新・メシの食える経済学?お金に恵まれる人生への手引き? (光文社知恵の森文庫)
- 作者: 邱永漢
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2016/10/28
- メディア: Kindle版
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「子供にはまとまったお金を渡した方が計画性が育つ」とか、「贈り物には二流の時計より最高級のスリッパを」とか、「お金の心配より定年後の仕事の心配を先にしろ」とか、「サラリーマンが中金持ちになるには収入の多角化が必須」とか「世界の文化はみんな成金が作った」とか、なるほどねーって納得できるような内容はそれなりにあったものの、全体的には論としては薄っぺらくて、目から鱗というほどのものではなかった。(邱の個人的な体験に基づいた見解がつらつらと述べられているだけ、という印象が強かった。)
感心したのは、「倒産に直面したら身内や親友のところにはお金を借りに行かないこと」と書いているところ。まあお金の貸し借りは人間関係に響くからね…なんておもって読んでいると、そういうことではなく、「借りたお金はたちまち消えうせて、倒産したあとの再起のときには何の役にもたたない」からなのだという。
たいていの人は、お金を借りに来るときに本当のことを告げない。本当のことを言うと、お金を貸してもらえないと思って、それだけあれば急場をしのげるような言い方をする。ところが、実際は火の車で、私が貸したお金くらいでは焼け石にみずだから、あっという間に蒸発してやがて不渡りを出して倒産する。すろと債権者が寄ってたかって身ぐるみ剥いでいくから、子供の将来の学資のために積み立てた保険証書まで持っていかれるようなことが起こる。
そうなることが初めっからわかっているのなら、倒産する前にお金を貸すより、倒産して誰も相手にしてくれなくなったときに、お金を渡してあげた方がいい。どうせ返してもらえないお金だから、相手が路頭に迷っているときに渡した方がいいにきまっているのである。
邱永漢自身が「そういう失敗を何度も繰り返し経験してきた」から、そうかんがえるようになったのだということだが、このあたり、さすがお金の神様と呼ばれるだけあるというか、多くの経験を積み重ねてきた長老ならではのリアリティ、重みがある。