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『ダージリン急行』

ダージリン急行 (字幕版)
恵比寿ガーデンシネマにて。とってもゆるい映画。こういうのすきだなー。個性の強い3人兄弟(アメリカ人・金持ち)が、“スピリチュアル・ジャーニー”と称してインドを旅して回る。

やっぱり、ウェス・アンダーソン監督の作品でおもしろいのは、ゆるい空気感だとおもう。まず会話がゆるくておもしろいし、今作では物語の展開そのものもかなりゆるくて、力が抜けてしまう。家族もの的なモチーフが一応中心にはあるんだけど、でもそこはあまり掘り下げられていなくて、最初から最後まで、とにかくゆるい感じが映画全体を覆っている。

その辺り、テーマの描き方が浅い、なんて批判されそうな感じもするのだけど、そこはこの映画の(監督の、でもある)欠点ではなくて、むしろ美点であるように俺はおもう。『ザ・ロイヤル・テネンバウムズ』にしろ、『ライフ・アクアティック』にしろ、物語そのものというよりはその描かれ方がおもしろかった作品であって、今作でもそれは変わらない、ってことだ。それに、“一見深そうなモチーフを、感傷的になりすぎず、さらりと描く”って、結構むずかしいことのはず。ウェス・アンダーソンの映画がいいのは、下手に深入りしすぎず、センスのよさで勝負しているところが大きいだろう。

もっとも、掘り下げた感がないわけだから、作品はわりとうすっぺらいというか、ちゃらちゃらした印象にもなる。たとえば舞台はインドなのだけど、異文化としてのインド、なんてものはほとんど描かれない。とにかくコメディ的な要素、あとは小物や音楽の使い方のおもしろさで映画を引っ張っていく。

なんていうのかな、そのうすっぺらな感じがいい。ちらちらと深さを感じさせつつも、基本的にはへらへらわらってやり過ごす。ま、みんなこんな感じで生きてんじゃん、って言うような、その気楽な感じ。でも、真剣さが足りない、っていうのとはちょっと違う、そのバランスがすきだ。90分くらいに短くまとめられていたのもよかった。