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『ピクシーズ/ラウド・クァイエット・ラウド』

ピクシーズ/ラウド・クァイエット・ラウド [DVD]

ピクシーズ/ラウド・クァイエット・ラウド [DVD]

吉祥寺バウスシアターにて。2004年、およそ10年ぶりになるpixies再結成の決定からツアーの模様までを追ったドキュメンタリー。解散後、各メンバーはどこでどんな風に過ごしてきたのか?いろいろあったはずのメンバー間の確執は解消されたのか?そもそもなぜ再結成することになったのか?…といったところが通常ならば濃密なドラマを生み出していくところだろうけど、ここにはドラマ的なるものはほとんど存在しない。少なくとも、ほとんど存在しないように見える。まあ、ものすごく淡々としたドキュメンタリーだと言っていいだろう。

というのも、この4人はなにしろしゃべらない。とくに、大事なことについては何もしゃべらないのだ。それはあたかも、会話での意思疎通というやつをいちばん根っこの部分で諦めてしまっているかのよう。とにかくみんな、4人が4人とも、相手の懐に入ることを恐れ、遠慮がちにコミュニケーションを取っているように見える。キム・ディールが双子の姉のケリーに「あんたたちって最低のコミュニケータだよね」なんて言われるシーンがあるけれど、これでよく再結成してやっていけてるよな…っておもわず感心してしまうくらいだ。

けれど、ひとたびステージに上がってしまえば、目の前には熱狂的なオーディエンスがぎう詰めになっているわけで、彼らはそれに煽られるかのように、その手足を、喉を、全身を使って音楽を生み出していく。それはまぎれもなく、あのピクシーズの音、ひりひりとしてのどごしの悪い、けれど無類にポップな、あの音に他ならない。バンドの再結成というやつ全般に対して俺はあまり好感情を抱いてはいないのだけど、この映画に映し出されているのは、観客が求めるのと同じくらい強く、ピクシーズというバンドであることを求めている4人の姿であるようにも感じられて、そんなところにちょっとぐっときてしまった。連帯感とか一体感とか以心伝心とか、そんな言葉から遠く離れたところにいるような4人の中年が、ステージの上でだけは10年前と同様に、ひとつのバンドとして自由にロックできる。そういうのって、とても幸福なことなんじゃないだろうか。