7月30日、金曜日。会社から帰って、大急ぎでシャワーを浴びて、かばんに荷物を詰めて――ウィンドブレーカ、ジップロック、タオル、ケータイの予備バッテリ、Tシャツ、バファリン――家を出る。新宿で友人と合流して、ツアーバスに乗り込んだのは23時頃。夜行バスで苗場に行けるなんていままでしらなかったけど、これって最高に便利だ。満員のバスの座席におさまって、浮かれた気分でタイムテーブルについて話し合ったり、バンドしりとり、なんてやってみたり。「ストーンローゼズ」「ズボンズ」「ズ…ズートンズ」「……ズワン!」「ンじゃん」…なんてぐだぐだやっているうちに、気がつけばもう消灯時間。
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土曜日。朝6時前くらいには苗場に到着した。このところずいぶん不穏な天気が続いていたから心配していたけれど、まずはそこそこいい感じの空模様だ。山の空気は澄んでいて、そこにいるだけで気持ちいい。早速、入口ゲート前の駐車場にて、一服しながらビールをいただく。あーまったく、この幸福感ったらないね…!などとのたまいつつ、タイムテーブルを再度検討。今年は2日目のみの参加なので、この一日を全力でたのしまなければならない。
9時にゲートが開いて、まずはグリーンへ。ステージからあまり遠過ぎない辺りの丘にシートを敷いて、とりあえずベースを確保した。おもしになるようなものをほとんど何も持っていないことに気づいて、ちっちゃい折りたたみ椅子とか、持ってくればよかったなーとおもう。まずはレッドマーキーで日本のバンドをちらり眺めて、オアシスで鮎の塩焼きとかカレーとか食べたりする。いい感じに暑い。
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そうして昼過ぎ。Dirty Projectersを見る、って友人と別れて、ひとりグリーンの最前線へ。今回のお目当のひとつ、John Butler Trioだ。ジョン・バトラーはとにかくめちゃめちゃギターがうまくて、ひとりでもじゅうぶん過ぎるくらいのグル―ヴを作り出してしまうのが凄い。もちろんドラムとベースも抜群だけど、でも、ジョンを的確にサポートすることに徹していて、あんまり前には出過ぎない。そんなところがよかった。まあなにしろ、野外フェスで聴くにはぴったりの味わい深いサウンドだ。新譜からの曲が多めのセットリストだったけど、全体的に素晴らしかった。ラストはやっぱり、"Funky Tonight"。3人でドラムを叩きまくって終演。
あらかじめ確保しておいたシートに戻って、友人と合流。うつらうつらしながらのKula Shaker。俺は冒頭3曲とラスト3曲くらいしかちゃんと聴いていなかったけど、"Hey Dude"とか"Hush"とか、懐メロを聴けてそれなりに満足。友人は、キーボの人がすげーいいよ!って興奮していたっけ。
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で、いよいよヘヴンに移動。あーやっぱり、ここがいちばん落ち着くわーとおもう。肉やらビールやらを胃のなかにがんがん流し込みつつ、Kitty Daisy&Lewis。音もルックスもまんま50'sロカビリースタイル、って感じなのだけど、素直にたのしい、っておもえる音楽だ。CDで聴いたときにはいまいちぐっとこなかった曲たちも、野外でみんなで踊りながら見るとこんなにたのしいんだな!っておもって、ああ、フジに来れてよかった、としみじみした。なんていうかもう、ヘヴンじゅうに溢れるゆるい多幸感が素晴らしかった。
夕方、ちょっとだけ涼しくなってきた頃に、Trombone Shorty & Orleans Avenue。これは予想外にかっこよかった!なにしろ、メンバー全員が、最高のテクニックでもってへヴィなニューオーリンズ・ファンクを炸裂させまくりなのだ。トロンボーンもサックスも、ベースもギターもドラムスも、すべてが強靭で自由自在で、ひたすらにファンク。バンドはどこまでも高らかに音楽を鳴らし続け、観客はひたすらに手を叩き、ジャンプし、踊り続ける。もうこれが永遠に続いてもいい…っておもえるくらい、素晴らしい時間だった。個人的には、彼らが今回のベストアクト。そうそう、辺りが暗くなってきたステージ終盤では、ライトに群がる虫の数が凄いことになっていたな。
ホワイトに行くっていう友人とまた別れて、ヘヴンに残る。トロンボーン・ショーティが終わった辺りから雨ががんがんに降ってきていて、KEENのトレッキングブーツを履いてきてよかった…と心の底からおもう。そうしてラストはDerek Trucks & Susan Tedeschi Band。
スーザン・テデスキの歌声はアレサ・フランクリンばりにブルージーで、デレクのギターはめちゃめちゃクール(ついでに、デレクは顔もめちゃめちゃクール。ほとんど表情ひとつ変えないのだ)でかっこいい。その2人をバンドがゆったりと支えている感じ。演奏はジャム的な要素が強いのだけど、スリリングっていうよりはどこか安定感、安心感のあるライブだったようにおもう。まあ、トロンボーン・ショーティで盛り上がり過ぎてしまったせいで、そんな風に感じたのかもしれないけれど。とにかく、デレク御大のスライドバーから放たれる無限の音色がヘヴンの夜空に広がっていく様子は――夜空はどんよりとした雨空だったにせよ――ひどく心地よく、美しかった。なにしろそこには夜があり、闇があり、そして音楽があったのだ。
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MGMTで立ったまま爆睡した(!)という友人と合流して、入口ゲート近くで名残惜しげにピザなんか食べつつ、ツアーバスへ。バスは深夜1時に苗場を離れ、始発の電車が動き始める頃には新宿に到着した。帰り道、1日でもじゅうぶんたのしめることがわかったのはよかったけど、やっぱり来年からは有給取って3日間参加したいよなー、なんて話をふたりでずっと話していた。