
- 作者: 外山滋比古
- 出版社/メーカー: さくら舎
- 発売日: 2015/10/02
- メディア: Kindle版
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思考とは、それはなぜか、なぜそうなのか、という疑問をもって、それを自分の力でとこうとすることをいう。/それに対して、『思う』とは自発的ではなく、外からきた刺激に対して心理的に反応することであって、何かすでに存在しているものを受けて『思う』。『感じる』も同じことである。
自分の経験ではない知識や間接的な情報をたくさん持っていたところで役に立たない、むしろそんなものを身につけすぎていると思考力が低下する、ということだが、そのかんがえに則ってか、本書でも一貫して、外山自身の経験に基づいた主張が繰り広げられていると言っていい。
もっとも、タイトルに「思考力」とつけているわりに、いわゆる思考力の話は序盤だけで、途中からは生活スタイルやら子育てやら自分の経歴やらをおもいつくままに語っていくようなスタイルになっており、本全体としてはかなり散漫なものになってしまっている。まあ、これはこれで外山というパーソナリティから生み出された「思考」とその源泉たる経験についてのエピソード群なのであって、こういう人生経験があるからこそこういう思考力が培われた、ということが読者にもわかるようになっている…ということはできるのかもしれない。
こんな風に、本を読んでささやかな感想メモを書き残すという作業も、外山からすれば、「外からきた刺激に対して心理的に反応」しているだけということになるのだろう。思考するというのは難しい。ショーペンハウアーも、『読書について』で、「読書するとは、自分でものを考えずに、代わりに他人に考えてもらうことだ。他人の心の運びをなぞっているだけだ」と書いていたけれど、外山が言っているのも同じことだろう。俺は思考できているんだろうか?ってかんがえると不安になったりもするが、まあじっと座っていてわかることでもないのだろう。手を動かして、書いていくことで思考しようとしていく他ない。