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『仕事は楽しいかね?』/デイル・ドーテン

「頭がいい人がするいちばん愚かな質問は、『あなたは5年後、どんな地位についていたいですか?』だ」という、自己啓発系ビジネス本。一般的に、「1年後、5年後といった長期的な目標設定をする」、「生きる姿勢を変え、ビジョンを持ち、それに向かって計画的に日々を過ごしていく」といったことは、大きな成果を上げるためにはほとんど必須のことであるかのようにかんがえられているけれど――X年後にどういう自分になっていたいか?っていうのは、新卒で入った会社で、俺もよく聞かれた質問であるような気がする――本書によれば、それで偉大な発明や革新を生み出せるはずはない。なぜか?答えは簡単で、現実というのは、計画のように秩序だって整然としたものではあり得ないからだ。

ビジネスマンの主人公に、成功を収めた起業家である老人のマックスはこんなことを言う。

「人生は進化だ。そして進化の素晴らしいところは、最終的にどこに行き着くか、まったくわからないところなんだ」
「きみは、最初に陸にあがった魚は長期にわたる目標を持っていたと思うかね?」

僕がいままでに掲げた目標がひとつだけある。/ ”明日は今日と違う自分になる”だよ。

ビジョンや目標や計画の設定ではなく、単に「今日と違う自分になる」ことこそが大事だというのだ。マックスは、「目標を設定すると、自己管理ができているような気がする」けれど、そんなことよりもやるべきなのは、「遊び感覚でいろいろやって、成り行きを見守る」ことだとも言う。そしてその際、理屈っぽくなったり、他人の右に倣えをしないことが肝要だという。どういうことか?

誰もがみな、「平均より上」になりたいとおもい、そのように努力している。たとえば、サービスの品質を改善してみたり、製品の故障を減らしてみたり、他人の成功事例を研究してみたり、模倣してみたりする。それらの行為はたしかにそれなりの効果をもたらすだろう。でもそれは、他のみんなも同じようにやっていることなのだ。他人と同じようなレベルの努力や改善では、当然、他人よりも抜きん出ることなどできはしない。平均よりちょっと上を目指していても、行き着くところはやはり平均、ということになってしまう。

だからこそ、成功するためにはマジック、まぐれ当たりが必要だ、とマックスは断言する。アイデアが成功するか失敗するかは「コイン投げ」でまぐれ当たりするようなものなのだから、必要なのは才能や勤勉さなどではなく、「コイン投げ」の達人であることだ、というのだ。「コイン投げ」すること、すなわち、理屈や他人のやり方を気にせずに新しいアイデアを試すこととは、勇気を持って変化すること、「違う自分になる」ことでもある。

「コイン投げ」はまずもって失敗することが前提ではあるけれど、おもいもかけないところで成功することがある。言い換えれば、どんなことが、どんなところで成功するのかは誰にもわからない。世のなかの偉大な仕事や発明の多くが、偶然の産物であることを鑑みてみれば明らかなように(売れ残りのテント用帆布をオーバーオールに仕立てたリーバイス、頭痛薬のシロップを水で割ってみて生まれたコカ・コーラ…)、成功はそのときの運に左右されるものでしかなく、誰にも予測しきれないものなのだ。

マックスは、「試してみることに失敗はない」、そして、「必要は発明の母かもしれないが、偶然は発明の父なんだ」と繰り返し述べる。遊び感覚で試し続けること、何度でも「コイン投げ」しようとし続けることこそが、毎日「今日と違う自分になる」ための鍵であり、まぐれ当たりを起こすための必要条件というわけだ。

「僕のアドバイスに従って、 模倣の代わりに革新を心がけ、昨日と違う自分になろうと日々努力するなら、きみは可能性を高めることができる。 もう、十回中九回も失敗するなんてことはない……」
「きっと、十回中八回で済むよ」

仕事は楽しいかね? (きこ書房)

仕事は楽しいかね? (きこ書房)