Show Your Hand!!

本、映画、音楽の感想/レビューなど。

『遅読家のための読書術ーー情報洪水でも疲れない「フロー・リーディング」の習慣』/印南敦史

遅読家のための読書術――情報洪水でも疲れない「フロー・リーディング」の習慣

遅読家のための読書術――情報洪水でも疲れない「フロー・リーディング」の習慣

ぐずぐず本を読んでは、結局ほとんど忘れてしまう…というのを繰り返す「遅読家」から抜け出し、「週6冊、月25冊、年間300冊の多読生活」を目標に、ビジネス書や新書を多読していこう、という一冊。著者の印南曰く、ビジネス書や新書といった実用書は、「1日1冊読み切る」のが理想的とのこと。速く読んでもゆっくり読んでも、頭に入らないときは入らないものだし、忘れるときは忘れるものだ。だったら、速く読んだほうがいいよね!という主張なわけだけれど、これはなかなか実感に即しており、納得感がある。「10日間のダラダラ読みより、60分のパラパラ読み」という言い方もされていて、なるほどねーなんておもえたりもする。

また、本読み後のアウトプットについてもかなりきっぱりと割り切っていて、線を引いたり書き込みしたりするのは無駄――どうせ後で本を開くことなどないし、線を引いたから覚えられるというわけでもない。「われわれのような凡人が本の価値をわがものにしたいのなら、まずは「一箇所にまとめて書き出す」しかない」――と言い切ってしまっている。感想やレビューも1行だけにとどめておくのがいいだろう、とのことで、これまた潔い。

本(とくにビジネス書や新書)を読んでアウトプットすることの目的というのは、書くこと、まとめること自体にあるわけではない。そうではなくて、読んで学んだ内容を実生活で活用することこそが目的なのだから、とにかくそこだけにフォーカスして効率よくやろう、というのが本書のかんがえ方というわけだ。速く読むことも、短くまとめることも、どちらも密度を重視し、全体観を得ることに注力する、それによって振り返りに役立てる、という趣旨であるわけで、筋が通っている。

本を意識的に速く読んでいると、自分はもしかしたら重要な何かを読み飛ばしてしまっているんじゃないか…というような不安というか罪悪感のようなものを感じることがあるけれど、本書くらいおもい切った言い方をしてもらえると、安心するというか、どこかほっとするようなところがあるな、とおもったのだった。