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『ぼくたちに、もうモノは必要ない。』/佐々木典士

ぼくたちに、もうモノは必要ない。 - 断捨離からミニマリストへ -

ぼくたちに、もうモノは必要ない。 - 断捨離からミニマリストへ -

断捨離とかミニマリストとかの本はいままでに何冊か読んだことがあったけれど、この本が俺にはいちばん効いた。効いたというのは、具体的にモノを減らすための行動を始められた、ということだ。ウチには2m超えの本棚が3つもあるくらいなので、どれだけミニマリズムからかけ離れた暮らしをしているかは推して知るべし、という感じではあるのだけれど、本書にはかなり心をつかまれたし、おかげで早速テレビや服や本や楽器やその他もろもろをかなりの勢いで処分することができたのは間違いない。(もちろん、まだまだ道半ばではあるのだけれど…。)

本書で佐々木が主張していることのひとつに、「モノが多すぎる人は、持っているモノを自分の価値を伝える手段だと考えている」というものがある。これはたとえば、何年経っても読みきれないほど本棚に詰め込まれた本たちは、”自分は知的な人間だ”というアピールのためのものではないか、あるいは、決して着回せないほどクローゼットいっぱいになった洋服たちは、”自分はおしゃれなタイプである”というアピールのためのものではないか…というようなことだ。モノが多すぎる人は、「持っているモノの価値=自分の価値」とどこかでかんがえてしまっているがゆえに、じっさいには使うことができない量のモノを持ち続けているわけで、これはもはや「モノに支配されている状態」だ、と佐々木は言う。

どうしてそんなことが起こってしまうのかというと、自分の内面というのは、外見のように簡単には他人に伝えることができないからだ。だから、人はついついモノに頼って、モノに自分の内面を表現してもらおうとしてしまう。"こんなモノを持っている自分は、ご覧の通り、XXな人間なんだ、わかるよね?"という風に。そして、現代の消費社会はそんな人間の欲望をドライブするために、あんなモノやこんなモノであなたの内面を表現しましょう!これを持っていないあなたは、他の人からこんなふうに見られていますよ!などと煽り続けるものだから、人はますますモノを欲するようになっていく。

そうやってモノで自分を表現することを続けていくと、次第にモノそのものが自分の価値であるかのような気さえしてくる。でも、もちろんモノは自分ではない。どんなに新しくすばらしいモノを持っていたとしても、どんなにたくさん手に入れても、人間はすぐにその存在に慣れ、それがあるということだけでは幸せを感じられなくなってしまう。こうして手元のモノに満足できなくなった人は、さらに別のモノを欲するようになり、次第にモノばかりが増えていってしまうことになるわけだ。

まあそういうわけで、多すぎるモノを捨て、手放していけば、その分だけ幸せを感じやすくなる!というのが佐々木の主張ということになる。現状が「モノに支配されている状態」なのだから、そのモノを手放すことはモノの支配から逃れることになるよね、ということだ。

個人的には、一息にミニマリストにまでなれる気はしないけれど、毎日少しずつでも身軽になっていくためのかんがえ方を得られたのはよかった。本当に自分が必要なものだけを手元に置いて生活すればいい、って誰しも知ってはいるつもりのことだけれど、それがなかなかできないのがいまの世の中だろう。本書では、必要でないモノを捨てるための方法論やかんがえ方――モノやお金にとらわれないこと、他人の目線や他人の価値観にとらわれないこと、それらを手放してしまうことこそが幸福感につながっていくということ――が何度も繰り返し語られており、よし、まずは捨てよう!という気分にさせてくれる。