10月15日、クラブクアトロにて、13年ぶりに来日してくれたベス・オートンの単独公演。感想をひとことで言うなら、とにかく地味だが、そこがいい、という感じのライブだった。アルバムのサウンドにも派手なところなどまるでないベス・オートンだけれど、アコースティックギターのアルペジオをメインにした弾き語りで行われたライブの前半は、まさにブリティッシュ・フォークという言葉からイメージされる通りの、何というか、もう地味さの極みという印象で、素晴らしかった。
ライブ中盤からは、ジム・オルークがステージに登場――ローディみたいな感じに、ものすごくナチュラルに入ってきたものだから、しばらくジムだと気づかなかった――、ピアノとエレキギターで伴奏のサポートを行うように。これによって、曲に奥行きや浮遊感が付与され、とは言ってもベスの歌声や全体的な地味さを塗り替えてしまうことはなく、まあ何とも心地よい空間が生み出されていったのだった。
セットリストは新作『Sugaring Season』の曲が中心だったけれど、ジム・オルークがプロデュースした『Confort Of Strangers』からの曲もかなりたっぷりと演ってくれたし、アンコールでは1stの代表曲も聴かせてくれた。"She Cries Your Name"、"Galaxy Of Emptiness"なんかは、本当に気持ちよくて、ああ、このまま眠ってしまいたい…なんておもったり。
ベス・オートンは、いわゆる「上手い」、「主張の強い」タイプのシンガーではないとおもうけれど、その歌声には、心の無防備なところにそっと入り込んでくるような、ひそやかでしなやかな、どこかほっとさせられるような温かみがある。その温かみというのは、言われてみればなんとなく温かいような気がしなくもない…というくらいの微温ではあるのだけれど、それだけに、まったりとして、いくら聴いても飽きのこない、それでいてちょっぴり幻惑的なムードを作り出してくれるのだった。
以下、セットリスト。
Pieces Of Sky
Dawn Chorus
Magpie
Mystery
Touch Me With Your Love
Sweetest Decline
Something More Beautiful
Last Leaves Of Autumn
Worms
Countenance
Shopping Trolley
Shadow Of A Doubt
Safe In Your Arms
Rectify
Conceived
Poison Tree
Call Me The Breeze
(Encore)
She Cries Your Name
Pass In Time
Someone's Daughter
Galaxy Of Emptiness
- アーティスト: Beth Orton
- 出版社/メーカー: Anti
- 発売日: 2012/10/02
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