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『ロスト・イン・ラ・マンチャ』

ロスト・イン・ラ・マンチャ [DVD]

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早稲田松竹にて。テリー・ギリアムが10年かけて構想を練り、50億円をかけたという超大作、『ドン・キホーテを殺した男』製作の失敗を描いたドキュメンタリー。内容もなかなかよかったのだけど、まずはとにかく、失敗でも何でも映画にして費用をちょっとでも回収してやろう、って悪あがきする姿勢が最高だよね!と言いたい。作られなかった作品のドキュメンタリーなのにちょっと感動的、ってのはふしぎな感じもするけれど、最近ではマイケルの『This Is It』もあったことだし、未完であることの、志半ばの挫折の美しさというのはわかりやすい感動の一パターンとしてたしかにあるのだとおもう。

作品が完成できなかった、っていう結末をあらかじめわかった上で見ているからなのかもしれないけど、プロジェクト初動の段階からして"ダメそうな空気"が漂っていたのはすごく可笑しかったし、そこでどうにか状況を打開しようと奮闘する監督やスタッフの姿は切なくもあった。最終的には、ドン・キホーテの映画を作ろうと野心に燃える監督その人こそがドン・キホーテのような状況に陥っていってしまう…、っていうなんともよくできた物語にもなっていて、これは単純にドラマとして見ても結構おもしろい。まあ、これは他人事だとおもっているから言えることで、もし自分の携わっているプロジェクトがこんなだったらとおもうと、胃がきりきりと痛くなってきそうではあるけれど…。

それにしても、この映画でのテリー・ギリアムの情熱のほとばしりっぷりを見たら、『ドン・キホーテを殺した男』を見たくならない人はいないんじゃないかとおもってしまう。いろんなアイデアを試したくて、形にしたくてたまらない、って監督のようすは、はっきり言ってかなりキュートだ。テリー・ギリアムのドン・キホーテ映画、いつか完成しますように…!と俺も一ファンとして願わないではいられない。