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『野性の呼び声』/ジャック・ロンドン

野性の呼び声 (光文社古典新訳文庫)

野性の呼び声 (光文社古典新訳文庫)

ジョン・クラカワーの『荒野へ』で描かれているアラスカで餓死した青年、クリス・マッカンドレスは、幼いころからジャック・ロンドンの著作の愛読者だったという。そっかー、じゃあ、とおもってこの本を買ってきた。

ひとことでいって、動物ものの小説だ。飼い犬だったバックは、売りとばされ、アラスカで橇犬として生きていくことになる。それまで経験したことなどなかった厳しい環境をどうにかサバイバルしていくなか、バックのなかに眠っていた野性が目覚め、血がたぎりだすのだった…!という話。たぶん、むかし読んだロンドンのもうひとつの有名な動物もの小説、「白い牙」も似たような感じだったとおもう。

とにかく、オトコ臭い雰囲気が全編を貫いている。たとえば各章のタイトルからして、もう、むやみやたらとワイルドなのだ。「原初の地へ」「棍棒と牙の掟」「太古の野獣の血が支配する」「覇者となったもの」…わらっちゃうくらいにマッチョだけど、主人公が犬なのでなんだか許せるような気もする。だって、アラスカの荒野を駆ける犬なんて、すっげーワイルドに決まってるじゃんね!

そんな、ワイルドさを醸し出している一節を引用。

ここには、陽光を一身に浴びての怠惰な生活、日がな一日ぶらぶらして、退屈に暮らすというだけの生活は存在しなかった。平和もなく、安らぎもなく、それどころか、一瞬の安全すらもない。すべてが混乱と闘争とのさなかにあり、命も、身の安全も、時々刻々におびやかされている。つねに警戒を怠らずにいること、これが生きるのには喫緊の要事なのだ。(p.32)

マッカンドレス君も、なんかこういうワイルドな生に憧れてたんだろうなー、きっと。俺は、このマッチョな感じはいまいち好みじゃないんだけど、でもそういうのに惹かれるきもち自体はよくわかる。いくら憧れたからって、じっさいに全てを捨ててアラスカまで行くなんて、それはまあ、できないけど。俺も、大学とか就活とかその他いろんなしがらみを投げ捨ててイントゥザワイルドしてみたいよ。とかちょっとおもったりした。ほんのちょっとだけ。