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本、映画、音楽の感想など。

『マイ・ブルーベリー・ナイツ』


渋東シネタワーにて。雰囲気重視の、おしゃれ感あふれる映画。映し出される映像、流れる音楽によって描かれるイメージはおしなべて美しく、物語性よりはセンスの方が前面に押し出されている。キャストは豪華だけど、脚本が薄っぺらなために、キャラクターとしてはあまり生き生きとしていないように感じられた。

主人公のノラ・ジョーンズが旅先でいろんな人と出会い、その人々の物語を知っていくなかで成長していく、っていうロードムービーちっくな構成になっているのだけど、そのいろんな人々の物語がちょっとありきたりに過ぎて。人物の描き方が平板だから、いまいち切実さを感じられない。安易に“死”とかの要素を入れてくるところも、正直いかがなものかなー、っておもった。

とはいえ、こういう映画では全体的な雰囲気が何より大切なのであって、そういう部分では抜かりがなかった。ニューヨークの描き方なんかはちょっと独特で、鼻につくところもなくはないけど、幻想的な映像がうまい具合におしゃれ感を演出している。ブルーベリー・パイやら鍵やら手紙やら、モチーフひとつひとつは真新しくないけど、きちんと物語に溶け込んでいて、好印象だった。劇中の会話は、スタイリッシュ、なんて言われそうな感じで、“都会的な短編小説”とかに出てきそうな、ちょっとむずがゆいようなところがたのしい。

野心的な作品でもないし、深みもなにもない、っておもうんだけど、意外とこういうのも悪くない気がする。いや、わりとすきかも。薄っぺらで、大して盛り上がることもないからこそ、心地よく見ていられる、っていうか…。映画にはいろんなものを求めていいはずだし。