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『ミルク』

ミルク [DVD]

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吉祥寺バウスシアターにて。見たのはもう1か月くらい前のことなんだけど、なかなかよかった。1970年代アメリカで、ゲイであることを初めて公言して一大ムーブメントを引き起こした政治家、ハーヴェイ・ミルクの姿を描いた作品。話そのものも構成もごくシンプルなんだけど、全体的にとてもていねいに作られている雰囲気があって、ミルクについてほとんど予備知識を持ち合わせていなかった俺でも、彼らが戦うことになった理由やその心情についてきちんと納得、共感できるようになっているようにおもえた。

それはやっぱり、ゲイの人々のマイノリティがゆえの苦しみってものが具体的に描かれているからだろう。ゲイだろうがストレートだろうが、大抵の人はきっと日常のなかでマイノリティとして辛いおもいを経験したことがあるだろうし、そうでなくても、少なくとも、そういった経験や気持ちを自分に照らし合わせてかんがえてみること、想像すること、そういうところからしか他者を排除したり包摂したりするのではないコミュニケーションのかたちは生まれ得ないとおもう。人は他者の思考や感情を完全に把握することなどできないのだから、どうしたって理解できないこと、決して越えられないようなギャップというのは必ずある。でも、それだからこそ、人はそのギャップ越しにでもコミュニケーションを取っていくべきなのだろうし、取っていかなくてはならないはずだ。この映画ではミルクがそんなコミュニケーションへの願いや希望の象徴になっているのだけど、そこには監督であるガス・ヴァン・サント自身の感情もたっぷりと込められているようにおもえて、俺はぐっときた。

あと、ショーン・ペンって俺のなかではものすごいマッチョでこわいおっさん、っていうイメージがほとんど(『ミスティック・リバー』のイメージが強過ぎて…)だったんだけど、この作品のなかでは本当に暖かいほほえみを浮かべているシーンがたくさんあって、これが役者ってことか…すげえな、なんて、素朴なことをしみじみとおもった。