
- 作者: 本多静六
- 出版社/メーカー: 実業之日本社
- 発売日: 2013/12/20
- メディア: Kindle版
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そんな本多の人生観は、「人生即努力、努力即幸福」というもの。これもなんというかど直球という感じで、何の衒いもないところがすごい。そしてまた、「幸福」についてはこんな風に書いてもいる。
すべての人がおのおのその職業、その仕事に、全身全力を打ち込んでかかり、日々のつとめが面白くてたまらぬというところまでくれば、それが立派な職業の道楽化である。いわゆる三昧境である。私の体験によれば前にもしばしば述べたように、人生の最大幸福は職業の道楽化にある。富も、名誉も、美衣美食も、職業道楽の愉快さには比すべくもない。
仕事を道楽化し、「幸福」を得るために必要なのも、要は"面白くなるまで全力で努力"、ということで、筋道が通っている。この世のなかには、貯金や努力をはじめ、"基本的に誰にでもできる成功法ではあるけれど、まず大抵の人にはできていないこと"というのがたくさんあるけれど、そんな「一般解」をひたすら愚直なまでに実行し、継続し続けることで結果を出してきたのが本多だと言えるだろう。
そういうわけで、全体的にどストレートすぎて眩しいくらいの一冊だった。毎日1ページずつ原稿を書き続ける習慣があったため、370冊以上の著作がある(!)とか、学者でありながら、現在価値で言うところの100億円クラスの資産を作り、後年それをすべて寄付してしまう(!!)などといったすさまじい所業をやってのけた人だけのことはある。本書には、本当に特別なこと、特殊なことは何も書かれていないのだけれど、その言葉の安定感ということでいえば、たとえば邱永漢と比べても、もう賢者のランクが違う、という感じがしたのだった。