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本、映画、音楽の感想/レビューなど。

『一流の頭脳』/アンダース・ハンセン

一流の頭脳を手に入れるためにはどうすればいいか…それには運動だ!ということを、じつにさまざまなバリエーションでもって説いている一冊。ストレス、集中力、記憶力、創造性、学力、健康etc.と章立てこそ分かれているけれど、それらすべてにプラスの影響が…

『闘争領域の拡大』/ミシェル・ウエルベック

ウエルベックの小説第一作。この自由資本主義社会において、人間の闘争の領域は、経済領域のみにとどまらず、性的領域においてまで拡大している。経済の自由化を止めることができないのと同様、セックスの自由化もやはり止めることはできず、そこには必然的…

『怒りの葡萄』/ジョン・スタインベック

1930年代、折からの大恐慌に加え、厳しい日照りと大砂嵐が続いたことで、アメリカ中西部の小作農たちの多くは土地を失った。銀行と大地主たちは彼らの土地をトラクターで耕し、資本主義の名の下、合理化を進めていく。土地を追い出され、流浪の民となった彼…

『ホームシック 生活(2~3人分)』/ECD、植本一子

レーベルとの契約打ち切り、アル中、閉鎖病棟入院、鬱、家は猫のマーキングで荒れ放題、ってまさしく無頼の日々を送っていた40代後半のECDが、24歳年下のカメラマン、植本一子と出会い、付き合うようになって、同棲、妊娠、結婚、出産といったイベントを迎え…

『資本主義の終焉と歴史の危機』/水野和夫

まず水野は、タイトルの通り、資本主義システムの行き詰まりはもう目前にまで迫ってきている、と述べる。その理由として上げられるのが、先進各国で続いている超低金利状態だ。たとえば日本では、2.0%以下の超低金利がもう20年近く続いているわけだけれど、…

『21世紀の資本』/トマ・ピケティ(その3)

資本に対する累進課税を実施するとしても、それは全世界的に行われなければならない。タックスヘイブンというやつがあるのだから、各国がばらばらに課税を行ったところで、資本は別の国に逃げていくだけだからだ。そしてもちろん、課税実施の際には、全世界…

『21世紀の資本』/トマ・ピケティ(その2)

前回まとめたような分析をもとに、ピケティは、なぜ格差が拡大していくのか、というメカニズムを説明するための理論を提示してみせる。先に書いたとおり、統計は、資本蓄積の速度は総所得の伸び率よりも大きいということを示しているわけだけれど、これをシ…

『21世紀の資本』/トマ・ピケティ(その1)

世間の多くの人と同じく、俺も2015年の正月休みを利用して『21世紀の資本』を読んだのだった(けれど、感想をまとめたりブログを更新したりするのが億劫で、気がつけば読み終えてから3年半も経ってしまっていた…)。読み終わっておもったのは、何しろボリュ…

『かもめ』/アントン・パーヴロヴィチ・チェーホフ

ニーナとトレープレフの立場というのは、物語の開始時点ではほぼ同等のものだと言っていいだろう。彼らはふたりとも、何も持っておらず、ただ淡い希望だけを胸に、あいまいな夢を見ている若者にしか過ぎない。そんなところに、トレープレフにとっての乗り越…

『三人姉妹』/アントン・パーヴロヴィチ・チェーホフ

『桜の園』で競売の場面が描かれないのと同様に、『三人姉妹』においても、ドラマを推進していく事件そのものが舞台上で描かれることはほとんどない。第三幕の火事や、第四幕のトゥーゼンバフの死は、あくまでも背景に位置するもので、人物たちはその状況に…

『桜の園』/アントン・パーヴロヴィチ・チェーホフ

本作でまずおもしろいのは、誰も本気で「桜の園」を守りたい、とはおもっていなさそうなところだ。いや、正確には、「桜の園」を守るための具体的な行動を誰ひとり取ろうとしない、というところだ。ラネーフスカヤも、その兄ガーエフも、娘のワーニカとアー…

『オネーギン』/アレクサンドル・セルゲーヴィチ・プーシキン

本作の主人公、エヴゲーニイ・オネーギンは、19世紀ロシア文学によく登場する「余計者」の原型、と言われているけれど、その造形はいまでもじゅうぶんに興味深いものだ。知識だけはあるが、それを生かすための興味や活力、指針といったものを持っていないが…

『ひとさらい』/ジュール・シュペルヴィエル

シュペルヴィエルの長編。以前に読んだ『海に住む少女』が完璧に素晴らしい作品だったので、それと比べてしまうとやはりどうしても落ちる、という印象はあった。でも、これはこれでなかなかおもしろい小説だ。 物語の主人公は、ビグア大佐という男。父性溢れ…

『女のいない男たち』/村上春樹

村上春樹の2014年作。短編集としては、前作『東京奇譚集』から9年ぶりの新作ということで期待して読んだのだけれど、これは素晴らしかった。『1Q84』あたりから、村上の作品の雰囲気はそれまでよりぐっと静謐なものになっているように感じられていたのだけれ…

『ウルフ・オブ・ウォールストリート』

ずいぶん以前に、早稲田松竹にて。ディカプリオのドヤ顔がたくさん見られて――しかしこの人は本当にいろいろなドヤ顔を持っている!――それだけでもおもしろい、マーティン・スコセッシ作のブラックコメディ。これもまた実話をもとにした作品なのだけれど、『…