤー=ショーンベルガー、ケネス・クキエ(その2)

前回のノートでは、ビッグデータとはいかなるもので、それによってどのような変化がもたらされようとしているのか、そして、そこから利益を引き出そうとする際にはどんなことに留意すべきか、といったことをまとめてみた。では、ビッグデータの革命によって…

『ビッグデータの正体 情報の産業革命が世界のすべてを変える』/ビクター・マイヤー=ショーンベルガー、ケネス・クキエ(その1)

タイトル通り、「ビッグデータ」とはいったいいかなるもので、それがこの世界に引き起こす影響とはどのようなものであるのか、について書かれた一冊。「そもそもビッグデータとは何なのか」、「ビッグデータの時代におけるデータの価値と、それを利用したビ…

『ムーミン谷の彗星』/トーベ・ヤンソン

ムーミン谷の彗星 (ムーミン童話全集 1)作者: トーベ・ヤンソン,Tove Jansson,下村隆一出版社/メーカー: 講談社発売日: 1990/06/22メディア: 単行本購入: 3人 クリック: 42回この商品を含むブログ (28件) を見る 以前、堀江敏幸『回送電車』で、「ヤンソンの…

『英国王のスピーチ』

DVDで。ジョージ5世の息子、ヨーク公ことアルバート王子は吃音が原因の発音障害に苦しんでいた。何しろ王族の公務にスピーチは必須、スピーチの機会がある度に彼のコンプレックスは膨らんでいくばかりなのである。彼は、妻エリザベスの勧めに従って、言語障…

『バーデンハイム1939』/アハロン・アッペルフェルド

本作には、いわゆるホロコーストものによくある、強制収容所での生活やガス室送りの恐怖などに関する描写は一行も含まれていない。わかりやすく感傷的なエピソードはほとんど発生せず、ひたすら淡々とした叙述が続いていくために、いくら読み進めていっても…

『パシフィック・リム』

109シネマズ木場にて。IMAX3Dの吹き替え版で見た。前評判の通り、怪獣と巨大ロボットが戦う映画。本当にそれだけで、余計な要素は一切なし。主人公たちの繰り広げる人間ドラマは基本的に大味というか、あってもなくてもどうでもいいような感じで、とにかく怪…

『哲学の教科書』/中島義道

哲学の教科書 (講談社学術文庫)作者: 中島義道出版社/メーカー: 講談社発売日: 2001/04/10メディア: 文庫購入: 15人 クリック: 228回この商品を含むブログ (89件) を見る 「哲学には「教科書」などあるはずがないということを、これでもかこれでもかと語り続…

『子どもと話す 言葉ってなに?』/影浦峡

図書館で目にして何気なしに手に取った本だけれど、これはなかなかおもしろかった。タイトルの通り、著者と中学3年生の姪っ子とが、「そもそも、言葉とはいかなるものなのか」についてあれやこれやと対話をする、という体で書かれている一冊だ。 ぱっと見で…

『ソウル・マイニング 音楽的自伝』/ダニエル・ラノワ

カナダはケベック州出身のミュージシャン/プロデューサーである、ダニエル・ラノワの自伝。幼少期における音楽への目覚め、ショーバンドでのドサ回りの日々、兄のボブと設立した自前のレコーディングスタジオでエンジニアとしての素養を身につけるまで、など…

『高齢者医療と福祉』/岡本祐三

1996年、介護保険が導入される以前に書かれた一冊。単なる家族内の問題とかんがえられていた高齢者介護について、福祉として社会制度化する必要を説いている。 昭和30年台頃までは、高齢者は病気で倒れてから数週間のうちに亡くなるようなケースが多く、現在…

『超高齢社会の基礎知識』/鈴木隆雄

日本の高齢者医療・保険・福祉の現状に関する概観と、超高齢社会に挑むにあたっての制度面/意識面からの問題提起が行われている一冊。タイトルの通り、「基礎知識」として誰もが認識しておくべき内容がまとめられている。 広範なテーマが扱われているけれど…

『丕緒の鳥 十二国記』/小野不由美

なんと12年ぶりのシリーズ新刊。 本作は短編集で、「丕緒の鳥」,「落照の獄」,「青条の蘭」,「風信」の4編が収められている。各編に共通しているのは、荒廃した国における民の生活や小役人の苦悩みたいなものを切り取ったスケッチ的な内容で、王や麒麟など、…

『ソロモンの指環 動物行動学入門』/コンラート・ローレンツ

「刷りこみ」現象の発見で有名なオーストリアの動物行動学者、ローレンツによるエッセイ。「動物行動学入門」というだけあって、ジャンル的には科学エッセイという感じだけれど、難しいところはまったくない。ローレンツの筆致は動物に対する興味と愛情と尊…

『潜水服は蝶の夢を見る』/ジャン=ドミニック・ボービー

閉じ込め症候群(Locked-in syndrome (LIS))となり、左目以外はまったく動かすことのできない状態になってしまった男による、「左目のまばたき」によって書かれたエッセイ集。 閉じ込め症候群というのは、脳底動脈閉塞によって脳幹の特定部分に障害が発生す…

『ことばと思考』/今井むつみ

人間の言語と認識との間にある関係性についての最もよく知られた言説のひとつに、いわゆる「サビア=ウォーフ仮説」というものがある。これは、すごくざっくり言ってしまうと、「人間にとって、言語こそがその世界を分節し、整理し、秩序立てるものである。…

『わかりあえないことから コミュニケーション能力とは何か』/平田オリザ

わかりあえないことから──コミュニケーション能力とは何か (講談社現代新書)作者:平田 オリザ講談社Amazon 劇作家の平田オリザによるコミュニケーション論。タイトルの通り、他人同士というのは本質的に「わかりあえない」ものだけれど、しかしそれでも共通…

『ハムレット』/ウィリアム・シェイクスピア

本作の何よりの魅力は、やはりハムレットというキャラクターの「底の知れなさ」にあるだろう。テキストからは、ハムレットの心情の奥底の部分、ハムレットを突き動かす本当の動機、ハムレットに取り憑いた狂気の真正さ、などといったものを明確に推し量るこ…

『脳も体も冴えわたる 1分仮眠法』/坪田聡

脳も体も冴えわたる 1分仮眠法作者: 坪田聡出版社/メーカー: すばる舎発売日: 2012/06/19メディア: 単行本 クリック: 7回この商品を含むブログを見る Kindleにて。睡眠が不足しているときには、自分の満足のいくパフォーマンスを発揮することはできないもの…

『サマータイム』/佐藤多佳子

サマータイム (新潮文庫)作者: 佐藤多佳子出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2003/08/28メディア: 文庫購入: 7人 クリック: 35回この商品を含むブログ (99件) を見る いつもよりちょっと早起きした休みの日、薄曇りの空から落ちてくる太陽の光はやわらかく、風…

『考える練習』/保坂和志

保坂和志のインタビュー集。編集者との対談形式になってはいるものの、ほとんど保坂がひとりでしゃべり続けているので、まあインタビュー集という言い方で間違いはないんじゃないかとおもう。保坂の近頃の小説以外の作品はだいたいどれも同じような内容なの…

『モモ』/ミヒャエル・エンデ

モモ (岩波少年文庫(127))作者: ミヒャエル・エンデ,大島かおり出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 2005/06/16メディア: 新書購入: 41人 クリック: 434回この商品を含むブログ (299件) を見る 十数年ぶりに再読。全体的にバランスの取れた、かなりクオリティ…

『統計学が最強の学問である』/西内啓

統計学の技術によって集計されたデータを目にする機会の多い今日この頃だけれど、どういった統計に意味があって、どういった統計は無意味なのか、それを知っておくのは、情報を正しく読み解く上では大事なことだ。「コーヒーを毎日飲む人が健康である7つの理…

Kindle Paperwhiteのこと

Kindle Paperwhiteを買ってから半年ほど経ったので、ここに所感を書き残しておくことにする。Kindleの「いいところ」については、どこでも簡単に確認できるはずなので、このエントリでは、俺にとって「いまいちなところ」を中心に書いておこうとおもう。

『孤独な散歩者の夢想』/ジャン=ジャック・ルソー

あなたがいまひどく落ち込んだ気分、みじめでひとりぼっちな気分、もうどうにでもなれ、ってやぶれかぶれな気分になっているのならば、『孤独な散歩者の夢想』を手にとってみるといいかもしれない。この本を書いたルソーというじいさん(64~66歳)は、きっ…

『日はまた昇る』/アーネスト・ヘミングウェイ

ヘミングウェイの最初の長編。短いセンテンスを連ねた簡潔でリズミカルな文体、ぶっきらぼうな会話文、主人公の心情をあからさまにしないハードボイルドな態度、などといった彼の語りのスタイルは、今作の時点ですでに確立されていると言っていいだろう。 物…

『ヴェニスの商人』/ウィリアム・シェイクスピア

どうも最近だと、「シャイロックという人物の深みが…」とか、「シャイロックという人物の悲劇性が…」とか、「シャイロックという人物はユダヤ人のステレオタイプなどといったものではなく…」といったような、シャイロックの被抑圧っぷりに注目したシリアスめ…