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FUJI ROCK FESTIVAL ’11 (7/31)

7/31(日)、目が覚めたのは8:30くらいだっただろうか。体調がばっちり回復していることを確認し(やっぱりちゃんと寝るって大事)、朝食のバイキングもゆっくりしっかり食べて、トイレも済まし、万全の状態で宿を出る。シャトルバスはそこそこ並んだけれど、昼前には会場入りできた。本当は、朝からハンバートハンバートでゆるやかな一日をスタートするつもりだったけれど、まあ仕方がない。ホテルを出たときに降っていた雨は、会場に着く頃には小降りになっていた。きのうと同じく、昼からは少しずつ晴れてくる、そんな気がする。

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とりあえずビールを飲んで、移動開始。トクマルシューゴ、コトリンゴ、British Sea Powerをちらり眺めて、またしても偶然会った友人とごはんを食べたりなんかして。気がつけば雨はすっかり上がって、弱いながらも日の光が落ちてくるように…ってのんびりしていると、気がつけば14:30を回ってしまっていた。高田漣を見に、あわてて木道亭へ。

木漏れ日の差し込む木道亭は、何ていうかもう、完璧なシチュエーションと言っていいくらい、素敵な空間になっていた。ヘブンから遠い地鳴りのように小さく響いてくるベース音と蝉の声を背景に、ギター一本とドラム、ってシンプルなセットでのライブ。高田漣の優しく低い声とギター、伊藤大地の落ち着いたドラム、静かに吹き抜ける風、木々の緑、(ときおり現れるよくわからない虫、)すべてがまろやかに調和した、幸福な時間だった。

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次はTinariwenを見るためにヘブンへ向かう。ヘブンはフジでいちばん好きな会場なので、ヘブンに向かう道のりを歩いているだけでちょっとテンションが上がってきてしまう。おまけにいいライブを見たばかりだから、もうるんるんだと言っていい。るんるん気分のまま、ボードウォークの林を抜けてヘブンに入る。瞬間、ぱあっと空が開け、曇り空を抜けて太陽の光が差し込んでくるなかを無数のシャボン玉がふわふわと飛び交っている、って情景が眼前に展開され、一発で心に焼きつけられた。(ああ、まさに天国の景色じゃんこれ、ってちょっとおもった。)毎年一度は、こういう風景に出会えているような気がしていて、だからこそ、フジロックはたのしい。

で、ティナリウェン。頭をターバンでぐるぐるに包んだ、マリ共和国出身の4人のおっさんが、ギター、ギター、ベース、パーカッションでミニマルな反復のビートを刻み続ける。はっきり言ってかなり地味なんだけど、これがまあ、だんだんと癖になってくる感じがあって、素晴らしかった。音に合わせて身体を揺らしていると、少しずつ覚醒していくようで。鳴ってはいないはずの音が、少しずつ聴こえてくる。近くでがんがんに踊りまくっていた女の子が、「砂漠の音楽って、みんなこんな感じなんですかねー?」って言ってきたけれど、どうなのだろう、よくわからない。でも、少なくともティナリウェンの鳴らす砂漠のブルーズは相当かっこいい、とおもった。

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もうそろそろ夕方。グリーンに戻る。この頃から、ああ、今年ももうすぐフジが終わってしまう…ってなメランコリーに胸がきゅんきゅんし始める。トイレに行ったりごはんを食べたりしながら、のんびりとMOGWAIを聴いた。グリーンにふさわしい、大きなスケールの演奏。モグワイの曲ってぜんぶ、静→動、ってパターンだよね…くらいにおもっていた俺も、涼しくて心地いい風とビール、繊細なピアノの音色と轟音ギターのコントラストにはなかなか満足してしまった。で、そのままグリーンに残って、YMOもちょっとだけ見ていく。グリーンは人人人だし、大型のビジョンに映し出される映像には何やらエフェクトがかけれられているしで、さすがに壮観。パフォーマンスは地味だったけれど、かっこよかった。

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そして、ホワイトに移動。Cakeは正直そんなに期待していなかったのだけど、予想以上にエンターテインメントしていて盛り上がりまくるライブだった。ばかばかしいくらいにド派手なオープニングSEからして歓声が上がりまくりだったし、ペットが鳴り響く度に、ヴィブラスラップが「カーッ!」って決まる度に、コーラスが妙にぴったりはまる度に、もうみんな大喜びで。選曲もよかったし(冒頭から"Frank Sinatra","Mustache Man"!)、オーディエンスを左右半分に分けてコーラス対決させてみたり、いやー、ほんとにたのしくて、俺も歓声を上げまくってしまった。ウィルコがなければ、今回これがベストのライブだったかもなー、とおもう。自分の周囲には、Cakeを初めて見る、って人も多かったみたいだけど、「あの帽子のおじさんかわいくてかっこいい!」って声が何度も聞こえてきて、おもわずにやにやしてしまった。ジョン・マクレイはひげもじゃでキャップをかぶったまるまるの体系のおっさんだけど、たしかにかわいくてかっこいいのだ。

そうして、ついにこの日の、というか今年のフジロックのハイライト、Wilco。Cakeが終わった瞬間からステージ前方に向かい、先頭集団の群れのなかにスタンバイしてしまったので、他のステージからやって来ているはずの友人たちとはまったく合流できず。どきどき半分、しかしもうこれで今年も終わっちゃうのか…と寂しい気持ち半分で、開始を待つ。

…予想はしていたことだけど、はじめて見るウィルコのパフォーマンスは、やっぱり最高としか言いようがなかった。MCもほとんどなしで、いい曲をいい演奏で聴かせてくれる、っていう、本当にただそれだけのライブなんだけど、つくづく、まっとうにかっこいいバンドなんだなーとおもわされた。曲は『Yankee〜』からのものが多かったけど、いや、まあどれも本当にいい曲ばっかりで。"I Am Trying To Break Your Heart"や"Ashes Of American Flags"にはじんわりさせられ、"Bull Black Nova","Via Chicag"ではむちゃくちゃに高揚して、"Jesus, Etc."はみんなで歌って。曲のブレイク毎に、ネルス・クラインがギターソロを弾く(弾きまくる)度に、大きな歓声を上げて。どっししりした、飾らないグルーヴに身体を揺らして。ジェフの甘い歌声を、目を閉じて、吸い込むようにして聴いて。とにかく、本当に心の底から幸せな気持ちになれたライブだった。こういう感覚って、ずいぶんひさしぶりだったような気がする。

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0:00過ぎ、グリーンで最後のライブを見せるThe Musicを横目に、駐車場に向かう(グリーンに残っている人の数は、ほんとに尋常じゃなかった)。ウィルコにすっかりやられてしまった俺は、幸せボケ状態の脳のまま、夜行バスに乗り込み、苗場を後にしたのだった。

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6:00頃、家に辿り着く。物音に目を覚ました同居人が、部屋のなかから「どうだったー?」と聞いてくる。「いやもう、ほんと、最高に幸せ過ぎた2日間だったわー」と答え、自分の部屋に入る。服を脱いでベッドに潜り込むと、強烈な眠気と、幸せな時間が過ぎ去ったあとの、どうしようもない寂しさがどっと押し寄せてきた。