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『アルケミスト』/パウロ・コエーリョ

パウロ・コエーリョ『アルケミスト』を読んだ。小説というより、ほとんど寓話かな。構築された物語というより、ただ、話がある、という感じだ。全体的に箴言みたいなのが多くて、ちょっと教条主義じみたところもあるけれど、読者の感情を支配したい、というような欲求はあまり感じられないから、そういやな感じはしない。

物語を通して語られるのは、求めるものには、道は開かれている、っていうオプティミズム、ポジティブ感である。「何をしていようとも、この地上のすべての人は、世界の歴史の中で中心的な役割を演じている。そして、普通はそれを知らないのだ」とかね。

メッカにあこがれつつも、旅立つことができないでいるクリスタル商人がいい。

「メッカのことを思うことが、わしを生きながらえさせてくれるからさ、そのおかげでわしは、まったく同じ毎日をくり返していられるのだよ。/わしはな、砂漠を横切ってあの聖なる石の広場について、その石にさわる前に七回もそのまわりをぐるぐるとまわるようすを、もう千回も想像したよ。/でも実現したら、それが自分をがっかりさせるんじゃないかと心配なんだ。だから、わしは夢を見ている方が好きなのさ」

夢を追いかけまくり、さいごには成功する、っていういかにも主人公然とした(主人公の)少年以外の、こういう平凡なキャラクターの生き方にも、なんとなくあたたかな視線が注がれているところがよかった。

ところで、パウロ・コエーリョのオフィシャルサイトがすごい。やたらと写真がいっぱいあって、なんと彼の壁紙までダウンロードできてしまうという充実っぷり。おっさん(コエーリョ氏)が建物のまえで微笑んでいたり、めがねをかけてパソコンにむかっていたり、夕日をバックに弓を構えていたりする。ファンクラブもあるみたい。本国とかでは、もうタレント的な人気だったりするんだろうか…。なんか、世界はひろいですね、つくづく。