- 発売日: 2015/11/05
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1920年代のL.A.で起きた事件をもとにした、公権力とある個人との戦いの物語、っていうのをベースにしつつも、そこにスリリングな猟奇的サスペンスの要素を流し込んでくるストーリーの展開っぷりは本当に巧み。基本的にはシンプルな人間ドラマを描いているわけなんだけど、観客を物語の流れに引き込む演出のメリハリっぷりとか、エンタテインメント的な牽引力の強さがすごくて、こういうのを円熟っていうんだろうなー、なんておもわされたりした。ただ、警察組織が一市民に対して行使する暴力、システムの暴走、みたいなモチーフの描き方はかなりベタベタで、とくに新鮮味みたいなものはなかった気がする。それはもちろん、そういうシステムが個人に対して暴力を振るい得る、ということの普遍性を強調するためなのだろうけど、正直あまりおもしろいとはおもえなかった。
それよりずっとよかったのは、登場人物たちがそれぞれに救いを求めていかに行動するのか、っていう描写のところ。あまりにも深く打ちのめされ、傷を負うことになった人は、いかにして立ち上がり(あるいは立ち上がれないまま)、その後の人生を生きていくのか?各個人によって全く異なる、そのそれぞれの切実さをていねいに描き出しているところがすきだった。子供を奪われた母親、殺人者、恐ろしい犯罪に加担した少年、それぞれが何らかの救済を求めて必死でもがき続けるそのさまを、少し突き放した目線で、でもかなり生々しく捉えようとするその感じはすごくイーストウッドっぽい感じがした。
どうもすきな映画とはいい難いんだけど、うまいなー、って感心させられてしまう。イーストウッドの最近の作品はどれもこんな感じだ。なんていうか、映画全体から感じられる、観客の感情をコントロールしたい、っていう欲求の強烈さが苦手、っていうか、それが自分にいまいちしっくりこないのかな…なんておもう。まあ、こうやっていろいろかんがえさせられるわけで、いい映画ではあるんだろうけど…。