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『サイコ』

サイコ (字幕版)

サイコ (字幕版)

DVDで。TSUTAYAのDVDコーナーをうろうろしていたときに、そういえば、俺、ヒッチコックってちゃんと見たことないな…とおもったので借りてきた。このブログでも既に何度か書いているように、俺は"観客の感情をコントロールしようとする欲求"が露骨な作品とか、ミステリ小説的な謎解きというのにあまり興味が持てない――大抵の場合、おもしろいとおもえない――ので、いわゆる「サスペンス映画」の良い観客ではないとおもわれるのだけど、さすがは古典と言われる作品、これはそれなりにたのしく見ることができた。

仕事で預かった40,000ドルを持ち逃げしたマリオン(ジャネット・リー)は車で逃走、不安な気持ちを抱きながら一日走り続けた後、田舎道の寂れたモーテルに宿泊する。モーテルのオーナー、ノーマン(アンソニー・パーキンス)は頼りなさげな青年で、病身の母親の世話をしながら働いてるんだ、でもぜんぜんお客が来なくって…などとマリオンに語る。ノーマンの素朴な雰囲気を前に、何とはなしに自分の心境を打ち明けるうち、やっぱり金の横領なんてやめておこう、明日は町に帰ろう、と心に決めるマリオンだったが…!

おもしろいと感じたのは、「サイコ」とぜんぜん無関係なプロットが進行していく序盤の感じ、人物の顔を長時間アップにし続けることでじりじりとした緊張感を高めていく手法、アンソニー・パーキンスがニカっとスマイルするタイミングの気持ち悪さ(ふつうはこのあたりで笑顔を見せるだろう、って瞬間の2.5秒くらい後から口元が笑いの形にゆっくりと変わり始めるのだけど、その"間"がすごく不気味)といったあたり。あと、有名なシャワールームでの殺人シーンのねちねちしたところ(1分くらいかけて、ヒロインが何度もナイフで刺されるのに、直接凶器が刺さる画面はひとつも出てこない)も、やっぱりすごかったな。

ただ、音楽がやたらと神経症的な不安を煽ろうとするところ、物語の最後に「サイコ」についてのだらだらとした説明がなされるところなんかは、退屈だったような気がする。まあ、この映画からの引用を、いろんな映画やTVや何やらで、いままで散々見聞きしてきているのに違いないのだから、新鮮さがないのは仕方のないことなのだろうけれど。